今回のビジャレアル対マジョルカ戦は、タケ・クボ(久保建英)にとって古巣対決ということでスペインでも注目されていた。

 昨シーズン、ウナイ・エメリ監督になかなか出場機会を与えてもらえなかった。そんな相手を向こうに回し、活躍を見せる。タケにとってはリベンジマッチの意味合いもあった一戦だった。

 試合は立ち上がりからビジャレアルが試合をコントロール。マジョルカは少ないチャンスを得点に繋げることに活路を求めていたが、そんな中で最も危険な存在となっていたのがタケだった。

 チーム全体で右サイドの攻撃をタケに託すという約束事が確立され、スピードと技術を武器に果敢に相手DFに立ち向かっていった。守備でもハードワークを披露し、試合に全力で入り込んでいる姿が印象的だった。

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 惜しむらくは、パスを出すにしてもシュートを打つにしても最後のところで思い切りの良さを欠いていた点。ゴール前まで持ち込んだシーンは何度かあったが、フィニッシュに繋げることができず、ビジャレアルのゴールを割るには至らなかった(試合はスコアレスドローで終了)。

 タケがマジョルカで幸せな日々を過ごしているだろうことは、プレーを見ていても想像がついた。すでに攻撃の中心選手として君臨し、ボールも自然に集まってくる。チームメイトの信頼を得て心地よくプレーしている姿がそのまま、他のクラブからもオファーが届いていた中、昇格組のマジョルカを新天地に選択した疑問への答になっている。

 この日は周囲のサポートに恵まれなかったが、相手の守備をこじ開けようと懸命にプレーし続けていた。先述した通り、ゴール前で思い切りの良さを欠いて、その隙を突かれボールを奪われるシーンもあったが、ビジャレアルの守備陣に脅威を与えていた。

 1年前に加入したビジャレアルは、マジョルカよりもレベルの高い選手が揃っている。そんなレベルの高いチームメイトと一緒にプレーすることでタケの成長が後押しされると考えられたが、その青写真通りに事は運ばなかった。

 出場機会に恵まれず、起用されてもアピールしなくてはいけないという気持ちが強すぎて、慌ててプレーしている印象もあった。それは1月に移籍したヘタフェでも同様で、そこがまた現在のマジョルカでの姿との大きな違いでもある。

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 やはり2シーズン前の経験が大きいのだろう。勝手知った街で暮らし、馴染みの深いクラブでプレーする。当時のチームメイトが多く残り、愛情を持って応援してくれるファンの存在がある。

 彼らの脳裏にはその前回在籍時、とりわけ後半戦での活躍が深く焼き付けられている。そうした相乗効果が加入早々の充実したパフォーマンスに繋がっているのは間違いない。
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 ゴールに直結するプレーをどれだけ見せていくかが今後の課題となるが、シーズンはまだ始まったばかり。ビジャレアルは強固な守備も武器にしており、そんな中で、独力で局面をこじ開けるのは困難だったことも事実だ。

 周囲の信頼を追い風に、培った経験と自信を糧にプレーを続けていけば、最終局面のプレーの精度に磨きをかけることも可能なはずだ。すでにその資質は垣間見せている。ビジャレアルで叶わなかった活躍を今シーズン、マジョルカで見せてくれることを期待している。

文●ハビエル・マタ(アス紙ビジャレアル番)
翻訳●下村正幸