第101回全日本サッカー選手権大会・天皇杯2回戦の残り6試合が、6月16日に行なわれた。この日も関西サッカーリーグ1部のおこしやす京都AC(京都府代表)がJ1のサンフレッチェ広島に5−1と大勝するなど波乱が続いているが、青森県代表でJ3のヴァンラーレ八戸もニッパツ三ツ沢球技場でJ1の横浜FCに2−1と競り勝った。

 八戸は前半から自信を持って試合を進めているように見えた。36歳のベテランMF新井山祥智を中心にパスをつなぎ、横浜FCのミスから相手ゴールへ迫る場面もあった。守備ではDFの伊勢渉、赤松秀哉、近石哲平に加え、左サイドはMF黒石貴哉、右は丹羽一陽で5バック気味に構え、横浜FCの走り込むスペースを消した。

 前半はスコアレスで折り返したが、八戸は63分、右サイドから丹羽がクロスを送ると、横浜FCのGK六反勇治が後逸。これを拾ったMF島田拓海がゴールネットを揺らし、均衡を破った。さらに74分、相手陣内右サイドで丹羽がMF中村俊輔から力づくでボールを奪取。そのパスを受けたMF相田勇樹が左足でゴール右隅に決めた。

 その後の横浜FCの猛反撃にもよく耐え、88分にFWクレーベに追撃の1点を許したものの、逃げ切りに成功した。結果だけを見れば、下のカテゴリーのチームが上のチームを破るジャイアントキリング。しかし、八戸のプレーぶりは勝者にふさわしいものだった。それは横浜FCの早川知伸監督の「なにひとつ、八戸さんを上回れなかった」というコメントからも明らかだろう。
 
 正直に言えば、私は八戸のサッカーをじっくり見るのは今回が初めてで、知識も乏しい。サッカーダイジェストの『2021 J1&J2J3 選手名鑑』を参考にさせてもらえば、3年ぶりに復職の葛野昌宏監督は昨シーズンの反省を踏まえ「組織でやらなければいけないと痛感した」という。この天皇杯2回戦は、その指揮官のコンセプトを垣間見ることができた。選手間の距離も良く、それがテンポの良いパスワーク、相手のミスを一気にチャンスに結び付ける連携にもつながった。

 前夜、大阪で見たワールドカップ・アジア2次予選では、キルギスが日本に1−5と力の差を見せつけられた。だが、格上のチーム相手にただ後方に引きこもる、あるいはロングボールを使ったカウンターアタックに頼るだけでなく、攻めるべきときはしっかりパスをつなぎ、果敢にドリブルを仕掛けるなど、堂々と自分たちの“フットボール”を主張していた。その姿勢は八戸にも共通していたように思う。

 雨上がりの湿気が肌にまとわりつくような夜、彼らのプレーに清々しさを感じた。

取材・文●石川 聡

【お詫びと訂正】
当初掲載した写真に誤りがありました。FC岐阜、ヴァンラーレ八戸および関係者のみなさまにご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。