[J1第14節]川崎2-0札幌/5月16日/等々力

「勝つって当たり前ですが、すごく大変なんですよ」

 鬼木達監督がしみじみと語っていたのは、ゴールデンウイークに行なわれた名古屋との首位攻防戦に連勝したあとのこと。

 ACLの日程の都合上、リーグ戦において、1位と2位のチームが中4日で、相対する異例のスケジュール。首位の川崎にとっては差を広げるチャンス、2位の名古屋にとっては猛追の絶好の機会。ともに落とせない2試合は、川崎の連勝で幕を閉じた。
 
 名古屋に連勝した翌日、普段から柔らかい物腰で質問に応じてくれる指揮官の表情がより穏やかに感じられた。その心情を尋ねた際に答えてくれたのが、冒頭の言葉であり、こう続けてくれた。

「それだけ大事なゲームだと思っていましたし、選手たちを高めたなかで戦った2試合でした。そこで結果を残せたことが少し(表情に)出てしまったのかもしれません。

 今は勝つのが当たり前のようになっているかもしれませんが、やっぱりすごく大変なんですよ。そういう意味で勝った時の喜びは選手にも噛みしめてもらいたいなと、そう思いながら戦っていますね」

 記録的な成績でリーグを制した昨季を含め、選手たちも口を揃えるチームの強みのひとつが「一喜一憂しないこと」だ。勝負には当たり前であるが、勝つ時も負ける時もある。

 ただ勝利を掴むためには最大限の努力、準備が必要になる。それを高いレベルでこなせているのが今の川崎であり、どんな時も収穫と課題を精査し、前に進むからこそ、一喜一憂しないのだろう。
 ではどうして、ここまで貪欲になれるのか。それはスタッフ、選手らクラブに関わる誰もが高い向上心を持ち続けているからこそ。1勝するための努力は計り知れない。ましてや、週末の札幌戦で打ち立てた、リーグ新記録の“22戦無敗”を達成するには途方のないチャレンジの繰り返しだったはず。

 ただ川崎の面々は厳しいトレーニングのなかでも、上手くなるための挑戦を楽しみ、指揮官も選手たちの成長を日々、喜んだ。苦しい試練もあったが、挑戦を楽しみ、その姿勢が結果に結びつき、さらなる高みへチャレンジする。好循環が今の川崎を押し上げていると言えるだろう。

 指揮官はよくクラブの伝統を口にする

「このクラブには背中で見せてくれる先輩たちがいる」

 その姿勢は脈々と受け継がれ、昨年限りで引退した中村憲剛、件の札幌戦で300試合出場を達成し、ゲームを決める追加点を奪った小林悠らがタスキをつなぎ、後輩を引っ張っている。

 勝利するためにはなにが必要で、どうすれば選手として、人間として成長できるのか――。

 その姿勢を見た後輩たちが改めて自らを磨き、チーム力も向上していく。川崎の強さは集団としてのクオリティの高さはもとより、一人ひとりの勝利への欲求、向上心がなによりのベースにあるのだろう。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)