日本代表「欧州駐在強化部員」藤田俊哉氏に訊く――南米選手権のメンバーは五輪代表の強化を視野に入れてもいい

日本代表「欧州駐在強化部員」藤田俊哉氏に訊く――南米選手権のメンバーは五輪代表の強化を視野に入れてもいい


 オランダ・VVVフェンロでコーチとして活躍したのち、本場・イングランドのリーズ・ユナイテッドの強化スタッフ入り。現役引退後、欧州クラブの監督を目指し、活躍の場を海外に移した藤田俊哉氏は、長年培った海外でのキャリアを活かすべく、昨年9月から「欧州駐在強化部員」という日本協会の新ポストに就任した。“世界の目”を持つ日本代表のキーマンに直撃する月一連載インタビュー。第1弾となる今回は、新ポスト就任の経緯などについて話を伺った。
 
――◆――◆――
 
――日本代表スタッフ入りして以来、8か月が経ちました。新生活はいかがでしょうか?
 
 とくに変わっていないよ。ずっとオランダを拠点に生活しているのは同じだから。インターナショナル・マッチウィークに日本に帰国して、代表チームに帯同することになって、以前よりもフライトが多くなったくらいかな。日本代表戦になったら帰国するという生活は、海外組の選手と一緒。代表選手の場合はなおかつ、試合もこなさなければいけない。長時間の移動を強いられながら、高いパフォーマンスを求められる。あらためて代表選手の逞しさを感じているよ。
 
――欧州駐在強化部員。改めて新ポストに就いた経緯について聞かせてもらえますか。
 
 去年のロシア・ワールドカップ後に、関塚(隆)JFA技術委員長からこの話を頂いた。欧州でプレーする日本人選手が多くなったいま、彼らの所属クラブとのリレーションをこれまで以上に深める必要がある。その他にはリアルタイムで試合の情報を把握し、代表チームに還元することも重要になるから、その役割を担ってほしいと。日本代表や東京五輪世代チームの候補選手のプレー状況を視察して、現状を把握し、新たな戦力を発掘するのが主な役割となる。客観性をもってリアルタイムに定点観測する人間を置いておくことは、代表チームにとって大事なことだから精一杯のことをしたい。
 
――3月のコロンビア、ボリビアとの2連戦ではピッチレベルの業務もサポートするようになりました。
 
 今回の2連戦を迎えるにあたって、森保監督から「サポートしてもらえないか」とリクエストがあった。もともと、自分にできることはなんでもしたいという気持ちでいたから、すぐに引き受けた。通常は横内(昭一)コーチと斉藤(俊秀)コーチが中心となってサポートしているけど、横内コーチが五輪代表チームに行く場合は、斉藤コーチが横内コーチのポジションを担うことになる。その穴を埋める形として、自分がピッチ内でサポートすることになった。なによりチームがうまく回ることが大事だから、こうやって柔軟に対応していくことも必要じゃないかなと。個人的にもいろんな経験をさせてもらえているし、すごく貴重な時間を過ごしているよ。
 
――今年1月には、森保ジャパンにとって初めての公式大会となるアジアカップがありました。結果は準優勝でしたが、どのようにチームの戦いぶりを見ていましたか。
 
 個人的には、アジアカップには決勝トーナメントからチームに帯同した。準優勝に終わって残念だったけれど、チームとしてはすごく成長できた大会だった。ただし、選手たちの逞しさが感じられた一方で、彼らの“大会後”の状況については不安を抱いた。欧州リーグのシーズンの最中に、アジアカップ参戦のため1か月間チームを抜けたために、ポジションを失っている現象が多く見られたからだ。
 
 日本代表に選ばれること自体、とても名誉なことだし、アジアカップはアジアナンバー1の座をかけた大事な大会であることも理解している。一方では、どうして大事な時期にチームを離れるのか? という欧州の人たちの意見もうなずける。アジアカップを通して、改めて日本サッカーのカレンダーを見直す必要があるのではないか、と考えさせられた。
 
――現在、欧州(北欧の一部を除く)では、8月から5月にかけてシーズンを行なう“秋春制”を採用しています。
 
 日本は通常、3月から始まって元旦の天皇杯決勝でスケジュールを終える、いわゆる“春秋制”で行なわれている。今後もこのような状況が続くようでは苦しい。現在の欧州のサッカーカレンダーに合わせる、もしくは調整する時期に来ているのではないかと感じる。それと同じく、アジアカップの開催時期についても検討してもいいのではないかとも思っている。世界のサッカーマーケットの中心が欧州であるかぎり、それは避けて通ることはできない課題となるから。
 
――6月には南米選手権(コパ・アメリカ)が開催されます。
 
 今度は、Jリーグ組がシーズン中にクラブを離れなければいけなくなる。なかなかすべての方が納得するスケジュールというものはないかもしれないけれど、日本サッカーの強化のために方向性を合わせていきたい。メンバーに選ばれる選手たちが必要以上の負担を背負うことになる状況は避けたい。早急に議論すべき問題だろう。
 
――来夏には東京五輪も控えています。南米選手権における日本代表のノルマはありますか?
 
 当然、どんな大会でも優勝を目指してやっていく。もちろん今回の南米選手権もそれは変わらない。でも、東京五輪を目前に控えた今回は、五輪代表チームの強化を視野に入れてA代表のメンバー選考をしてもいいのでは、と私は考えている。東京五輪は予選がないから、なおさら真剣勝負の舞台をできるだけ経験しておくことは必要になる。
 
 五輪の1年前にもかかわらず、主だった話題にも上がらないこの状況は寂しい。もっと五輪代表チームに関心を持ってもらえるようにしたい。そして、強化も加速したい。決して、のんびり構えているわけではないだろうけれど、1年後、金メダルを獲得すると公言しているのだから、もっと熱を上げていきたい。急ぐことばかりが良いことではないが、それでも“早巻き”に行動しなければいけないと感じている。
 
――東京五輪経由カタール行き、という流れを考えても、たしかに、東京五輪チームの強化を優先すべきでしょう。
 
 東京五輪だよ! 一生に一度あるかないかの大事な大会になる。協会も全面的にサポートしているから、もっと大胆に、もっと貪欲に金メダルを追い求めていく姿勢を見せてもいい。いずれにしても、東京五輪での金メダル獲得を目指すうえでも“若手の台頭”は大事なキーワードになる。日本協会には「2050年までにFIFAワールドカップを日本で開催し、日本代表チームはその大会の優勝チームとなる」という、いわゆる「JFA2005年宣言」という高い目標がある。
 
 その実現に向けて信念を持って行動・改革をしていかなければならない。目標を立てる時のエネルギーに対して、目標に向かっていくエネルギーが上回っていなければ、実現は困難だ。どんなことでも情熱を持ち続けることはとても大事。次のカタール大会から数えて、2050年までにワールドカップ開催は7回となるだけに、着実なステップを刻んでいきたい。

◆プロフィール
藤田俊哉(ふじた・としや)/1971年10月4日生まれ、静岡県出身。清水市商高−筑波大−磐田−ユトレヒト(オランダ)−磐田−名古屋−熊本−千葉。日本代表24試合・3得点。J1通算419試合・100得点。J2通算79試合・6得点。J1では、ミッドフィルダーとして初めて通算100ゴールを叩き出した。2014年からオランダVVVフェンロのコーチとして指導にあたり、16-17シーズンのリーグ優勝と1部復帰に導いた。17-18シーズンからはイングランドのリーズ・ユナイテッドでスタッフ入り。昨年9月に日本協会の“欧州駐在強化部員”という新ポストに就任し、代表チームの強化にあたっている。

構成●小須田泰二(フリーライター)


関連記事

SOCCER DIGEST Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索