「ショウヘイが出てる試合は勝ち星が多いと言われるように!」

 週末、彼のメジャーリーグでの活躍が取り上げられている番組の中で、そうインタビューに答えていた。素晴らしいことである。プロ野球選手にもこんな選手が出て来たのだと感じた。

 三冠王を何度獲得した。ホームランを何本打った。防御率がどうだった……。もちろん、こうした個人成績は、チームの成績にも直結する大事なことではあるが、果たしてその数字が勝利に貢献したものなのか? ここを無視してはならない。

 プロの世界では大事なことなのである。
 
 この時代に、そんな凄い選手が日本からMLBの世界へと渡った。スポーツ界の誇りとなるであろう。

 数週間前に松山英樹がマスターズを優勝したが、彼は連日、ここまで全試合に出場し、二刀流で投打にわたる活躍を見せている。これはベーブ・ルース以来、100年ぶりの快挙だという。

 僕が少年の頃、現役だった王貞治(ソフトバンクGM)さんがホームランの記録を更新する時に必ず出てきた名前が「ベーブ・ルース」だった。サッカー小僧でも知っている海外の野球選手が、記録更新へのライバルだったのである。

 サッカーで言えばブラジルの「ペレ」のようなレジェンドであるベーブ・ルースと比較されて、いまやアメリカの野球界で絶賛される彼は、正しくサッカーで言えば60〜80年代のブラジルで活躍することだったり、今で言えばプレミアリーグで大活躍をしていることになるのであろう。

 おまけにサッカーで言えば、センターフォワードとGKで出場して、どちらでプレーしても代表になれるパフォーマンスと実力を持っている。

 クラブではセンターフォワード、日本代表ではGK。2メートル近い身長で足下のテクニックも絶品で、GKとしてはシュートブロックの反応もクロス対応も秀逸。センターフォワードをやればゴール前の得点感覚が抜群で、単独でも突破が出来る万能ストライカー……。

 サッカーの歴史上で、そんな選手が育成年代、子どものサッカーなら過去に存在した人がいたかも(?)しれないが、プロではまだ聞いたことがない。

 ルールは定かではないが、強い相手に対し、GKで先発してゴールを守り、残り10分でセンターフォワードになり、1-0で彼の得点で勝つという勝利の方程式が可能なら、ユニホームはフィールドとGKで同じ背番号を用意しなければならないだろう。漫画の世界でもまだ現われていないヒーローだ。

 野球界に現われたこの男。
「大谷翔平」
 何故、サッカー界で生きてきた僕が、野球界のヒーロー、いやスターの話に興味を抱いたのか。

 それは彼の言った「ショウヘイが出ている試合は勝ちが多いと言われたい」。

 このメンタリティに共感、感動したからだ。
 自分の成績が良かったり、自分が得点すれば良かったり、自分が気持ち良くプレー出来れば満足していられるのは、長くて10代まで。プロになり、日本を代表するような選手はそうではいけない。

 そして、それはそうなった時では遅いのである。

 選手がプロとして、大谷翔平と同じような言葉を残せる選手になるためには、選手としてだけではなく、人間としても大きくならなければならない。
 
 それを知るためには指導者と選手との信頼関係も大事になる。大谷の言葉にサッカーの指導者が何を感じ取れるか。それが大切になる。選手とどう関わっていくか? 愛が必要となり、厳しさも必要となる。選手以上に選手の心を知り、もちろん戦術・戦略を知ることも必要だ。そして、選手以上の情熱と純粋な気持ち持たなければならない。

 指導者がその年代で勝利するための甘え。選手を野放しにし、放任していく。自分が思うようにならないことは受け入れられない。サッカーが上手い、その年代で勝たせるチームに所属し、結果も出せる。良い勘違いをして気づく日が早く来れば間に合うこともあるが、当然、プロの世界は皆、上手い。上手いのは当たり前の世界なのだ。

 大谷翔平の存在は、日本野球界にとって、よりプロ野球界を進歩させることになるであろう。そしてサッカー界は、彼の存在からも危機感を持たなければならない。

 サッカーというスポーツでは当然、勝利を優先に考えるべきだが、だからといって勝つだけではいけない。勝利とともに、選手自身のパフォーマンスが良く、サポーターから愛され、国民から愛され、周りの人から愛される存在になる。

 そして日本の良いサッカーとは何か? を追求し、オリジナルなサッカーを確立しなければならない。

「大谷翔平選手から学ぶことは多い」

2021年5月5日
三浦泰年