木村好珠先生はタレントから精神科医に転身し、マンチェスター・シティの大ファン、さらに大のサッカー好きが高じて北海道コンサドーレ札幌や横浜FC、レアル・マドリー・ファウンデーションのアカデミーなどでメンタルアドバイザーとして活躍する異色の経歴の持ち主だ。
 
 その美貌もあいまって、「海外サッカー好きの美人精神科医」として有名な木村先生が、6月17日発売の『ワールドサッカーダイジェスト』で新連載『一流プレーヤーのメンタル解剖』をスタート。これを記念して、サッカーとの出会い、海外サッカーにハマった理由、そしてペップ・グアルディオラの凄みなどを語ってもらった。
 
――サッカーとの出会いは、「10歳くらいの時に好きだった男の子がサッカー好きだった」という話を聞いたのですが、本当でしょうか?
 
「本当です(笑)。塾にいた男の子がサッカーをやっていて。いつも普通の会話はしていたんですが、ある日に突然、『チェルシーって知ってる?』って言われて。本当は『えっ、チェルシー? 飴?』って思ったんですけど、気に入られたいから『知ってる、知ってる』って答えたんです。それで仕方ないので、チェルシーをすごく調べました(笑)」
 
――そこで、イングランドにチェルシーというサッカーチームがあると知ったわけですか?
 
「そうです。最初の時点ではどこの国のチームかも分かってなかったですが(笑)、どうやらイングランドのプレミアリーグにあるチームだぞと。でも、当時から私はちょっと天邪鬼で、その男の子と同じチームを好きになるのは嫌だなと。当時はチェルシーとマンチェスター・ユナイテッドが強かったので、ユナイテッドを追うようになりました」
 
――1990年代後半から2000年代初頭のマンチェスター・ユナイテッドは、たしかに黄金期でしたね。
 
「そうです。ベッカム、ギグス、スコールズなんかがいて、後にクリスチアーノ・ロナウドやリオ・ファーディナンドも入ってきた頃です」
 
――とくにファーディナンドが好きだと伺ったんですが、それは見た目ですか?
 
「最初は完全に見た目ですね(笑)。やっぱり女子なんで。こんなに足が長くて顔も小さいサッカー選手っているの?と思いました(笑)。あと、なぜかその頃からフォワードよりもミッドフィルダーやディフェンダーが好きで、後ろでドンと構えて指示を出している姿とかがすごく魅力的だなと思っていました。大学で『好きな授業をプレゼンせよ』って授業があったんですけど、当時はまだユナイテッド推しだったので、『マンチェスター・ユナイテッドとオールド・トラフォードの魅力』というテーマで喋ったこともあります(笑)」
 
――そのままユナイテッドを応援し続けたんですか?
 
「そうですね。ただ、自分の大学受験で少し海外サッカーから離れ、さらに2013年にはファーガソン監督が退任されちゃって。私はファーガソン監督がすごく好きだったんで、『なんか私の好きなユナイテッドじゃなくなっちゃったな』と少し気持ちが離れてしまいました」
 
――国内のサッカーも観られていましたか?
 
「小中高あたりはJリーグもよくスタジアムまで行って観ていましたね。私は東京出身なので、味の素スタジアム(FC東京のホームスタジアム)やフクダ電子アリーナ(ジェフユナイテッド市原・千葉のホームスタジアム)にはよく通っていました。FC東京では福西さん、加地さん、茂庭さんなんかがプレーしていた頃ですね。私はずっと女子校だったんですけど、学年に4人くらいはサッカー好きの友達がいたので、みんなで観に行っていました。一時期はFC東京の練習場まで通って、選手と一緒に写真を撮ってもらったりもしていましたね。ここ数年は土日が仕事の場合が多いのでなかなかスタジアムまで通えていないですが、時間ある時は足を運ぶようにしています」
 
――フクダ電子アリーナでは、ジェフを応援していたんですか?
 
「ジェフというか、オシムさんが好きでした。ファーガソン監督もそうですが、ちょっとポチャッとした包容力のある年配の監督さんが好きだったんですよね〜。自分のおじいちゃんにちょっと似ている感じもあって(笑)」
 
――代表チームの試合も観ていましたか?
 
「観てました! 日本代表以外だと、スペイン代表が好きでしたね。当時は黄金期だったので、本当に強くて。高校生の時の携帯電話の待ち受け画面は、ビジャ、トーレス、シルバでした(笑)」
 
――とくにシルバがお好きだったらしいですが、どんな部分が気に入ったんですか?
 
「顔もプレーも好きでした。私、小柄で頭脳派のテクニシャンに惹かれるんですよ。日本だと三好選手や大島選手みたいな」
 
――なるほど。シルバは2010年にバレンシアからマンチェスター・シティに移籍しています。シティを応援するようになったキカッケもシルバですか?
 
「そうです! ちょうど大学2年くらいで、大学生活とタレント活動の両立で忙しくて、少し海外サッカーから離れていた時期でしたが、シルバが入団したシティを応援するようになりました。ちょうどその2年前にUAE資本になってチームがどんどん強化されている最中だったので、その右肩上がりの成長を見るのが楽しかったですね」
 
――そこからは基本的にはシティ推しで、主にプレミアリーグを観ている感じですか?
 
「はい。シティを中心にプレミアリーグを観るようになりました。ただ、他のリーグも時間が許す限り観ていますね。お仕事でご一緒させていただいているレアル・マドリー、セリエAだとユベントスなんかも観ますね」
 
――そうなると、週末は試合観戦でなかなかハードスケジュールですね。
 
「そう、土日はホントに寝不足になります(笑)。朝から診察が入っている日も多いのに、夜は試合を観なきゃいけないので」
 
――「観なきゃいけない」って言葉は、海外サッカー中毒の証ですね。別に観なきゃいけないわけではない(笑)。
 
「そうなんですよね〜(笑)。仕事仲間や友人に『この後、3試合観なきゃいけないのよね〜』って言うと、『観なきゃいけないって自分で決めているだけでしょ』と突っ込まれます(笑)」
 
――シティが勝った翌日とかは、やっぱり機嫌が良いわけですか?
 
「もうルンルンですね(笑)。仕事先でサッカー好きがいると、超笑顔で『なんかウチのチームが強すぎてすいません』、『ウチのデ・ブルイネすごくない?』とか言っちゃいます」
 
――「ウチのチーム」、「ウチの選手」と言ってしまう人は、もう単なるマニアですね(笑)。
 
「いや、もう間違いです(笑)。日本にもそういう方、けっこういますよね(笑)」
 
――ここ10年のシティはヨーロッパで最も強くなったチームの1つなので、応援する側としても楽しいでしょうね。
 
「そうですね。とくにペップ(グアルディオラ監督)が来てからの5年間は、新しい刺激が常にあるので楽しいですね。若手を育て上げる監督さんは少なくないですが、ペップは中堅やベテランも覚醒させるじゃないですか? 例えば、オタメンディ(現ベンフィカ)とかウォーカーとか。20代後半や30代の選手にも第二次成長、第三次成長をもたらせる。あれは凄いなと思います」
 
――たしかに、ペップの下でもう一皮むける選手は少なくないですよね。ウォーカーなんか、トッテナム時代とはまるで別人です。
 
「そう! 『えっ、ウォーカーってこんなプレーできるの?』みたいな。去年の夏にシルバ、あと同じく好きだったザネが退団してしまったので(シルバはレアル・ソシエダ、ザネはバイエルンへ)、今はウォーカーが一番の推しです」
 
――選手から入ってどこかのクラブを好きになる方って、その選手が退団するとモチベーションが難しくなったりしますが、木村さんの場合は違うんですね。
 
「正直、シルバとザネの退団はけっこうショックでした。でも、もう10年も推していると、クラブに対する愛情もかなり出てくるものですね。あと、ツイッターなどで日本のサッカーファンの方々に『シティ・ファンの木村さん』と覚えていただいたので、『自分はシティ・ファン』みたいな、ある種の刷り込みが脳内にありますね(笑)」
 
――ファンではなく精神科医というお立場から見て、ペップはどんなところが優れていると思いますか?
 
「やっぱり選手のメンタルに対するアプローチ、つまりマネジメントが上手いなと思います。『ALL OR NOTHING』(シティに密着して舞台裏に迫ったAmazonプライムのドキュメンタリー番組)を観ていても思いましたが、選手のフォローが絶妙。あとはメディア対応もすごく上手いなと思います。それと、理論武装のイメージがありましたが、意外とパッション系なんですよね。細かい戦術をガ−ガ−と言う一方で、『サッカーは戦いだ、気合いだ』みたいな空気感を出すし、さらに『お前たちのことは俺が全力で守る』みたいな雰囲気も出す。あのバランス感覚は素晴らしいです本当に」
 
――ペップは戦術家、激情家、そして人情家と様々な顔があるということですか?
 
「そうです。この3つを併せ持っている監督って、おそらく世界中でも一握りだと思います。私は監督やコーチの診察をする際によく、『指示と支援のバランス』というお話をさせていただきます。指導者なのでもちろん厳しい指示は大事だけど、それだけだとハラスメントになってしまう。だから、サッカーに打ち込む気持ちを支える支援も必要なんです。ペップは状況によって、そのへんのバランスを使い分けているんですよね。とてつもない戦術家なので指示がすごく強いタイプだと思いますが、要所要所で支援もしっかりしている印象です」
 
――たしかにペップは、試合を観ている限りかなりの戦術家かつ激情家で、ある意味でハラスメント的なタイプにも見えます。トラップの方向1つ、走る方向1つが指示通りにいかなかっただけで、めちゃくちゃ怒鳴っているシーンもありますもんね(笑)。
 
「そうそう(笑)。でも実際は、支援というフォローをしっかり裏でやっているんですよね。しかも、ペップはその支援をやっているんだという、アピールも上手い。実際は指示8・支援2くらいなんですけど、指示6・支援4くらいにも見えます(笑)。これは人を束ねる立場の人間には、すごく大切な能力の1つですね」
 
――レアル・マドリー・ファウンデーションのアカデミーでメンタルアドバイザーを務められていますが、現地スペインにも行かれたことがあるんですか?
 
「はい。サンティアゴ・ベルナベウ(ホームスタジアム)とシウダード(練習場)に行かせていただきました。マドリー・アカデミーのメンタルコーチは、いつも監督やコーチと話すそうです。主に選手たちとの接し方ですね。選手たちには、『いつでも相談に乗ってくれる人がいるよ』みたいな立場を貫いていて、あまりこうるさいことは言わない。すごく勉強になりましたね。その時にピピ君(中井卓大)ともお会いさせていただいて、写真も一緒に撮らせていただきました。彼はまだ15歳くらいだったんですけど、最高の笑顔でスッと腰に手を回してきて。恥ずかしながら、ちょっとドキドキしちゃいましたよ(笑)。でも、こうした振る舞いもクラブの教育の賜物だなと。日本在住の15歳だと、なかなか自然にあんなことってできないと思うんです。ピピ君はサッカーだけじゃなくて、人間としてたくさんのことをマドリーで学んでいるんだなと思いましたね」
 
――2019年の夏のプレシーズンでシティが来日した際は、パーティーなどにも参加されたそうですね。
 
「はい。めちゃくちゃ嬉しかったです。それこそウォーカーも写真を撮ってくれて。間近で見ると、当たり前ですけど肉体がすごくて、超カッコよかったです。しかも、良い匂いがしました(笑)」
 
――シティ・ファンとしての今後の目標はありますか?
 
「シティ・ファンがまだ日本には少ないので、それを少しでも増やしたいですね。日本ではまだユナイテッドやリバプール、アーセナル、チェルシーなんかのファンのほうが多い印象があります。だから、自分がシティの魅力をどんどん発信して、1人でも多くの方にシティを好きになってほしいと思っています。あっ、でもワールドサッカーダイジェストの連載はシティの選手だけではないので(笑)、みなさんに是非とも読んで欲しいです。よろしくお願いします!」
 
●インタビュー:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
 
[プロフィール]
木村好珠(Konomi KIMURA)
大学時代に『ミス日本』で準ミスに輝いた元タレントで、現在は精神科医、産業医、健康スポーツ医として活躍。大のサッカー好きでもあり、北海道コンサドーレ札幌や横浜FC、レアル・マドリー・ファウンデーションのアカデミーなどでメンタルアドバイザーも務める。ツイッター(@konomikimura)やインスタグラム(konomikimura)は精神科医およびサッカーファンの1人として更新中。