プレミアリーグでは来シーズンからビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が廃止される可能性があるようだ。15日、イギリスメディア『BBC』や『スカイスポーツ』などが伝えている。


 審判の判定をサポートするために世界中の多くのリーグで採用されているVARだが、プレミアリーグでは判定をめぐって様々な問題が頻発している。特に今シーズンは審判間のコミュニケーションミスで間違った判定で試合が再開されたことがあったほか、オフサイドが見逃されたり、PKと判定されないこともあるなど、試合後にプロ審判協会(PGMOL)が誤審と認め謝罪することもしばしば起こっている。


 中でも物議を醸す判定が今季何度かあるウルヴァーハンプトン(ウルヴス)は、プレミアリーグに対してVARの廃止を求める意見書を正式に提出した模様で、以下のように声明を発表している。


「2019−20シーズンにVARが導入されたことはフットボールとプレミアリーグの最大の利益のために誠意を持って下された決定だった。しかし、それはファンとフットボールの関係を損なわせ、プレミアリーグのブランド価値を損なう多くのマイナスな結果をもたらしてしまっている」


「決議案を提出するという決定は、プレミアリーグ、PGMOL、その他の人々に最大限の敬意を払って、慎重に検討した結果下されたものだ。責められることは何もなく、私たちは皆、フットボールにとって可能な限り最高な結果を求めているだけだ。そしてすべての関係者は追加のテクノロジーの導入を成功させるために懸命に努力をしてきた」


「しかし、プレミアリーグでのVARの5シーズンを経て、その将来について建設的かつ重要な議論をする時期が来た。私たちの立場は精度のわずかな向上のために支払っている代償は試合の精神に反するものであり、その結果、2024−25シーズン以降はそれを削除すべきであるということだ」


 これを受け、来季のVAR廃止を決める投票が6月6日に開催される年次総会で実施される予定になっている。このため、ウルヴスを除いた19クラブのうち、13クラブがこれに同意した場合、来季以降のプレミアリーグではVAR廃止が決定する。


 しかし、プレミアリーグとしてはVARの採用によって正しい判定が82パーセントから96パーセントに増加したことが示されているデータもあることから、VARを廃止することは考えてはおらず、運用方法の改善に力を入れていく方針であることを明らかにしている。


 プレミアリーグのスポークスマンは「プレミアリーグは来月に行われる年次総会でクラブとVARに関する議論をしていくことを確認する。クラブには総会で提案を行う権利があり、私たちはVAR使用に関する懸念や問題を認識している。しかし、リーグはVARの使用を全面的に支持しており、PGMOLとともに試合とファンの利益のためにシステムを継続的に改善していくことに取り組んでいく」とコメントしている。


 なお、現時点ではいくつかのトップクラブはVARを完全に廃止することには同意しておらず、その運用方法やサポーターとのコミュニケーションの改善に焦点を当てるべきだという考えがある模様で、VAR廃止案が可決されるかは不透明となっている。それでも、ウルヴスは賛成票を集めるために他クラブに働きかけていくことも予想されており、今後の動向には注目が集まっている。