[東京五輪グループステージ第3節]U-24日本4-0U-24フランス/7月28日/横浜国際総合競技場

 4-0。絵に描いたような快勝というのは、五輪のような大舞台、しかも強豪相手になかなか無いが、フランス戦はまさにその表現がぴったりの結果と内容だった。

 もちろん、これまでの試合と同じく、全員の意識が噛み合った前からの守備や、ボールを持ったら積極的にゴールを狙う姿勢、それに伴うビジョンの共有、さらには頼もしいオーバーエイジの存在など、ベーシックなところだけでも勝因は多く挙げられる。

 しかし、フランスも徐々にチームとして良くなってきており、決して与しやすい相手ではなかった。他会場でメキシコが南アフリカに勝利することを想定すれば、フランスとしては2点差以上で勝たなければ準々決勝に勝ち上がれないため、攻撃的に来ることは間違いなかった。だが日本が早い時間帯に先制できれば、心理面も含めて大きなアドバンテージを握ることができる試合だった。

 そうした状況でこの試合のキーマンになったのは、左サイドハーフで起用された旗手怜央だ。もともと同世代で大学ナンバーワンのストライカーと評価され、森保一監督も最初の頃は上田綺世とともにFWとして招集し、1トップで起用することも多かった。

 そこから2列目の候補にもなっていたが、所属クラブの川崎フロンターレで左サイドバックに新境地を見出すと、五輪代表のマルチロールとしてさらに評価を高めた。

 今回も基本的には中山雄太と左サイドバックのポジションを争う構図が予想され、南アフリカ戦ではスタメンの中山と代わり、後半途中から左サイドバックとして1-0の試合をクローズする役割を果たした。ただ、この時も本人は前めのポジションで使われることを想定して準備していたようだ。

 2試合目のメキシコ戦では、ディエゴ・ライネスという左利きのサイドアタッカーをほぼマンツーマンで封じる仕事を中山が担い、2-1の勝利に貢献した。その2試合目で出場機会のなかった旗手が、フランス戦では左サイドハーフとして先発起用された戦術的な理由は、大きく2つあったと考えられる。

 1つは、フランスの攻撃がかなり右サイドから作られるということが関係している。4-3-3の右ウイングにはA代表の経験も豊富なオーバーエイジのフロリアン・トヴァンがおり、右サイドバックには積極的なオーバーラップとクロスを得意とするクレマン・ミシュランが構える。
 
 精力的なディフェンスを持ち味とする旗手だが、守備のスペシャリストでないことは本人も認めており、メキシコ戦に続き中山が“トヴァン封じ”の役割を担うことは理にかなっている。その一方でミシュランの攻め上がりに対しては、運動量と馬力があり、ポジションの取り合いでも主導権を取れる旗手の特長を生かしやすい。

 守備のパワーという意味では相馬勇紀も負けていないが、特に序盤はサイドハーフが自陣で対応するシーンも多く、旗手の対応が効いていた。

 もう1つは攻撃面の特長だ。相馬や三笘薫のような本格派のサイドアタッカーではないが、オフ・ザ・ボールで相手の嫌がるスペースに潜り込むビジョンとセンスは今回のチームの中でも卓越したものがある。

 フランスの右サイドは攻撃に強みがある反面、守備ではトヴァンが前残りになる傾向が強く、ミシュランも人を的確に掴む守備をあまり得意としていない。そうしたスカウティングも森保監督や選手に入っていたはずだ。
 
 そのフランスに対して、旗手のスペシャリティが大いに発揮されたのが、27分の久保建英による先制ゴールのシーンだった。

 日本は右からのスローインを久保、堂安律、ボランチの遠藤航とパス交換して後ろに戻すと、酒井宏樹からインサイドでボールを受けた田中碧が3人のディフェンスを破るグラウンダーの縦パスを久保に通した。

 相手の左サイドバックと左センターバックの合間で前を向いた久保は、左サイドバックのティモテ・ペンベレを引き付けながら、1トップの上田に付ける。上田は右足でボールをコントロールしながら左センターバックのアントニ・カーチを右に外して、ワイドな角度からシュート。GKポール・ベルナルドーニが横っ跳びでセーブするが、こぼれ球に飛び込んだ旗手とミシュランが潰れて、手前のスペースに回り込んだ久保が左足で決めた。

 このシーンを旗手の視点で振り返ると、スローインから田中がボールを持つ時点で、上田のすぐ左横にポジションを取り、右センターバックのピエール・カルルとマッチアップするような構図になっていた。そこから久保が縦パスを受けて、上田にパスを通す時にフランスのディフェンスラインも下がらざるを得ないが、旗手はその流れに付き合うことなくステイすることで、いわゆる“浮いた”ポジショニングをしている。

 そしてボールを受けた上田が外にディフェンスを外す動きを取ることで、センターバックの二人がそれに引っ張られると、前方にエアポケットが生じる。そこを旗手は見逃すことなく突こうとしたが、右サイドバックのミシュランも中に絞って消しにきた。

 そこからGKベルナルドーニが弾いたボールを巡る競り合いになり、結果的に手前のスペースで久保がシュートできたのだ。

 旗手としては最初から潰れる仕事をこなすというより、自分でゴールを仕留めようとしたはずだが、ミシュランが対応してこなければそこでシュートを打てていただろうし、対応してきたことで背後の久保が仕留める。どちらにしても、フランスはGKがシュートを前に弾くしかなかった時点で、詰んでいたと言える。
 
 これで断然優位に立った日本は、34分に中盤でボールを奪ったカウンターから酒井が決定的な2点目を挙げたが、ここでも旗手が久保とのワンツーから上田の決定的なシュート、リバウンドを酒井が押し込む流れに導いた。

 その後もミシュランの攻撃参加をうまく限定し、必要に応じてトヴァンを中山と挟撃して封じた旗手。攻撃にも抜け目なく関わり、70分には中山の縦パスを起点に上田と絡んで、途中出場の三好康児のゴールをアシストした。

 左サイドは相馬と三笘、さらに三好も候補になっていたポジションで、また違った持ち味を発揮して勝利に貢献した旗手。今後も左サイドバックと左サイドハーフ、場合によっては4-3-3のインサイドハーフも視野に入れながら準備していくことになるが、久保や堂安のようには目立たなくても、金メダル獲得のキーマンになっていくことを予感させるフランス戦のパフォーマンスだった。

文●河治良幸

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