才能に恵まれながら、伸び悩む選手は少なくない。現在ラ・リーガにおいて傍から見るとこの不可解な現象に陥っている代表的な2人の選手がアトレティコ・マドリーのジョアン・フェリックスとレアル・マドリーのマルコ・アセンシオだろう。それぞれ取り巻く環境は異なるが、共通しているのがプレーの継続性に欠け、自信を失っている点。両クラブのOBに見解を語ってもらった。

「ジョアンに起きていることはよく分かるよ。わたしも彼の年齢の頃は、同じような状況に陥った。才能に頼ってプレーし、逆に自分の不得手なことは進んで取り組まなかった。守備の仕事をね。シメオネのようなタイプの監督に対し、自分のプレーに理解を示そうとしてくれないと疑心暗鬼になって、衝突した点も同じだ。

 そうした状況は(ラドミール)アンティッチと出会うまで続いた。しかしその時、わたしは若くはなかった。ジョアンは優れた守備者ではないし、それはこれからも変わらないだろう。でも才能は素晴らしいものを持っている。今は忍耐が必要だ。遅かれ早かれ世界で5トップのプレイヤーとして認識されているはずだ」

 こう自分に重ね合わせながら、ジョアン・フェリックスの現状を分析するのはミリンコ・パンティッチだ。パンティッチは1966年生まれ。1995年に同郷のアンティッチ監督に請われてアトレティコに加入。その1年目の1995-96シーズン、クラブ史上初のドブレーテ(ラ・リーガとコパ・デル・レイ)達成の立役者となった。

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 ジョアン・フェリックスは今シーズン、全てのコンペティションを通じて開幕10試合で7得点と好スタートを切った。しかし、スタメン出場の機会が減少するにつれてパフォーマンスが低下。結果的にフラストレーションを蓄積させ、レアル・マドリー戦で交代を命じられた場面やビジャレアル戦のゴールパフォーマンス時のように不満を露わにしたこともあった。

 シメオネ監督との仲も取り沙汰されるが、パンティッチは両者が良好な関係を築くことを期待する。

「チョロは自分の手中にあるものの価値を理解しているはずだ。彼は誰とも結婚しない監督でもあるけどね。いずれにせよ、ジョアンにサウール(ニゲス)や他の選手のような守備力を求めるのは酷だ。資質がないからだ。ジョアンは宝石だよ。ただその才能を輝かせるには相応しい土壌を用意することも重要だ。

 もちろんジョアン自身もチョロに考えを変えさせる行動を起こさなければならない。監督によって選手のえり好みはある。ゴマをすれとまでは言わないが、相互理解を図り、お互いが歩み寄るためにチョロが要求するタスクにも取り組まなければならない。シメオネはジョアンのことを反逆児と称していたけど、その言わんとしていることはよく分かる。チョロだって天から与えられた才能を無駄にしてほしくはないという気持ちは同じなんだ」
 一方、アセンシオはジョアン・フェリックスとは異なり、ジネディーヌ・ジダン監督の信頼は得ている。

 ラファエル・マルティン・バスケスはアセンシオと同じく、若くして脚光を浴び、18歳の時にアルフレッド・ディ・ステファノ監督の下でトップチームデビューを果たした。アセンシオは昨年6月に大怪我から復帰したが、マルティン・バスケスも選手時代に重傷を負った経験がある。彼もまた期待が大きいだけに、アセンシオの現状に対する評価は辛口だ。

「マルコを知る人物によると、リスクを冒すことに躊躇しているそうだ。実際、20歳の頃のほうが積極性があった。いまは怖がってプレーしていて、ドリブルを仕掛ける機会も限られている。とても残念なことだよ。あれだけのポテンシャルの持ち主だけにね。(エデン)アザールが怪我で離脱を繰り返すなか、本来ならチームを牽引していかなければならない立場だ」
 
 とりわけマルティン・バスケスが批判のやり玉に挙げるのが、26節のアトレティコ戦(1−1)でのパフォーマンスだ。

「完全に試合から消えていた。マルコのような攻撃的なポジションを任されている選手は、5回ボールを持てば、少なくとも2回は1対1の勝負に挑み、局面を打開しなければならない。もっともそれでも危険なシーンを創出することができている。非凡さの証だよ。だからこそその有り余る才能を無駄にしてほしくない。

 彼の頭の中で何が起きているのかはなかなか分からない。ただ外から見ていると、責任から逃げているような印象を受ける。『俺はここにいる。ボールをよこせ』というくらいもっと気持ちを前面に押し出してプレーしてもいい」

 そんななか、マルティン・バスケスが可能性の一つとして指摘するのが怪我の後遺症だ。

「いま現在、膝がどういう状態なのかは分からない。わたしも同じ怪我をした経験がある。しかも症状はさらにひどかった。だから経験上、自信を取り戻すことが困難なのは理解できる。完全に元の状態に戻ることはできないという不安とも戦わなければならない。もっとも見ている限り、コンディションは良さそうだ。怖さを感じているとは思いたくはない。怪我が原因でないとすれば、とても残念だ。ジダンから信頼されているのは明らかだからね」

文●エンリケ・オルテゴ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

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