6月シリーズでU-24日本代表は、初戦のA代表戦こそ敗れたものの、続く2戦目でU-24ガーナ代表を6-0で下し、6月12日に行なわれた東京五輪メンバー選考前ラストマッチとなるジャマイカ代表戦でも4-0の快勝を収めた。

 ここでは、Jリーグの各クラブでスカウティング担当を歴任し、2019年には横浜でチームや対戦相手を分析するアナリストとしてリーグ優勝にも貢献した杉崎健氏に、U-24日本代表が6月に行なった3試合を振り返ってもらった。森保ジャパンの姿は杉崎氏の目にどう映ったのか。東京五輪に挑む18人のメンバー予想も交え、五輪代表のこれからを占う。

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 メンバー選考前最後のゲームとなったジャマイカ戦。この試合での守備は、悪かったところを探す方が難しいでしょう。自分たちよりも年齢が上の相手に対し、臆することなく球際でぶつかりにいくことができていたし、しっかりと自分たちがボールを握ることもできていましたね。

 ジャマイカのシュートを1本に抑えたことも非常に自信に繋がります。相手とのレベルの差を差し引いても、最終ラインでの相手の潰し方やボランチのボールの回収、前の選手がプレスバックすることなど、チーム全体で連動した守備が出来ていた印象です。

 攻撃面では4得点を奪えたことも良かったですが、それぞれ選手個人の特徴とチーム全体の融合がしっかりと表現できていた。個人の能力で取ったゴールも大事な要素ではありますが、それ以外にも久保建英選手と堂安律選手がポジションを入れ替えたり、三笘薫選手が外に張っているだけでなく、中に入って来たりと自分たちで工夫をしながら、相手の守備を崩すことにチャレンジしていました。

 攻撃の形にも様々なバリエーションが増えてきましたし、状況判断や技術力に優れる選手が揃っているので、相手に引いて守られたとしても、崩し切れる自信がついてきた。ただ今回はあくまで親善試合。あとはメンバーが確定してから行う7月の残り2試合でどう進化させるかでしょう。
 
 当然結果を求めつつ、内容も求めたガーナ戦とジャマイカ戦は、しっかりと0失点で終わらせて複数得点も奪えましたね。その2試合の前にA代表と試合ができたことも非常に良い経験になったと思います。

 A代表戦はOA枠3名を使わずに臨み、結果も内容も完敗でした。球際のデュエルで圧倒的に負け、自分たちがこれまで培ってきた攻撃でも良さが出せなかった。おそらくその後、ミーティングや選手間でコミュニケーションを取り、「このままじゃまずい」という意識が共有されたのでしょう。ガーナ戦は、OAが出場したこともありますが、球際でも強く、ほぼ全選手が目の前の相手だけではなく、後ろに戻ってサポートする姿勢が見え、結果にも繋がりました。これが6月の転換点となりました。

 いままではテクニカルな選手が多い2列目も足先でのプレーが多かった。しかし、A代表相手に通用しなかったことで、もっと繊細に頭と身体を使わなければいけないことを再確認させられた。ガーナ戦とジャマイカ戦は2列目の選手に意識の変化も見られました。メンバーの最終選考を兼ねた3試合は、OAの有無による連係面や融合性を試すうえで、有意義なテストマッチとなりましたね。
 
 私が6月の試合でとくに気になって見ていたのは旗手怜央選手。U-24代表の左サイドバックはいまだ選手が固定されておらず、今後キーとなるポジション。これまで古賀太陽選手や中山雄太選手など、様々な選手が起用されてきましたが、本来本職ではない旗手選手が直近の3試合中2試合に出場しています。

 ひとつ前のポジションの左サイドハーフは、三笘選手か相馬勇紀選手が務めることになるはずですが、こことの連係も重要です。とくに守備面での連係です。ジャマイカ戦の前半で旗手選手が抜かれそうになってファウルをしたシーンがあります。サイドハーフの戻りを待って挟み込むなどができないと、本大会では弱点にもなりかねません。

 ですが、旗手選手は中盤や前線でもプレーできるポリバレントな選手。仮に久保選手やボランチの選手が怪我をしてしまった場合、そちらにも移れることも含めれば有益な選手であることは間違いありません。また、周囲に田中碧選手と三笘選手がいてくれるとなると違和感なくプレーできるはずですし、川崎トリオのU-24代表での今後の連係も楽しみなところです。
 
●杉崎氏が選んだ東京五輪代表18名
GK  大迫敬介、谷晃生
DF 吉田麻也、冨安健洋、酒井宏樹、橋岡大樹、板倉滉、中山雄太
MF 田中碧、遠藤航、旗手怜央、相馬勇紀、三笘薫、久保建英、堂安律、三好康児
FW 上田綺世、田川亨介

 東京五輪では準決勝から決勝までが中3日で、それ以外が中2日と非常にハードなスケジュールとなっています。そのうえで、各ポジションには2選手を置きたいところです。しかし18人に絞らなければいけないなかで、複数のポジションをこなせて、なおかつ体力に自信のある選手が優先される可能性もあります。

 また、各ポジションにはなるべく違うタイプの違う選手を置いておきたいはず。試合の中では、得点が奪えない時間帯もあるでしょうし、守り切りたい状況も生まれるでしょう。そのときに途中から入る選手のタイプを変えて、問題を解決していくことを考えると、同じようなタイプは選ばないのではないでしょうか。

 システム変更にすぐさま対応できるという点も大切です。ジャマイカ戦では途中からシステムを3-4-3に変更しました。様々なオプションに対応できる18人がサバイバルを生き残ると見ています。

 OAの3選手は直近の2試合のパフォーマンスを見ても、リーダーシップや、周囲の選手に球際の「基準」を見せつけていました。この3人に合わせられないといけません。

 私の個人的な予想ですが、現在のOA3人に加えて田中選手、久保選手、堂安選手の6人はファーストチョイスであると予想しています。ボランチの遠藤航選手とのコンビは、田中選手がベストでしょう。ここのバックアッパーとして、CBとサイドバックもできる中山選手と板倉滉選手を選びました。

 トップ下の久保選手の代わりとなる選手がいないのも難しい部分ではありますが、ここのセカンドチョイスとして三好康児選手を入れました。三好選手はトップ下もできますし、右の堂安選手のポジションもできます。また、3-4-3でのシャドーにも対応可能。トップ下として違いを生み出せる能力のある選手だと思っています。

 FWに関しては上田選手が最有力。もうひとりについて、前田選手や林大地選手らがいると思いますが、彼らはスペースがあって生きるタイプ。例えば引かれた相手に対してターゲットを増やしたいケースでは選択が難しい。ジャマイカ戦でも前田選手のスピードを生かした攻撃は数少なかった。そういった意味で、上田選手がいなかった時に1トップを務め、FC東京では右ウイングで使われていることも踏まえて、「右」でのプレーも可能な田川選手が選ばれるのではと予想しました。
 
【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督の右腕として、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。

◇主な来歴
ヴィッセル神戸:分析担当(2014〜15年)
ベガルタ仙台:分析担当(2016年)
横浜F・マリノス:アナリスト(2017年〜20年)

◇主な実績
2017年:天皇杯・準優勝 
2018年:ルヴァンカップ・準優勝 
2019年:J1リーグ優勝

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