「自分たちが諦めたら…」0-5でも瀬戸内の主将が最後まで“全力”を通せた理由は?【選手権】

「自分たちが諦めたら…」0-5でも瀬戸内の主将が最後まで“全力”を通せた理由は?【選手権】


[高校選手権・準決勝]瀬戸内0-5流経大柏/1月12日/埼玉スタジアム

「最後まで全力で戦うこと。これが私たちにいま出来ることです」

 強豪校に大差をつけられながらも、試合終了のホイッスルが吹かれる瞬間まで、ひたむきにプレーを続けた瀬戸内イレブンを見ていて、筆者は今大会の選手宣誓で主将の佐々木達也が口にしたワンフレーズを思い出していた。

 試合は大差がついた。0-5というスコアが物語る通り、経験豊富な流経大柏と大会初出場の瀬戸内の力量に差があったのは紛れもなかった。それは後者の安藤正晴監督が、「現実に戻されたという感じですね」と漏らしていたほど明確なものがあった。

 そして、何よりそれをピッチ上で実際に対戦していた選手たちは実感していた。4-3-3の左インサイドハーフに入っていた佐々木は、「想像以上にプレスがきつくて、自分たちのサッカーはさせてもらえなかった」と回想する。

 普段はリズミカルなプレーとパスで攻撃に幅を生み出す背番号10だが、この日はタイトに寄せにきた相手の10番(熊澤和希)に動きを終始、牽制されて抑え込まれ、「全国レベルってこれなんだなと感じた」と素直に告白した。
 満足のいくプレーもさせてもらえず、点差が一方的に開いていく。それでも瀬戸内は、守備では球際で怯むことなくバトルを挑んだ。攻撃でも自分たちが貫いてきた“繋ぐサッカー”を捨てずに、相手ゴールを脅かすチャンスも作った。

 彼らの折れそうな心を繋ぎ留め、足を動かせていたものは一体何だったのか? それは昨年7月に発生した西日本豪雨の影響を受けた被災地で感じた想いからだったという。

 前述で触れた選手宣誓において、「答えの出ないなかで生きていくことは苦しくて、辛い、何をどうしていいのかっていうなかで、改めて考えるきっかけになりました」と話していた佐々木は、トップも含めてチーム全員で災害後に被災地でボランティアに参加したことが、団結が深めることに繋がったと明かした。

「ボランティア活動をしてみて、広島の方々が被災されたなかで、自分たちも何か恩返しがしたいという思いがありました。勝つことによって勇気づけられると思っていました。だからこそ選手権に対する思いはチーム全体にとって大きかったです」
 応援してくれた人たちに何か恩返しをするために――。主将として人一倍の責任感を持つ佐々木は、「自分たちが諦めたら、観ている人に何も与えることができない」と思い胸に秘めて90分間に渡って走り続け、選手宣誓で口にしていた“最後まで全力で戦うこと”を止めなかった。

 結果は0-5と大差をつけられたが、高校生活最後の年に迎えた初の檜舞台で、人のために全力を尽くせたからこそ、佐々木の心には一片の心残りもなかった。本人は、「本当にいい経験をさせてもらった」と晴れやかな表情で、最初で最後の選手権を振り返っている。

「抽選会や選手宣誓も含めて、本当に人生で一番の経験をさせてもらえたと思っています。準決勝のピッチで、流経さんと試合をさせてもらえたし、高校サッカーをやってきたなかで、最高の大会になりました」

 卒業後は青山学院大学でサッカーを続けるという佐々木。「悔いはないです」とハッキリと言い残して、会場を去っていったその姿は、165センチという身長以上に大きく、そして勇ましく見えた。

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
 


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