試合数の違いこそあれ、今季のJ1リーグは日程の約3分の1が消化された。スタンディングの勢力図も徐々に見えてきたなかで、序盤戦を盛り上げた選手がいれば、期待に応えられなかった選手もいた。

 現状は燻っているかもしれないが、持てる能力を発揮すればスポットライトを浴びるはず。そんな選手は誰か。中盤戦以降の必見タレント5人を、河治良幸氏に選出してもらった。

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 序盤戦に低迷したチームと言えばガンバ大阪だが、ここからパフォーマンスを上げて飛躍の足がかりを担ってほしいのが小野瀬康介だ。

 昨季には坂元達裕(セレッソ大阪)や江坂任(柏レイソル)などとともに、代表入りを待望する声も多かったが、今季は新型コロナウイルスの影響に伴うチームの“迷走”に巻き込まれる形で輝きを失い、さらにタイミングも悪く怪我も重なってしまった。

 復帰戦となった15節・FC東京戦の試合後の記者会見で、ピッチに立って感じた雰囲気をできる限りストレートに伝えたのも人一倍の危機感のあらわれ。チームを思ってのことだろう。

 右サイドをアップダウンする活動量を今後も間違いなく見せてくれるはずだが、基本は使われる側なので、チームの軸が良いほうに固まっていかないと、後手後手の対応の中で頑張る姿だけが目に付いてしまう。

 その意味でも早く新監督が決まり、どういう形にしてもチームが進むべき方向が明確になることが活躍の条件になってくるかもしれない。言い換えれば、その条件さえ整えば、間違いなく再飛躍できるタレントのひとりだ。
 
 一方でリカリド・ロドリゲス新監督の下、チーム状態が良くなっている浦和レッズで“蚊帳の外”にいる興梠慎三も期待したいひとり。今シーズンの序盤で結果を出せなかったのはシンプルにコンディション面の問題もあるかもしれない。

 それにしても浦和のエースを担ってきたストライカーが、限られた時間の中でもここまで結果を出せずにきているのは無視できないトピックだ。しかしながら隔離期間を経て合流した新外国人FWのキャスパー・ユンカーがリーグ戦の3試合で4得点(5月25日時点)という大活躍を見せ、浦和の躍進を支えていることで、ある意味、肩の荷が降りた状態にある。

 R・ロドリゲス監督は4-4-2を採用している。2トップの組み合わせはユンカーを軸に、武藤雄樹のように幅広く動けるタイプを組み合わせるのがオーソドックスだが、興梠も元々はセカンドトップの選手であり、1トップでも広域で攻撃に絡んできたタイプだけに、ユンカーとの相性も悪くないだろう。

 2トップの候補だった明本考浩が左SBに独自の役割を見出し、小泉佳穂のサイドハーフやボランチで重用される状況で、興梠が2トップの一角として状態を上げてくるとユンカーとの相乗効果も出て、浦和が今季の目標に掲げるACL圏内というのも見えてくる。
 
 外国人選手ではサンフレッチェ広島のジュニオール・サントスを挙げたい。開幕戦2試合はドウグラス・ヴィエイラと縦の2トップを形成して連続ゴール。そこから音無しだったが、直近の15節・C大阪戦でようやく3点目となる同点ゴールを決めた。昨シーズンに在籍していた横浜F・マリノスでは、古巣の柏で鳴かず飛ばずだったところから、周囲の手厚いサポートを受け、水を得た魚のように推進力を発揮してゴール量産につなげた。

 しかし、広島で2トップのスタメンを張るには継続的にハイプレスのスイッチ役を担わなければいけない。C大阪戦では3-4-2-1の1トップとして浅野雄也と森島司の前で守備の追いどころを限定できることで、攻撃にパワーを残しやすい状況になった。

 もちろん今後も城福浩監督がこのシステムを使い続けるか分からないが、J・サントスの能力をストレートに生かしやすい形としてインプットされていくと、爆発的に得点数を伸ばしてくる可能性がある。

 いずれにしても、あらゆる場面でハードワークを求めるとフィニッシュにパワーを使えなくなる傾向が強いので、昨年のレアンドロ・ペレイラがそうであったように、守備の役割は担いながらも、ゴール前のチェックメイト役として確立されていくことが爆発的な活躍の鍵だ。

 U-24世代で序盤戦がやや期待外れだったのは、FC東京の安部柊斗。継続的に使われてはいるが、4-3-3の形があまり機能しないなかで、ある意味無駄に運動量を消費する時間帯が目立っていた。

 4-2-3-1のボランチに収まったことでプレーの判断基準が明確になり、中盤でボールを奪ったところから素早く前に出て行く本来の良さを出しやすくなった。1-0で勝利した15節・G大阪との試合でも直接ゴールには絡まなかったものの、安部をスイッチにしてチャンスが生まれるシーンが目立っており、トップ下の髙萩洋次郎を中心とした攻撃がさらにブラッシュアップされてくれば、今シーズンの初得点は時間の問題だろう。

 それと同時にアタッカー陣のゴールをアシストするチャンスも増えてくるはず。ただ、戦術との噛み合わせだけでなく、序盤戦は個人として停滞していたのも事実だ。一念発起してパフォーマンスを上げてきている感はあるが、大卒ルーキーとして注目を浴びた昨年以上の輝きを放てるかはここからの取り組み次第だろう。
 
 最後に挙げたいのが横浜の仲川輝人。MVPを獲得した2019年から一転して、昨シーズンは長期の怪我に泣いた。復活を期す今シーズンはリーグ戦で2アシストなど時折光るプレーがあるものの、ゴールはなし(5月25日時点)。パフォーマンスも本領発揮とまでは言い難く、同じ右サイドでポジションを争う水沼宏太のほうが存在感、大事なところでの仕事で目立っている状況だ。ここ最近ではエウベルが右に回るケースも増えており、ますます立場が厳しいものになっている。

 しかし、周囲と連動しながら局面で鋭い仕掛けや飛び出しなど、決定的な仕事をやってのける資質は失われていないはず。川崎フロンターレが無敗で首位を独走し、直接対決で敗れた2位の名古屋グランパスではキャプテンの丸山祐市が長期離脱となるなど、追いかけるのが苦しい状況になっている。

 川崎と名古屋より4試合少ない横浜は14節・鹿島アントラーズ戦で開幕戦以来の黒星を喫して一度勢いが止まってしまったが、仲川が横浜のエースとしてゴールとともに、輝きを取り戻せれば奇跡的な逆転に向けて、チームの推進力になることは間違いない。

取材・文●河治良幸

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