東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J2・栃木SCを取り上げる。

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 栃木はハイプレス戦術を軸とした戦い方は徹底できているが、昨季の主軸となった選手たちが個人昇格した穴を、いまだに埋め切れていない。また、対戦相手の周到な栃木対策を前に、苦しい戦いを余儀なくされている。23節終了時点でわずか4勝、順位は17位と降格圏の一歩手前に付ける。

 浮上の足かせになっているのは、手堅い守りには定評がある栃木らしからぬ失点数の多さだ。23節終了時点で「30」に到達している現状はいただけない。田坂和昭監督も、「サイドのパワー不足」を一因に挙げている通り、今季はハイプレスで前掛かりに奪いに行ったときに、サイドで奪い切れずに掻いくぐられるシーンが増えており、それが失点数の増加に繋がっている。
 
 ただ、抱える課題が明確だったことから、強化部が打つ手も早かった。栃木は他チームをリードするように早々に補強に動いた。6月中に昨季のチームを支えたサイドバックの黒﨑隼人を大分から、オビ・パウエル・オビンナを横浜F・マリノスから呼び戻すと、7月上旬には鳥栖から元日本代表の豊田陽平を獲得。いずれも栃木のチームスタイルに沿った的確な補強だった。中断期間に入る前の23節・甲府戦にはさっそく3選手が揃い踏みし、「明らかにチーム全体のパワーは増した」(田坂監督)という感触を得るに至った。

 攻守の核となる選手たちが加入したことに伴い、残りの19試合で予想されるのは、昨季のように力ずくで攻撃の回数を確保するシーンが増えるだろうということ。そうなったときに肝心なのは、いかに試合に勝ち切るためのゴールを奪い切れるかになる。
 
 チームがこの中断期間中に軸足を置いているのは攻撃面だ。豊田や矢野貴章といった力のある前線を活かすロングボールを交えた攻撃の作り方、そしてサイド突破を図ったときのクロスボールの精度アップであり、ゴール前の入り方。その意志疎通の擦り合わせに多くの時間が割かれている。

 豊田は栃木に加入したときに自身が得点を量産するためには、「(クロスなどの)球の質が重要。選手それぞれの球の質やボールの置きどころを見ながら、どうすべきか判断していきたい」と語っているが、中断期間が明けた頃にはすでにメンバーたちと約1か月という時間を共有したことになり、仲間との細部の共有がかなり進んでいることが期待できる。
 
 リーグトップタイとなる「9」という引き分け数の多さが物語るように、今後、栃木が浮上するために必要なのは、拮抗した試合を力強くで勝ち切る力に他ならない。矢野との共演という観点も含めて、豊田を中心とする得点力に大きな前進が見えれば、自ずと順位は上がっていくだろう。

取材・文●鈴木康浩(フリーライター)

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