ヘタフェの久保建英と川崎フロンターレの三笘薫は、いまの日本サッカー界が誇る最も魅力的なアタッカーたちだ。ともにウイングを主戦場とし、ドリブルで仕掛けてチャンスを生み出す。活躍の舞台は異なるが、果たして両雄を同列に論じた時、現時点でより凄いのはどちらなのか。スポーツライターの西部謙司氏に意見を伺った。

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 久保建英と三笘薫、現時点でどちらが凄いかは考えるまでもなく三笘である。

 久保のヘタフェでのプレーぶりは全く精彩を欠いている。どちらが凄いというより、久保が全然凄くない。

 ビジャレアルで出場機会が限られていた久保は、ヘタフェへの移籍でプレー機会が増えるものと期待されていた。ところが現実は逆だった。ヘタフェには久保のほかにもバルセロナ育ちのカルレス・アレニャやマルク・ククレジャがいて、技術に優れた彼らが攻撃を引っ張っていくのかと思ったら、ヘタフェのプレースタイルはそちらにはいかずフィジカル重視に回帰した。その結果、久保の特徴を生かせるような環境ではなくなってしまったのだ。ヘタフェにはヘタフェの事情があり、久保のためのチームではないのだから仕方がない。クラブの補強戦略と現場の判断が食い違ってしまったために居場所がなくなっている。
 
 ただ、ウイングとしての適性からいっても三笘だと思う。

 ドリブルで仕掛けて決定的なプレーにつなげる能力は2人とも非常に優れている。三笘のほうが少し柔らかいが、そこで優劣がつくわけではない。現在の2人のポジションはどちらもウイングなので比較の対象になるわけだが、久保の適性はそこではない。

 バルサのカンテラ育ちで左利きということで、よくメッシが引き合いに出されていたが、タイプとして久保に近いのはダビド・シルバだと以前から考えていた。インテリオール(インサイドハーフ)なのだ。シルバもウイングやCFでもプレーしたが、ベストポジションはインテリオールだ。久保とシルバの真骨頂はサイドからの突破ではなく、ハーフスペースの狭い空間でボールを受けて捌く能力である。バルサでいうなら、メッシよりもイニエスタになるわけだ。

 2人とも守備力という課題がある。三笘はほとんど攻撃している川崎のFWなので、それほど守備機会がない。しかし、欧州のクラブへ移籍する、あるいは日本代表でのプレーを考えれば守備力は必須になる。久保は逆にヘタフェで闘いを強いられているが、もともとそこに優れているわけではないので起用そのものが減っている。いつ、どこで守備力を向上させるかは2人の共通した課題だろう。

【動画】三笘薫の度肝を抜くドリブル突破!
 三笘はウイングとして欧州で勝負するには絶対的なスピードに欠けているが、ボールの持ち方でそれを補っている。五輪代表のアルゼンチン戦では得意の間合いに持ち込めずに苦労していた。このあたりは経験不足なので、場数を踏めば対応はできるだろうが、欧州移籍するならギリギリの年齢ではある。欧州ならどこでもいいわけではなく、Jリーグでは順風満帆とはいえ案外判断の難しい時期になっている気がする。
 
 久保のヘタフェ移籍は結果的に失敗だった。次の居場所を見つけなければならない。インテリオールでプレーできるチームがいい。そこで守備力を向上させてポジションを確保することが重要だろう。

 久保と三笘のどちらがウイングとして優れているかを論じてもあまり意味はない。左ウイングとしての三笘、インサイドハーフの久保。まだ日本代表では実現していないが、傑出した才能を持つ2人がチームを牽引していく姿は是非見てみたいものだ。

文●西部謙司(スポーツライター)

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