#atarimaeni CUP準決勝第1試合、法政大vs早稲田大の関東1部リーグ同士の対決となった一戦で、試合を決めたのは法政大の右サイドバックの2発だった。

 法政大のキャプテンであり、2021シーズンからヴァンフォーレ甲府に加入するDF関口正大は、0−0で迎えた51分、右サイドでボールを持つと、中につけてから一気にペナルティエリア深くまで侵入。最後はFW佐藤大樹との鮮やかなワンツーから左足でゴールをこじ開けた。79分にもMF今泉富のパスを受けたMF長谷川元希(甲府内定)がドリブルで仕掛けると、ペナルティエリア内まで潜り込んでパスを受け、GKのポジションをよく見てゴール右上に豪快に右足シュートを突き刺した。

 守備面でも帰陣の速さと対人の強さを発揮して、早稲田大の攻撃をシャットアウト。2-0の完封勝利で決勝進出の原動力となった。

「タフな選手で責任感も強いし、自己管理も徹底している選手なので、すごく信頼して使っています」と試合後、法政大の長山一也監督が絶賛したように、関口はサイドバックとしての能力だけでなく、精神面でもチームにとって欠かせない柱になっている。

「大学に入った時点で僕はそこまでうまい選手じゃないという自覚がありました。周りにうまい選手がたくさんいる中で自分がやっていくには、誰よりも走って、献身的に守り、かつ攻撃的に仕掛け続けられるサイドバックになろうと思っていた」

 関口は県下有数の進学校でもある新潟明訓高出身で、高2の時に1学年上の中村亮太朗(甲府)とともに選手権に出場し、高3ではキャプテンを務めた。法政大では上田綺世(鹿島アントラーズ)を筆頭に長谷川、森岡陸(ジュビロ磐田内定)と言った同級生の技術レベルの高さに圧倒された。

 だが、すぐに自分の持ち味、表現の仕方を模索し、激しい上下動を繰り返しながらも、頭をフル回転させて、攻撃に有効なスペースや守備面で危険なスペースを察知して効果的なプレーを見せるサイドバックとして徐々に頭角を現わした。さらにコンディション管理や周りへの発言力など、高校時代から秀でていたオフ・ザ・ピッチの部分でも信頼を掴んでいき、今年はキャプテンを任命された。
 
 関口で印象に残っているのが、12月12日に行なわれた関東大学リーグ1部・21節の国士舘大戦。この一戦で彼はプレーだけでなく、精神的にもチームを牽引する存在であることを改めて周囲に証明した。連戦だったこともあり、この試合で関口はベンチスタート。右サイドバックのポジションに起用されたのは、今季初の公式戦出場となる2年生の市川侑生だった。

 試合前日、緊張している後輩に関口は優しく「大丈夫、お前ならできるよ」と声をかけ、続けて「国士舘はこういう守り方をしてくるから、このスペースを狙ったほうがいい」など具体的なアドバイスも送った。

 試合中もベンチから市川に積極的に声を掛け、78分に負傷したFW田中和樹に代わって投入されて右サイドバックに入ると、市川が右サイドハーフにポジションを上げた。すると「あいつの持ち味である縦の突破を生かすために、僕はなるべく中よりのポジションを取って、彼をワイドに張らせることで、縦のスペースを開けることを意識した」と、市川がプレーをしやすいような環境を作った。

 そして89分にはMF服部剛大のクロスをニアサイドでFW平山駿が繋ぎ、最後は「ゴール前にスペースがあったので、飛び込めば何かが起こると思った」と、関口が気迫で押し込み、値千金の決勝弾を叩き出した。

 ちょうどこの時期はサッカー部で新型コロナウイルスのクラスターが発生し、1か月近く活動休止してから活動再開をしたばかりだった。

「最後の大会も出来ずに終わった他の部活の4年生もいると聞いたので、本当に僕らがサッカーをやっていていいのか疑問に思ったこともありました。でも、サッカーをやりたい気持ちと、試合をさせていただくからには、全ての試合に対して全力でプレーをすることによって、僕らのサッカーで周りを元気付けたり、勇気を与えたりできるかもしれない。そうと思ってプレーしています」

 サッカーをやれる環境が決して当たり前じゃない。やるからには全力でやらないと示しがつかないし、自分たちも納得しない。「周りの部員たちにも『サッカーが出来ることに感謝をして、やれることを全力で戦おう』という1点だけ強調してきました」と、チームの先頭に立つ者として責任感を持って毅然と振る舞う彼がいた。

 そして、大学サッカー最後の大会でファイナルまで辿り着いた。東海大との決勝に向けて彼はこう決意を口にした。

「優勝を目指すのはもちろんですが、やっぱり僕ら4年生が後輩たちにプレーをしっかりと見せることで、後輩たちに(法政大サッカー部の伝統のひとつとなるように)形として残すことが大事だと思っています」

 プレーで示し、結果を掴む。それが4年生に出来る最後であり、最高のメッセージとなる。関口の信念はチームの信念となって、決勝のピッチで表現されるはずだ。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)