2015年にNASAの土星探査機カッシーニによって撮影されたタイタンの画像(Credit: NASA)

【▲ 2015年にNASAの土星探査機カッシーニによって撮影されたタイタンの画像(Credit: NASA)】

NASAは5月12日、NASAのグレン研究センターの研究チームによる土星の衛星タイタンからのサンプルリターンに関するアイデアをNASA革新的先進コンセプト(NIAC)プログラムに採用したと発表しました。NIACプログラムはブレイクスルーを生み出し将来的にNASAのミッションを革新しうるような、まだこれからの夢のようなアイデアを育てるためのプログラムです。

■なぜタイタンからサンプルリターンするのか?

土星の衛星タイタンは、直径が5150kmほどもあり、木星の衛星ガニメデに次いで、太陽系で2番目に大きな衛星です。なんと直径4880kmほどの水星よりも大きいです。

このようなタイタンは窒素を主成分とする地球よりも厚い大気に覆われています。その大気圧は地表面で1.5気圧もあります。

また、タイタンの表面温度は-179℃ほどと超低温なのですが、そのためにメタンが液化し、地球における水のように循環しています。つまり、タイタンでは、メタンの雨が降り、川、湖、海を形成し、蒸発して、再びメタンの雨になります。

また、このようなメタンは、大気中で窒素と光化学反応をおこして、ソリンと呼ばれるより複雑な有機物になり、大気中をスモッグとして漂ったり、地表に降り積っています。

このようなタイタンは、生命誕生以前の地球によく似ており、有機物がどのように進化して生命が誕生したのか、探る上で貴重なヒントを与えてくれるのではないかと期待されています。そのため、NASAでは、ドラゴンフライと呼ばれるドローン型探査機をタイタンに送り込み、ソリンなどのタイタンの有機物について詳しく調べる計画です。ドラゴンフライは、2026年に打ち上げられ、2034年にタイタンに到着して、2年間に渡ってタイタンの大気や表面を探査する予定です。

ただ、ドラゴンフライのような探査機を送り込むのも1つの良い方法ですが、サンプルを地球に持ち帰れば、地球の研究室でより詳しい分析が可能になります。

■タイタンからのサンプルリターンに関するアイデアとは?

タイタンからサンプルを持ち帰る帰還機の想像図。帰還のためのロケット燃料などはタイタンで現地調達する(Credit: NASA)

【▲ タイタンからサンプルを持ち帰る帰還機の想像図。帰還のためのロケット燃料などはタイタンで現地調達する(Credit: NASA)】

研究チームによれば、タイタンには地球よりも厚い大気があるために、探査機の着陸自体は比較的容易だといいます。パラシュートなどを使えば十分に減速できるためです。

ただ、コストを掛けず、効率的な探査をおこなうためには、帰還時のロケット燃料などを現地調達する必要があるといいます。

タイタンの地表には、メタンが液体の状態で存在しているために、ロケット燃料の製造自体は特に問題はありません。

問題は、ロケット燃料を燃焼させるための液体酸素の製造です。研究チームのアイデアによれば、タイタンの岩石は水の氷でできているので、原子力の生み出す熱を使ってこれを溶かし、その後、電気分解して、液体酸素を製造します。

研究チームのアイデアは、まだ、NIACに採用されただけで、NASAの正式ミッションになったわけではありませんが、将来的にMASAの正式ミッションに役立てられることが期待されています。

 

Image Credit: NASA
Source: NASA
文/飯銅重幸