「イニエスタがスタートから出ていれば、違った結果になったに違いない」

 おそらくヴィッセル神戸のサポーターの多くがそう感じただろう。

 J1第14節、セレッソ大阪をホームのノエビアスタジアムに迎えた一戦は、坂元達裕にヘディングを浴びて先制点を献上したものの、土壇場でトーマス・フェルマーレンの豪快ミドルで追いつきドローに持ち込んだ。アンドレス・イニエスタをはじめ、ドウグラス、リンコン、アユブ・マシカと後半途中から次々に助っ人を投入して仕掛けた猛反撃が最後に実を結んだ形だった。

 一見すれば、粘り強く勝点1を拾った試合だ。ただ一方で、あと一歩で敗戦というところまで追い込まれていたという見方もできる。

 その原因のひとつが、前半の攻撃の停滞である。
 
 神戸の攻撃パターンは古橋亨梧のスピードを生かしたカウンターがほとんどで、相手からすれば与しやすかっただろう。ダンクレーかチアゴの片方が古橋につき、もう片方がカバーに入る――そうした対策を講じてきたのは明らかだった。

 後方からフェルマーレンと山口蛍がロングパスを送り込んでも、相手CBのダンクレーとチアゴの堅守に阻まれ、なかなかゴールに迫れない。結局、試合終盤以外は、得点の気配がほとんどないまま終了した。

 古橋がここ9試合で8得点と好調で、ロングカウンターがチームの大きな武器になっているのは事実だが、それに固執しすぎているのは看過できない問題だ。

 特にC大阪戦の前半は、それが顕著だったのだ。前半から複数の攻撃パターンを組み立てていれば、おそらく得点がラストプレーまでズレこむことはなかっただろう。

 攻撃の停滞を打破するポイントが攻撃のバリエーションの増加であり、そのキーマンがアンドレス・イニエスタなのである。

 この元スペイン代表MFは昨年末に負った右太ももの怪我から復帰したばかりだが、言わずもがなそのプレービジョンとテクニックは一級品。チームの攻撃リズムを変化させるには打ってつけだ。
 C大阪戦でも57分に途中出場すると、トップ下の位置から度々のスルーパスで決定機を演出していった。

 イニエスタが出遅れていた今季、チームは攻守の切り替えに重きを置き、前掛かりだったバランスを改善。失点を大幅に減らすことで安定感を高めて上位に食らいついてきたが、 ここから目標のACL圏内に割って入るには、やはり攻撃のクオリティアップは不可欠だ。
 
 運動量の少ないイニエスタが入ることで、周囲の味方の守備面の負担が増える懸念はあるが、それを補って余りある影響力がこのMFにはある。

 復帰した広島戦からC大阪戦にかけて徐々に出場時間を増やし、イニエスタのコンディションは確実に上向いている。今後この攻撃の核をいかに組み込むかがチームの最重要課題となる。ここから、さらに上位に浮上できるかはイニエスタにすべて懸かっているといっても過言ではない。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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