アメリカの大銀行JPモーガンの財政支援で、12の欧州メガクラブが欧州スーパーリーグ創設を宣言した。これにより、フランスはいま激怒の嵐に包まれている。

 発表直後の夜の討論番組『L’EQUIPE DU SOIR』は、急きょ経済学者ピエール・ロンド氏を呼び寄せ、12クラブの構想を分析した。

 同氏によると、スーパーリーグ全収益の32%以上は結果の如何にかかわらず常に創設クラブに分配される構想で、純粋スポーツ面(結果)による分配は全体収益のたった20%。また、テレビ視聴率の高さまでが分配基準になっているという。要するにメガクラブが最初から大金を手にできる「ビジネス興行大会」で、出演者も視聴者も目がテンになった。

 番組はまた、イングランドでも猛反発が噴出してことを次々に速報。マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドであるアレックス・ファーガソン卿が、このプロジェクトに怒り心頭のコメントを発したこともいち早く伝えた。

 一夜明けた現地時間19日の『L’EQUIPE』本紙は、一面に「金持ちどもの戦争」の大見出しを掲げ、憤怒と疑問を主張。社説では、フランスを代表するオピニオンリーダーのヴァンサン・デュリュック記者が、「裏切者ども」の見出しで容赦なく12クラブを斬首した。
 
 その書き出しは、「もし彼らが自分たちのプロジェクトの最後まで行くなら、我々は彼らを許さないだろう。また彼らが諦めたとしても、それでも許さない」だった。

 フランスはカトリックの伝統から許す心と寛大さを重視しているため、「許さない」は滅多に使わない言葉で、これを使うときは「死んでも許さない」という意味合いをもつ。けっして許してはならない不正義に命がけで抗するときの言葉であり、感情的なこけ脅しではない。

 次いでデュリュック記者は、「1954年にこの新聞によってもたらされた思想を裏切るばかりでなく、ずっと以前から欧州フットボールを愛し、その建設を助けてきた全ての人々を裏切るものだ。彼らは他の人々のお蔭で自分たちのいまがあることを忘れてしまった」と痛烈に斬った。

 チャンピオンズ・リーグ(CL)は『L’EQUIPE』紙記者の奔走によって純粋スポーツ的な観点から創設され、それを基本に多くの人々の努力で世界的に発展してきたからだ。
 またJPモーガンが支援している点も見逃さず、「アンドレアス・アニェッリとフロレンティーノ・ペレスの臆面なき態度にはっぱをかけられ、欧州スポーツを理解できないアメリカ人オーナーたちがこの絶対的亀裂と全面戦争をもたらしている」、と中心人物を名指しで批判した。

 さらにデュリュック記者は、「大会放映テレビ局と視聴契約しない」「大会に参加するクラブのユニフォームを買わない」「参加を決めたクラブの指導者を許さない」こともできるとブラックユーモアを展開したうえで、「おそらくこれらクラブ指導者たちは、世界中からウィと言われるのに慣れすぎてしまったのだろう。彼らにノンと言うときがきている」と締めくくった。

 社説に限らず、同紙は全5ページをスーパーリーグ問題に割き、「チャンピオンズリーグの全体視聴率が下がっており、彼らによれば魅力不足」「この構想が最後まで行けば、12軍団はスーパーリーグを完全所有し、オーガナイズ権を保持しながら放映権もマーケティングも商業化する意向」「すでにクーデターの様相」とこき下ろした。
 
 またパリ・サンジェルマンが創設者グループに入らなかったことも解析し、UEFAからもエリゼ宮(フランス大統領府)からも賛同が寄せられたことを紹介した。とくにエリゼ宮は、「スポーツ上の功績も連帯の原則も脅かすフットボールのスーパーリーグ計画に参加することを拒否したフランスクラブのポジション」を讃えた。

 だがパリSGが「ジレンマ」に陥ることも事実だ。

 カタール資本は入って以降のパリSGは、ひたすらCL制覇を悲願として前進してきたため、もしCLに出られなくなれば不達成感につきまとわれる。だが12のメガクラブが不在のCLを戦った場合、魅力が失せて観客動員もスポンサー惹きつけも劣るようになる可能性がある。しかもスーパーリーグがCLを凌ぐ大会になれば、ネイマールやエムバペらを引き留めることもできなくなるだろう。

 パリSGとバイエルンは揃って「裏切者」に名を連ねなかったが、今後どうなるのかはまだ不明だ。

 いずれにせよ、メガクラブが儲けるだけとわかっているカネ、カネ、カネのスーパーリーグ宣言には、フランスでは今後も批判が続くに違いない。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI