6/5「サウナで事故増加」報道を徹底解説!

2024年6月5日、インターネットのニュースサイト上では「サウナ事故増加」なる報道が各社から一斉にありました。発信源は「消費者庁」の会見とそのニュースリリースでした。

え?サウナが悪いと消費者庁が言いだしてるの?!

全14ページのニュースリリースを読み解くと、さにあらず!!

サウナ浴を肯定した上で、ここ2年は各10件と過年度比では事故が倍増。正しい入り方に努めてくださいと注意喚起を促す極めて真っ当なリリースでした。

きょうのととのえ道場は、ネット上では過熱気味だった印象が拭えない「サウナ事故増加報道」について徹底解説します♪パンダ・リーです。

消費者庁「サウナ浴での事故に注意 」と注意喚起

6月5日メディア各社が「サウナで事故増加」と報道

2024年6月5日(水)、TV、ネットニュース、SNS上には、消費者庁からの情報として「サウナで事故増加」等の見出しが躍りました。具体的には「サウナでやけどを負うなどの事故に消費者庁が注意を呼びかけ サウナで意識失い、右足の指5本切断したケースも」(TBS)。「死亡例も“サウナの事故”増加 消費者庁が注意喚起」(ANN NewsCH)。「『心臓発作』『足指5本切断』死亡例まで…サウナ事故急増で消費者庁が注意喚起、過度な温度差は中高年に危険」(光文社FLASH)など、サウナーにとってはちょっとセンセーショナルな内容でした。心配された方も多かったのではないでしょうか。

発信源は「消費者庁」会見とリリース

メディアが一斉に報道したネタ元は、同日行われた消費者庁の会見と消費者庁のHPにもUPされているこちらのニュースリリースでした。タイトルは「サウナ浴での事故に注意 ー体調に合わせて無理せず安全にー」。全14ページに渡り、サウナ概略、サウナ事故の発生事例、正しいサウナの入り方などを紹介しています。

消費者庁の任務は「消費者被害の発生又は拡大防止」

リリースの詳細に触れる前に、消費者庁と消費者庁のミッションをサクッと確認しましょう。消費者庁は2009年、国政運営を実現する内閣府の中に独立した機関である外局として発足。当時食品偽装問題が社会問題化する中、消費者保護のために設立されました。消費者安全法、消費生活用製品安全法などの法令の元、消費者センター・自治体などから寄せられる商品やサービスに関する事故情報を「事故情報データバンク」に一元的に集約。消費者に関わる行政の司令塔としての役割を担っています。一言でいえば、法令の元「消費者被害の発生又は拡大防止」を促すことがそのミッションだと言えそうです。

サウナの「生命身体事故」

また「事故情報」は、大きく「生命身体事故」と詐欺商法などが該当する「財産事案」の2つ区分があります。さらに「生命身体事故」については命にかかわる「重大事故」と「重大事故を除く生命身体事故」の2つに区分されています。(参考:経済産業省HP「消費者庁の役割について」、消費者庁HP)

今回の消費者庁リリースで紹介されているサウナの「事故」は、「重大事故を除く生命身体事故」及び一部は「重大事故」に該当する内容であるといえます。消費者庁は、このような消費者に不利益をもたらす事故が拡大しないように進んで情報を発信するを促す役目を担っています。但し、消費者庁発のニュースは、震災など避難や対策が急務な緊急のニュースと同じ枠組みで報じられる一方、中身詳細を確認すると、実は事故拡大を事前に防ぐための「注意喚起」が主たる目的であることも多いということは認識する必要がありそうです。「サウナで事故増加」と聞いても慌てず、むしろ詳細をしっかり読み解くのが得策です。

サウナの事故は「22年度以降それぞれ10件」

気になる事故件数についてです。報道では「死亡例も」「心臓発作」「指切断」などと重大事故に関する思わず身構えしてしまう悲惨な例が羅列されていました。数字についても「事故件数78件」「やけどや打撲など82人」と大きな数字が見出しに並びました。忙しい中で見出しを中心に読んでしまった人の中には「今年だけで78件」と勘違いされた方も多かったのではないでしょうか。

では消費者庁が発表した実際のリリース『サウナ浴での事故に注意 ― 体調に合わせて無理せず安全に ―』(全14ページ)を読み解いていきましょう。まずは注意喚起を促すリリースの本題である「サウナ浴での事故の状況」についてから。5p〜8pで全4ページ。

約14年で「78件」、ここ2年は倍増 

「事故情報」は既報の通り78件、けがをした人は82人です。ただしその対象期間は、2010年から2024年4月末、約14年間。この1年で78件、ではありません。

その上で、消費者被害と拡大防止がミッションの消費者庁が問題視しているのが、ここ「2年での事故発生率の急増」です。直近約10年で見ると、寄せられたサウナ絡みの事故件数は2021年度までは平均で「年4件」程度だったのに対し、22年度23年度は「年10件」と倍増していると問題点を指摘しています。グラフで見ると、たしかに急増しているのがはっきりわかります。

発生場所は「入浴施設」が54.9%

発生場所です。消費者庁のデータによると、サウナでけがをした「受傷者」82人の内45人(54.9%)が「入浴施設」で全体の半数以上を占めています。続いて「宿泊施設」15人(18.3%)、「スポーツ施設」13人(15.9%)。サウナブームで「住宅」つまり家庭用サウナでのけがは4人(4.9%)。「屋外」つまりテントサウナが2人(2.4%)「不明」3人(3.4%)でした。

やけど・切り傷・骨折打撲が9割、重傷3割弱

続いて気になるけがの内容です。その9割が「やけど」「切り傷・すり傷」「骨折・打撲」。

「けがの程度」では3週間以上の通院を要する「重傷」以上が22人。26.8%と全体の3割弱で、うっかりすると大事に至ることを再認識できます。

【重要】中高年が7割‼

そして、ここで重要なデータが出てきます。「けがをした人の年齢」です。82人中53人が40歳から79歳。ズバリ、中高年が全体の7割を占めています。若い人の比率はわずか!交通事故では高齢者の誤操作による事故が問題視されていますが、まさかサウナでも!由々しき事態です…。

けが実例:8つのケース

最後に「事故事例」です。大前提として「サウナは自分の体とよく相談して適切に」「持病のある人は事前に主治医に相談を」。日本サウナ学会代表理事の加藤容祟医師が今回の騒動に際してそうあらためて注意を促したように、この2つはもはやサウナーの常識です。マラソンなど負荷が高いスポーツでは高齢者がフルマラソンに挑戦するのは一般的には危険だと認識される中、高齢者がサウナに入りすぎるのも概して危険をはらんでいます。また、湿度がないカラッカラな状態で110℃を超えるサウナなど、施設側の問題として直ちに是正する必要がある事例もわずかですがいまだ散見されるのも事実です。

その上で、消費者庁から発表された8つの事故事例を考えると、「利用者側の問題ではないか」と疑問視せざるをえない事故が多いのが正直な印象です。当たり前のことを留意してサ活をしていたら、未然に防げたのではないか。いずれも気の毒な事故事案だとは思います。しかし「裸電球でやけど」「ドアで爪剥がれ」以外は、ほぼ議論の余地がない自己責任の問題ではないかと私は思います。「段差」については段差幅、照度の記載がないので△です。※【 】内等の追記はパンダ・リーによる。

8つの事故実例

【事例1:ヨガ】サウナを利用中、熱いと思ったものの10分間ヨガのポーズをとり続け、臀部にやけどを負った。(20歳代、女性) 

【事例2:裸電球】温泉施設内の貸切サウナを利用中、椅子から立ち上がった際に壁面に向き出ていた裸電球が背中に当たってやけどをし、治療が必要となった。(20歳代、男性)

【事例3:ロウリュ】海外のホテルでロウリュをしたところ、高温の蒸気が大量に出て、右手の甲に全治一カ月のやけどを負った。(30歳代、女性)

【事例4:意識喪失】スーパー銭湯のサウナ室で、座った状態で意識を失った。マット交換のため入室したスタッフが異変に気づき、救急搬送された。意識を失っていた時に接していた部分に重度のやけどを負っており、右足の指を五本切断。皮膚移植のため2度手術をした。(70歳代、男性)

【事例5:爪】スイミングスクールのサウナに入ろうとしたとき、サウナ室から出ようとした人がドアを開けたため、ドアが当たり足の親指の爪が剥がれた。(70歳代、女性)

【事例6:段差】個室サウナを利用中、床の段差で足を滑らせ転倒し、右肘を打撲した。(40歳代、女性)

【事例7:転倒】宿泊先にある浴室内のサウナから出たところ、頭がくらくらしてきた。露天風呂で涼もうとドアノブを掴もうとした際、足を滑らせ顔面から転倒し、前歯が抜け落ちた。(10歳代、男性)

【事例8:心臓発作】スポーツクラブのサウナを利用中、心臓発作を起こし3日間入院。医師からサウナ等は利用しないよう言われた。以前、心筋梗塞を起こしたことがあった。(50歳代、女性)

「御注意いただきたい6つのポイント」「有識者のコメント」

9ページからは、サウナに入る際に注意すべきことを「御注意いただきたいポイント」と「(別紙)有識者のコメント」が6ページに渡り丁寧に紹介しています。※【 】はパンダ・リーの補足。

6つの「御注意いただきたいポイント」

(1)掲示されている入浴上の注意事項を確認し、正しい利用を心掛けましょう。

(2)サウナ室内でのおもわぬやけどに注意しましょう。

(3)【重要】サウナ室の出入りでの急な行動に注意しましょう。

(4)温度に体を慣らすことを意識しましょう。

(5)自身の体調等を踏まえて、無理のないサウナの利用を心掛けましょう。

(6)サウナ室内で体調に異変を感じるなどした場合は、すぐに周囲の人や施設の従業員に知らせましょう。

「サ室の出入り」でのうっかり事故、ありえますよね?これはあらためて再認識したい点です。

(別紙)入浴・温泉医学の専門家がコメント

最後は「別紙」で、入浴・温泉医学が専門で東京都市大学人間科学部の早坂信哉教授が「サウナを利用するための注意事項について」と題してコメントを寄せています。入浴前で3つ、入浴中で4つを注意事項として列挙しています。※構成都合上一部パンダ・リーの編集あり。

入浴前はー

(1)「入浴を避けるべきとき」サウナは強い温熱刺激があるので体調のすぐれないとき、病気の活動期には利用を避ける。持病がある人は主治医に相談。

(2)「十分に水分を摂取する」

(3)「貴金属は外し、ロッカーのカギは金属部分が肌に触れないようにする」

入浴中はー

(1)「サウナの前にシャワーを浴びる」

(2)【重要】「サウナ室の下段から順番に座っていく」

(3)【重要】「汗をかいたら・動悸がしたらサウナを出る(アウフグースのイベントの最中でも我慢しない)」

(4)【重要】「サウナ室から出たらぬるい温度のお湯で汗を流し、水風呂には急に入らないようにする」  

最後の「ぬるいお湯で汗カット」は、水風呂自体を堪能するためにもイチオシです。加えると「水風呂に入る時は呼吸を止めない」ことも意識したいところです。

「冒頭」が読みごたえあり!

ここまで読んだ皆さんは、相当なサウナ愛好家「ガチサウナー」だと思います。そんな貴女と貴方には、とてもとても読み応えのあるリリース「冒頭」の部分をぜひ直に読んでほしいです。

『サウナ浴での事故に注意 ー体調に合わせて無理せず安全にー』を直に読むと、消費者庁消費者安全課の担当官が、サウナのために汗かくサウナ施設側の立場を理解した上で、サウナ愛好家の思いに寄り添って作成した注意喚起リリースであることがよくわかります。具体的には「サウナの種類」、「ロウリュ」や「アウフグース」、「アウトドアサウナ」、さらには超マニアックな「サウナ室の構造」など、サウナの概要を4ページも割いてわかりやすく紹介しています。

☆こちらの「消費者庁」HPの最後にある「消費者庁公表資料」をクリックすると、今回ご一緒に読み解いたリリースがPDFで観られます。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_076/