名将リッピ率いる中国に遮られたタイ代表の挑戦。国民は好意的反応も、さらなる高みを目指すには…

名将リッピ率いる中国に遮られたタイ代表の挑戦。国民は好意的反応も、さらなる高みを目指すには…


 会場はアル・アインFCのホーム「ハッザ・ビン・ザイード・スタジアム」。アラブ首長国連邦の東端、オマーン国境に接する街で、タイ代表のアラビアンチャレンジは道半ばで潰えた。


 怪我の影響で出場が注目されていた中国代表FWのウー・レイ(上海上港)は、当然のごとく先発に名を連ねていた。タイ・メディアが報じた折れた左肩鎖骨が映ったレントゲン写真と離脱を報じた記事を筆者は確認していたが、あれはゴシップだったのだろうか。謎である。

 試合序盤から中国代表が主導権を握るなかで迎えた31分、タイ代表が決定機をモノにして前半をリードして折り返した。

 ゴールを決めたのは20歳の新生FW、スパチャイ・ジャイデッド(ブリーラム・ユナイテッド)だった。彼を初めて観た時の衝撃は忘れない。まるでラティーノのようなリズムから繰り出される惚れ惚れする柔らかなボールタッチ。若かりし日のカカ(元ブラジル代表)を彷彿させられたことを思い出す。

 中国代表は嫌な流れを一変させようと、後半頭に4バックから3バックへシステムを変更、これが功を奏した。そして67分、投入されたばかりのシャオ・ジー(広州富力)が押し込み同点に。また71分には前半から身体を張ったプレーで攻撃を牽引していたガオ・リン(広州恒大)がファウルを誘いPKを奪取。これを自らが沈めて勝ち越しに成功する。まだ1点差ではあったのだが、PKを献上した流れですべてに勝負ありだった。中国代表がベスト8へ駒を進めた。

 システム変更に選手交代、リッピ采配は実に的確だった。イタリア代表を率い世界制覇を成し遂げた名将と渡り合わなければならなかったタイ人指揮官・シリサックの懐には、相手にぶつける術を持ち合わせていなかったのだろう。まさかの監督解任劇で担ぎ出された暫定監督には荷が重すぎたように感じてならない。
 
 監督の力量差もさることながら、ピッチ上の選手たちが纏う空気にも違いが見て取れた。それは“自信”とも言い表わせるものだ。
 
 中国代表は近年、アジアで大きな成功を勝ち得ていないはずだが、選手たちには“俺たちは強いんだ”という“自信”が漲っている。それは4000年の歴史そのままに、彼らに脈々と流れる“習性”なのだろうか。根拠の有無に関わらず、プレーの端々にそれを強く感じた。また逆にタイ代表には“自信”が足りなかったように思う。選手各々が持つ技術ではなく精神的な勝負で負けてしまった意味は非常に大きかった。
 
 大会中の状況変化にも対応し勇敢に闘った“チャーンスック”を、タイ国民は概ね好意的に見ているようだ。それには筆者も賛同できる。ただ個人的希望として、もうひとつ上がったステージで“フットボール大国”イラン代表との真剣勝負を経験してほしかった思いは強い。それだけが心残りでならない。
 
 アジアカップ参戦中にはこれでもかという程に“チャーンスック”の一蹴一走を報じていたタイ・メディアであったが、敗退が確定するとすぐに報道の主役はイングランドやスペインの欧州サッカーへと変わっていった。大会総括や敗退の要因を議論するような空気は残念ながらそれほど多くはない。

 タイ代表の進むべき未来を模索する責務がタイサッカー協会にあるように、メディアもその一翼を担っている自負が欲しかったというのが率直な意見である。それは彼らの成長に直結するものなのだから。

取材・文●佐々木裕介(フリーライター)


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