こちらは米国ニューメキシコ州の「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(Very Large Array:VLA)」で2021年10月に観測された天王星の様子です。明るく写っている円形に広がった領域の中心には北極が位置しています。観測にはマイクロ波が用いられており、3つの画像はそれぞれ異なる周波数帯で捉えられた天王星を示しています(左からKバンド、Kaバンド、Qバンドを使用)。

【▲ カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)で2021年10月に観測された天王星。左からマイクロ波のKバンド、Kaバンド、Qバンドで観測された天王星の様子が示されている(Credit: NASA/JPL-Caltech/VLA)】

【▲ カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)で2021年10月に観測された天王星。左からマイクロ波のKバンド、Kaバンド、Qバンドで観測された天王星の様子が示されている(Credit: NASA/JPL-Caltech/VLA)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)のAlex Akinsさんを筆頭とする研究チームは、VLAによる天王星の観測データを分析した結果、天王星の北極にポーラーサイクロン(polar cyclone、極渦)が存在することを示す証拠を得たとする研究成果を発表しました。このサイクロン、すなわち低気圧は円形の領域の中心にあるひときわ明るい点として前掲の画像に写っており、より暖かくより乾燥した空気が北極の周囲で循環しているように見えるといいます。

JPLによると、天王星のポーラーサイクロンはコンパクトな形状で、土星探査機「カッシーニ」の観測によって土星で見つかったものに似ています。実際に天王星にもポーラーサイクロンが存在する場合、明確な大気を持つ太陽系の惑星(水星を除く7つ)すべての極で低気圧もしくは高気圧の渦が確認されたことになるといいます。「天王星は単なる青いガスの球体ではありません。その表層の下ではいろいろなことが起きているのです」(Akinsさん)

天王星は公転軌道に対して自転軸が約98度も傾いている上に、公転周期が約84年と長いため、南北の極域が太陽に照らされる期間と照らされない期間はそれぞれ42年間も続きます。NASAの惑星探査機「ボイジャー2号」が到達した1986年当時、天王星は南半球が夏の季節でしたが、今の南半球は長い夜が続く冬の季節を迎えています。

現在の天王星は北半球の季節が夏なので(夏至を迎えるのは2028年)地球からは天王星の北極域を観測しやすくなっており、研究チームはマイクロ波から可視光線にかけての多波長での観測を呼びかけています。JPLによると、今回発見が報告された天王星のポーラーサイクロンが今後数年間でどのように変化するのか、研究者たちは注意深く観測を続けていくということです。

【▲ 参考:ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3(WFC3)で2022年11月に撮影された天王星(Credit: NASA, ESA, STScI, A. Simon (NASA-GSFC), M. H. Wong (UC Berkeley), J. DePasquale (STScI))】

【▲ 参考:ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3(WFC3)で2022年11月に撮影された天王星(Credit: NASA, ESA, STScI, A. Simon (NASA-GSFC), M. H. Wong (UC Berkeley), J. DePasquale (STScI))】

 

Source

Image Credit: Image Credit: NASA/JPL-Caltech/VLA NASA/JPL - NASA Scientists Make First Observation of a Polar Cyclone on Uranu Akins et al. - Evidence of a Polar Cyclone on Uranus From VLA Observations (Geophysical Research Letters)

文/sorae編集部