ヘタフェの久保建英と川崎フロンターレの三笘薫は、いまの日本サッカー界が誇る最も魅力的なアタッカーたちだ。ともにウイングを主戦場とし、ドリブルで仕掛けてチャンスを生み出す。活躍の舞台は異なるが、果たして両雄を同列に論じた時、現時点でより凄いのはどちらなのか。スポーツライターの吉田治良氏に意見を伺った。

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 元ポルトガル代表のルイス・フィーゴは、現役時代にこう豪語した。

「1対1になったら勝負しないわけにはいかない。なぜなら俺はドリブラーだからだ」

 ドリブラーは仕掛けてなんぼ、ということだろう。ただし、マーカーを鮮やかに抜き去れば喝采を浴びる一方で、ボールロスト時の代償も大きい。抜いたか、奪われたか。二つに一つの判断基準だから、成功と失敗のコントラストが素人目にも分かりやすいのだ。

 それゆえ、ドリブラーはメンタルにパフォーマンスが大きく影響される。弱気の虫が疼けば、勝負はできない。リスクと批判を恐れず、勇気をもって仕掛けられるかどうかで、ドリブラーの価値は決まるのだ。

 その点において、久保建英と三笘薫に優劣は付けがたい。どちらも対峙するDFと勝負することに躊躇がないのは、磨き上げてきた技術に絶対的な自信があるからだろう。
 
 しかし、「現時点で」という条件の下でなら、白黒ははっきりする。Jリーグで敵なしの川崎フロンターレで中核を担う23歳と、ラ・リーガで残留争いに汲々とするヘタフェでベンチ要員に甘んじる19歳では、勝敗は誰の目にも明らかだ。

 もっとも、環境面を無視して断じるのは少々乱暴かもしれない。ドリブラーはメンタルにパフォーマンスが左右される生き物だが、そのメンタルに影響を及ぼすのが「環境」だからだ。

 今季開幕時に在籍したビジャレアルでも、冬に加入したヘタフェでも、久保は守備面の不安とフィジカルの弱さを指摘され、十分な出場機会を得られていない。そして短い時間でアピールしようとの焦りが状況判断を狂わせ、ピッチに立ってもプレーが空回りし続けている印象だ。

 例えば昨年10月、ビジャレアル時代のアトレティコ・マドリー戦。0-0の85分に投入された久保は、自陣から二度に渡って強引にドリブルで持ち上がろうとして、いずれもボールを失っている。一度目はショートカウンターからあわやという場面も作られた。強豪相手のアウェーゲームだ。無理をする必要はなかった。

【動画】ガンバ戦、三笘薫の度肝を抜くドリブル突破からの鮮烈弾!
 
 ならば、三笘はどうか。

 昨年12月の横浜F・マリノス戦。2-1とリードしたアディショナルタイムに、三笘はカウンターからおよそ90メートルを独走し、小林悠のダメ押しゴールをお膳立てしている。同点ゴール狙いで相手が前掛かった状況と、みずからのスピードを秤にかけて自陣からのドリブルを選択し、ものの見事に裏返してみせた。

 現在、久保と三笘の置かれた環境には、天と地ほどの差がある。川崎の成熟した攻撃サッカーの中で自由に羽ばたく三笘に対して、指揮官の信頼を得られず、とりわけヘタフェ移籍後は、アーティストではなく戦士であることを求められるサッカーに飲み込まれ、焦燥の中にいる久保。似たようなシチュエーションでの両者の対応の違いが、環境がメンタルに与える影響の大きさを物語る。

 ただ、だからこそ、2人の俊英を正確に比較検証するには、同じ土俵に立ってもらわなくてはならない。

 今年3月のU-24アルゼンチン代表戦で、三笘は思わぬ苦戦を強いられた。“川崎の三笘”を知らないアルゼンチンの若武者たちは、彼の仕掛けを悠長に待ち構えてはくれなかった。腰が引けることなく間合いを詰め、前から力押しで奪いにきた。こうした経験を日常的に積み重ねるためにも、やはり一日も早くヨーロッパへ旅立つべきなのだ。
 
 一方で、ヘタフェ移籍という決断が裏目に出てしまった久保だが、それでも、困難の中にこそ機会はあるはずだ。環境は与えられるものではなく、みずから作り出すものであることを忘れてはならない。まだ19歳。その強気な姿勢さえ失わなければ、久保が現在の評価を覆すことは十分に可能だ。

 フィーゴはこうも言っている。

「サッカーは人生と同じさ。避けては通れない敗北や試練から、いかに立ち上がるかが問われるんだ」

文●吉田治良(スポーツライター)

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