育成年代において“中高一貫” で指導に励むチームが成果を示している。

 青森山田や静岡学園は系列の中学校があり、昌平や帝京長岡はそれぞれFC LAVIDA、長岡ジュニアユースと系列の組織を持っている。近年、力をつけており毎年のように多くのプロ選手を輩出する大阪の興国高も系列とまではいかないが、関西街クラブの雄・RIP ACEとの繋がりが強固である。今季、横浜F・マリノスへ入団し、開幕戦で先発出場を果たした樺山諒乃介はこのルートでプロとなった。さらには京都橘高にも、ジュニアユースを立ち上げる動きがある。

 このように多くのチームが強豪校のスタンダードと言える“6年教育”に力を入れるなか、九州においてその存在感を日に日に強めているのが、鹿児島県の神村学園中だ。

 先日のU-17日本代表候補に選出され、2年生ながらすでに複数のクラブが関心を示している福田師王と大迫塁もこの中学出身である。
 
 今年の中学3年生世代は福田と大迫の代よりもタレントが揃っており、行く先が期待される選手が多い。「前のタレントが揃っていますね。大迫たちの時もいましたけど、(今年のチームは)技術だけでなくタフなところ、走力や粘り強さも兼ね備えている」と松本翔監督は話す。

 最終ラインからボールを大事に繋ぎ、一人ひとりが受ける意識を持ってショートパスを主体にゴールに迫るのが神村学園中のスタイルだ。そこは高校とリンクしている。選手個々の判断・技術のレベルは非常に高く、3月末に行なわれ優勝を納めた九州中学校U-14サッカー大会でもチーム力は群を抜いていた。

 九州・沖縄の有力選手が神村学園中に来るケースが非常に多いなか、最終的にJクラブとの獲得競争を制することも珍しくない。その背景には「高校の影響もある」と松本監督は言う。

「Jクラブの選択肢もありましたけど、選手権にも出たい気持ちもあって。神村で選手権に出て、プロに行ければと思いました。いろいろな選手をテレビで見るなかで、大きかったのは高橋大悟さんの代ですね。それに、蹴るサッカーではなく繋ぐスタイルなので、ここでやりたいなと思いました」

 そう語るのは、主将でエースナンバー14を背負う名和田我空だ。4月のタウンクラブ・中体連選抜に選出された彼は、1.5列目のギャップでボールを受けて前を向き、仕掛けて相手を剥がし、フィニッシュまで持ち込むことに長けた才能あふれるアタッカーである。その落ち着きと技術は突出しており、間違いなく高校進学と同時に主力となり得るだろう。
 
 彼だけでなく多くの選手が技術を重視した攻撃サッカーに憧れ、神村学園の門を叩いてきた。もちろんチームで全国を取る、進学先の高校でまだ成し得ていない選手権制覇を目指している。

 ただ、必ずしも“頂点を取ること” を見ているわけではない。

「子どもたちは優勝したいと言いますけど、代表に入ってくれたほうが僕らは嬉しい。試合に勝ってもちろん嬉しいですけど、一番嬉しいのは子どもたちが他の指導者から評価されることですね」(松本監督)

 中学、高校で終わりではない。だからこそ、あえてここでの結果は強く求めない。この先の長いサッカー人生において、誰からも評価される選手へ。そこに主眼を置いて指導を進めた結果、基礎技術にはじまり、局面での判断やポジショニングの質に徹底的にこだわっているのだ。
 
「ボールをずっと握って、見ている人が楽しいサッカーを目指すというのが、中高で目指しているものではあります。そのために、『止める・蹴る』の積み重ねをします。右足と左足で短いパスから長いパスまで、そこの質を高めていく。でも、僕らが指導で携われるのは3年〜6年程度。その後に進んだチームの指導者に好かれるようになってほしいと。そのためにベースをしっかり叩き込んだうえで、サッカーをしてほしいと思っています。いろいろな戦術に適応できて、いろいろな指導者に好かれてほしい。そのための基礎技術、戦術理解度などのベース作りに力を入れています」(松本監督)

 上述した大迫や福田を皮切りに、連続して多くの選手がプロの舞台へ羽ばたいていく気配を筆者自身、強く感じている。鹿児島の地で力を伸ばす神村学園中の躍進に、ぜひ注視してほしい。

取材・文●竹中玲央奈(フリーライター)