快進撃は39歳ベテランの抜け目なさに止められたが…ジャイキリ連発の法政大、なぜ天皇杯で躍進できたのか?

快進撃は39歳ベテランの抜け目なさに止められたが…ジャイキリ連発の法政大、なぜ天皇杯で躍進できたのか?


 第99回大会は、Jリーグが1993年に開幕してから27回目の天皇杯だ。大学勢が記録した最高成績はベスト16で、今大会の法政大や97回大会の筑波大を含めて7例ある。しかしベスト8進出はまだ1校もなかった。

 法政はヴァンフォーレ甲府に挑戦した18日のラウンド16で、快挙の一歩手前に迫った。27分に先制されたが、後半は敵陣に押し込む展開が続き、77分に途中出場の森俊貴が同点弾を決める。1-1で延長戦に突入する時点では、体力的にも相手より「残っている」ように見えた。


 しかし延長開始直後の93分、法政はピンチを迎える。山本英臣のクイックリスタートから佐藤洸一がボールを収めてチャンスメイク。宮崎純真にミドルを打ち込まれ、それが甲府の決勝点となった。120分を戦い抜いた末の、1-2の惜敗だった。

 昨年まで甲府のキャプテンを10シーズン連続で務めていた山本は、決勝点の場面をこう振り返っていた。
「リスタートとなった瞬間に、法政の近くにいた選手が3人くらいボールを見てなかった。ウチも2人見ていなかった。若くて速い選手が行ってほしかったんですけれど、彼は見ていなかった。ただペナルティエリアの中で、佐藤洸一だけが気づいて入ってくれた」

 39歳の山本、32歳の佐藤には、経験に裏打ちされた嗅覚がある。甲府が上回ったのは、抜け目のないベテランの力だった。
 
 とはいえ若者たちは甲府と同じ土俵で戦っていた。甲府は5-4-1の布陣でスペースを空けず、DFの背後やサイドへのロングボールを生かした慎重な試合運びに徹していた。シュートの本数も法政の9本に対して、甲府は7本。何も知らない人が見れば、法政が格上に見えたかもしれない。

 東京ヴェルディ、ガンバ大阪をいずれも0-2で下したチームを侮れるはずもない。甲府はリーグ戦からの入れ替えこそあったが、大学生を「リスペクト」した戦いに徹した。

 山本は大学チームをこう称賛する。
「ああいうところでしか勝負はつけられない。法政はそれくらい素晴らしいチームだった。球際でファイトしてくるし、ボールを持っている時も持っていない時も自信を持ってプレーしてくる。一人が裏を走ったら一人が降りてとか、ボールを蹴れる選手がボールを持ったら裏に走るといった共通認識(のレベル)も高かった」
 
 一方、法政の長山一也監督と選手たちが試合後に抱いた感情は何もできなかった悔しさでなく、「勝てる試合を落とした悔しさ」だった。

 FC東京入りが内定している紺野和也はこう振り返る。
「個人的に天皇杯は一番懸けている大会だったので、サッカーを今までやってきて一番悔しいくらいの感じです。内容はすごく良かったので、やれた中での悔しさですね。後半はずっと攻めていましたけど、最後の質という面でプロとの違いが出てしまった」

 左利きの紺野は右サイドに配置され、攻撃の中核を担った。彼がカットインから見せる得点への絡みは甲府が一番警戒していたポイント。しかし紺野は相手の警戒を上回り、77分の同点ゴールもアシストしている。

 紺野に満足した様子はない。
「(甲府のDFが)2枚来ても、全然はがせた。来年J1でやるので、通用して当たり前という気持ちでやっていた」

 法政は3年生で日本代表のFW上田綺世が夏に中途退部して鹿島アントラーズに移った。ただし天皇杯のJ撃破は、彼がいない中で成し遂げた快挙だ。

 現部員で内定が発表されているのは紺野だけだが、4年生からJクラブに進む選手が他に数名は出る見込み。上田、紺野が極端に突出しているわけではない。

 長山監督はこう述べていた。
「月曜から金曜は社業をして、土日で母校のためにスカウトをしてくれている人がいる。というところで、いい選手が来てくれる」

 もちろんどの大学もOBなどの力でスカウト活動は行っているが、法政は強化・スカウト担当の野木健司氏が「いい仕事」をしている。明治大、筑波大とともに全国の大学ではトップの人材を集めているチームだ。

日頃のトレーニングについて、指揮官はこう説明する。
「球際のところは天皇杯を通してしっかりと出せた。相手が『ファウルだろ』というくらいの強度で日頃からさせているからこそ、こういう場所でやれた部分はある。考えながら、(ボールを)大事にしながら、駆け引きをしながらというところも、見て頂けたら分かると思います。そこも日常のトレーニングが出た部分です」

 一方で長山監督はこうも述べていた。
「会場の雰囲気は大学サッカーで作り上げられたもの。ふわっとなっちゃう、コミュニケーションを取れなかったりするところがあった」

 NHK-BSの全国中継がある大一番で、隙を作らずプレーできる――。そういう心の持ちようは、プロで何百試合も経験しているベテランに敵わない部分かもしれない。しかしラウンド16で、これだけの内容を見せたことがまず素晴らしい。法政の戦いは彼らのよき日常に裏打ちされたものだった。

取材・文●大島和人(球技ライター)

【天皇杯PHOTO】法政大、8強に手をかけるも…甲府が延長戦を制す!


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