月の表側にある地形「イナ」の一部を拡大した画像(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)

【▲ 月の表側にある地形「イナ」の一部を拡大した画像(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)】

こちらは月の表側にある「イナ(Ina)」と呼ばれる地形の一部を拡大したもの。画像は一辺の長さが1500メートルに相当します。表面がなめらかな領域と荒っぽいでこぼこした領域が入り組んでいますが、なめらかな領域のほうが標高は高く、でこぼこした領域との境目が急な傾斜になっている部分もあります。

イナがあるのは「晴れの海」と「蒸気の海」の間にある「幸福の湖(Lacus Felicitatis)」で、アポロ15号が軌道上から撮影した画像をもとに発見されました。全体のサイズは2.9×1.9kmで、深さは最大64m。アルファベットの「D」に似た形をしていることから「Ina-D」と呼ばれることもあるといいます。イナは月面で70個ほど見つかっている「Irregular Mare Patches(IMP)」と呼ばれる地形のひとつで、イナの場合は楯状火山の一部が崩壊してできたカルデラではないかと考えられています。

月の表側にある地形「イナ」の全体像(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)

【▲ 月の表側にある地形「イナ」の全体像(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)】

アリゾナ州立大学によると、アポロ計画で採取されたサンプルや月面のクレーターの数を分析したこれまでの研究では、月で主な火山活動が起きたのは今からおよそ39〜31億年前のことで、およそ10億年前までに終了したことが示されています。ところが、クレーターの分布をもとに推測されたイナなどのIMPの形成時期は今から1億年以内であり、比較的最近まで月の火山活動が続いていた可能性があるといいます。

そのいっぽうで、イナが形成されたのはもっと古い時代のことだとする研究成果も発表されています。ブラウン大学の研究者らは、イナの表面にある火山性堆積物が多孔質だとすれば、同じ天体が玄武岩(月の海を構成する火山岩の一種)の岩盤に衝突する場合と比べて、クレーターのサイズが3分の1程度に小さくなる可能性を指摘。この点を考慮した上で改めて分析すると、イナが形成されたのは約35億年前であり、主要な火山活動が起きた時期に一致するとしています。

斜め上から見下ろした「イナ」の全体像(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)

【▲ 斜め上から見下ろした「イナ」の全体像(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)】

イナの画像はいずれもアメリカ航空宇宙局(NASA)の月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」の光学観測装置「LROC」による観測データをもとに作成・公開されています。

 

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Image Credit: NASA/GSFC/Arizona State University
Source: アリゾナ州立大学 / ブラウン大学
文/松村武宏