スペイン代表への復帰が期待されているMFイスコが、16日に行われたラ・リーガ第36節ラス・パルマス戦で負傷交代した。


 かつてのイスコは“マヒア”(魔術師)としてマラガやレアル・マドリード魔法をかけたが、レアル・マドリード在籍時の終盤から安定した出場機会を確保できなくなり、徐々にその輝きが失われていった。レアル・マドリード退団後に加入したセビージャも約半年間の在籍で退団し、昨季後半戦は無所属のまま終える。このままイスコは“過去の人”となると思われたが、昨年夏にベティスへ完全移籍加入すると、マラガ時代の“恩師”でもあるマヌエル・ペジェグリーニ監督の下で復活を果たした。


 今季はここまで公式戦通算で36試合出場9ゴール7アシストを記録。日本代表MF久保建英が所属するレアル・ソシエダと来季のヨーロッパリーグ(EL)出場権を争うベティスで、攻撃の中心に君臨している。傑出したテクニックと豊富なアイデアを武器に、ベティスの攻撃陣を彩る存在だ。4月にはラ・リーガ月間MVP(最優秀選手)にも輝いた。


 そんなイスコは2019年6月を最後にスペイン代表から遠ざかっており、“ラ・ロハ”の一員として参加したメジャーな大会はFIFAワールドカップロシア2018のみ。EURO2020やFIFAワールドカップカタール2022などの大会では、スペイン代表のユニフォームを身に纏うイスコの姿は見られていない。


 本大会まで残り1カ月ほどとなったが、ラ・リーガ最終盤に差し掛かってもイスコの輝きは落ちるどころか、むしろ増している。12日に行われたラ・リーガ第35節アルメリア戦(○3−2)ではベティスの全3得点を演出し、自身のプロ通算600試合目の出場に華を添えた。


 しかし、16日に行われたラ・リーガ第36節ラス・パルマス戦は2−2のドローで終了し、来季のEL出場に向けて手痛い結果となっただけでなく、前半途中にイスコが負傷交代するアクシデントにも見舞われた。


 ペジェグリーニ監督はラス・パルマス戦の試合前会見にて、「彼が現時点で最高のスペイン人選手なのかどうかは判断しかねる」と明かしつつも、「だが、彼が個人としてこれ以上ないほどに素晴らしいシーズンを過ごしていることは事実だ。彼自身キャリアの中で最も良い時を過ごしていると言っても過言ではない。それは数字が証明しているし、フィジカル面でも驚くようなレベルだ」と“マヒア”を称賛。「彼がベティスに多大な貢献をしていることに疑いの余地はない」との言葉で、そのパフォーマンスを褒め称えていた。


 また、記者からEURO2024に出場する可能性について問われると、ペジェグリーニ監督は「私は常に監督の仕事を尊敬している。彼の立場になって考えると、非常に難しい仕事だよ。常にレベルの高い選手たちがメンバーの枠を争う。彼自身も多くの候補となる選手たちのなかから、自らのチームに適した選手たちを探さなければならない」と、デ・ラ・フエンテ監督に共感。一方で、「ただし、おそらく今季のイスコを見ている人ならば、おそらく99%以上の人は彼がEUROに行くことになると確信しているはずだ」と話し、イスコのパフォーマンス自体は代表レベルに値していると主張したなかで、タイミング悪く負傷に見舞われる形となった。


 かねてよりイスコ自身はスペイン代表への復帰願望を公言していたが、ベテランの復帰に消極的だったルイス・デ・ラ・フエンテ監督から声はかからず。3月のインターナショナルマッチウィークでは、今夏に控えるEURO2024に向けた“ラストチャンス”として招集に踏み切る可能性も報じられたものの、当時も負傷によりチャンスを棒に振っていた。


 なお、スペインメディア『マルカ』によると、今回ふくらはぎを痛めたイスコは、歩いてドレッシングルームに戻ることはできたものの、試合終了後には松葉杖をついてバス乗り込む姿が確認されたという。現時点で負傷の程度は確認されておらず、現地時間17日のうちには検査が行われる見込みだ。


 ここまで好調をキープし、スペイン代表への復帰が期待されていたイスコ。注目のメンバー発表は今月27日の予定だが、今回のケガは選考に影響を与えるのだろうか。



【ハイライト動画】イスコは無念の負傷交代、ベティスもラス・パルマスと手痛いドロー