12日のジャマイカ戦(豊田)はU-24日本代表にとって、東京五輪最終登録メンバー決定前最後のテストマッチ。コロナ陰性証明書の不備によって3日のA代表戦が中止となったものの、その後も日本に滞在。セルビアとの試合を行なうなど、入念な準備をしていたジャマイカだけに、5日に対峙したU-24ガーナよりは歯応えのある相手だと期待された。

 確かに序盤は相手がボールを支配し、日本が受けに回る時間帯もあった。中南米特有のフィジカル能力の高さも要所要所で見られ、必ずしも一方的な展開にはならなかった。が、20分に久保建英(ヘタフェ)の左からのシュートが左ポストを直撃したあたりから日本がペースを掴み、飲水タイム直後の酒井宏樹(浦和)のスローインから久保が巧みなドリブルを繰り出し、4人の股を抜く豪快な一撃で先制する。
 
 これで相手は意気消沈。前半のうちに遠藤航(シュツットガルト)がミドルを決めて2点をリードし、後半にも途中出場の上田綺世(鹿島)と堂安律(ビーレフェルト)も追加点をゲット。終わってみれば4-0、シュート数も17対0という大差がついた。横内昭展監督は7人の交代枠を使い、U-24代表初参戦の鈴木彩艶(浦和)らもテストする余裕を見せたが、18人枠はほぼ確定しているのだろう。

 あくまで軸は吉田麻也(サンプドリア)らOA3人と久保、堂安、冨安健洋(ボローニャ)らA代表経験者で、そこに国内組の田中碧(川崎)や上田、相馬勇紀(名古屋)、谷晃生(湘南)らが絡む陣容で五輪本番に挑むことになりそうだ。そして、その主力の大半が9月からスタートする2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の候補メンバーに食い込むと見られる。

 すでにA代表実績があり、欧州5大リーグで戦っている久保、堂安、冨安は中心的戦力になる可能性が高い。冨安は現時点で頭抜けた存在になっているが、久保と堂安もU-24世代でのパフォーマンスを見ると個の打開力と決定力が際立っている。2人が柔軟にポジションを変えながら攻撃を組み立てるからこそ、ガーナ戦もジャマイカ戦もゴールを量産できた。このコンビをそのままA代表に持ち込んで、南野拓実(サウサンプトン)や鎌田大地(フランクフルト)と組ませるのも一案。彼らとは2019年の2次予選前半戦や2020年の欧州遠征でもトレーニングを重ねていて、すんなり合わせられるだろう。そのアドバンテージはやはり大きい。

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 久保、堂安、冨安の3人以外で最終予選参戦が有力視されるのは、板倉滉(フローニンゲン)、中山雄太(ズウォーレ)、田中碧の3枚ではないか。

 ご存じの通り、板倉は5月28日のミャンマー戦で吉田とセンターバック(CB)を組んでおり、第3のCB浮上もあり得る状況だ。ただ、CBに関しては欧州組の植田直通(ニーム)や11日にA代表が戦ったセルビア戦(神戸)で存在感をアピールした谷口彰悟(川崎)、2018年ロシアW杯レギュラーの昌子源(G大阪)もいて、競争は熾烈を極める。板倉が東京五輪で主力のひとりとしてフル稼働し、来季も欧州で存在感を示し続けなければ、地位を掴むことはできない。

 それは中山にしても同じ。U-24代表では左サイドバック(SB)がメインになりそうだが、いかんせんそこは本職ではない。「今季ズウォレではCBと左SBとボランチを3分の1ずつプレーした」と本人も言うように、3つのポジションを柔軟にこなせるマルチ能力は魅力だが、左SBとしてのスペシャリティは足りない。ただ、長友佑都(マルセイユ)のバックアップ人材が薄い実情もあるだけに、欧州経験のある彼は貴重。しかも左利きだ。その優位性で最終予選参戦という道が開ける確率が高い。
 
 田中碧に関しては、今回組んだばかりの遠藤航とのボランチコンビの関係性が素晴らしく、「そのままA代表に持って行きたい」と森保一・横内両指揮官も考えているのではないか。3月の日韓戦以降、守田英正(サンタ・クララ)が台頭し、遠藤航のパートナー候補一番手となっているが、セルビア戦の前半を見る限りだと中盤の統率力や積極性をやや欠いた印象も拭えなかった。

 そうした面を視野に入れると、伸びしろの大きな田中碧への期待はより一層高まってくる。そこで気になるのが、高度な国際経験だ。五輪本大会というのは彼の現在地を計る千載一遇の場。本気モードの南アフリカやメキシコ、フランスと互角に渡り合えれば、最終予選出場へのゴーサインが出る。もちろん彼自身も今夏の海外移籍が濃厚と見られるだけに、新天地で試合に出られるかどうかというハードルは残るが、今が重要局面なのは間違いない。ここは一気にA代表のポジションを掴みにいきたいところだろう。
 
 もうひとり、最終予選を戦える可能性がある選手がいるとすれば、上田綺世ではないか。大迫勇也(ブレーメン)が絶対的FWとして長く君臨する最前線もA代表の中で手薄なポジションだからだ。セルビア戦でオナイウ阿道(横浜)がタメを作り、起点となる仕事をしたことで、長友も絶賛していたが、まだ彼もA代表デビューを飾ったばかり。U-20世代では世界舞台に立っていないこともあり、本当に高いレベルでコンスタントな仕事が働きを見せられるのかという疑問が残る。それに比べると、上田は2019年コパ・アメリカ(ブラジル)やE-1選手権(釜山)、ユニバーシアード(ナポリ)などを主力で戦っていて、外国人相手の感覚をある程度、身に着けている。そこは希望が持てる部分だ。

「大迫選手は今の日本のトップクラスのFW。僕もいずれは大迫君みたいな存在になりたい。盗めるものは全部盗みたいと思っています」
 
 こう意欲を燃やす22歳のFWを早く大迫と一緒にプレーさせ、感覚や間合いの取り方、DFとの駆け引きを覚えさせた方がいいという考え方もある。大迫がケガがちで、コロナ禍ということもあって重要局面で離脱する可能性が少なからずあるだけに、早く後継者を育てておくべきだ。

 このように、まずはA代表経験のある欧州組と手薄なポジションの国内組が組み込まれることになるだろうが、最終予選はカタールW杯直前まで続く。その間に新戦力参入のチャンスは必ず生まれる。U-24世代の面々は五輪代表メンバーに入る入らないに関わらず、そこを目指すことが肝要だ。かつて五輪落選の憂き目に遭いながら、W杯で活躍した大迫や原口元気(ハノーファー)のような好例を参考にしつつ、高みを目指してもらいたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)