スウェーデンとの準々決勝、7分にあっさりと先制された時はどうなるかと思いきや、そこからしばらく相手の攻撃を耐え凌ぐと、23分には田中が同点弾。長谷川の絶妙なクロスから田中が巧みに押し込んだゴールで追いついたなでしこジャパンは、1−2とされるまで好パフォーマンスを披露した。

 グループリーグの3試合とは違って、長谷川、岩渕、田中を軸に連動した崩しが見られ、優勝候補のスウェーデンを押し込む時間帯もあった。組み立ての局面で意図的なパスワークもあり、グループリーグからだいぶ修正されている印象を受けた。

 2失点目はどちらかと言えば相手のクオリティを褒めるべきで、あれを防ぐほうが難しいのではないか。結果的にニアサイドを抜かれたGKのポジショニングも決して悪くなかった。むしろ悔やまれるのはPKで失った3ゴール目だが、いずれにしてもグループリーグよりは戦う姿勢が見えた。

 とはいえ、負けは負け。メダルに手が届かなった事実は重く受け止めないといけない。過去2度の五輪を経験している吉田麻也が「ただのオリンピアンとメダリストではかなり違う」と言うように、なでしこジャパンのベスト8という結果が良い意味でスポットライトを浴びることはないだろう。

 堀米雄斗選手、西矢椛選手らがメダルを掴み取ったスケートボードにブームが到来しそうな一方で、マイナースポーツの域をおそらく出ていない女子サッカーは東京五輪で脇役に甘んじることになった。女子ワールドカップで一度頂点を極めている背景もあり、ベスト8進出という響きに新鮮さも感動もないのだから。

 なでしこジャパンは、女子サッカーが再び脚光を浴びることができるチャンスをフイにしてしまった。これで、さらなる“なでしこ離れ”が起きても不思議はない。
 
 9月には日本女子プロサッカーリーグのWEリーグが開幕するが、果たして盛り上がるだろうか。今は期待よりも不安のほうが大きい。

「今後女子サッカーが発展するうえで、代表チームが強くないといけない」

 岩渕のこの言葉を、今回五輪を経験した選手たち、海外組、これからWEリーグを戦うプレーヤーたちはどう受け止めるだろうか。

 東京五輪を戦った選手たちに気持ちが足りなかったとは思わない。舞台はオリンピックである。メンバーに選ばれたことを誇りに感じて、ピッチの上では全力を尽くしたはずだ。それが全力に映らなかったとしたら、それは根本的に球際の強さ、技術が足りないという結論に行き着く。

 少なくとも、日常的に“ヨーロッパの強さ”を体感している熊谷(現バイエルン)や長谷川(現ミラン)は東京五輪でも普通に戦えていた印象だ。しかし、国内リーグが主戦場の選手はどうか。非日常の強さを目の当たりにしてペースを乱されたとの見方もできるだろう。どれだけ厳しい環境でプレーしてきたか、そのひとつの答が東京五輪で出たと言えるだろう。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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