スペースXと韓国航空宇宙研究院(KARI)は、韓国初となる月探査機「KPLO(Korea Pathfinder Lunar Orbiter)」の打ち上げに成功しました。KPLOは、2022年12月に月周回軌道に投入される予定です。なお、KPLOは、韓国国内の名称公募により「Danuri(タヌリ)」と呼ばれています(※)。

【▲ ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられる、韓国の月探査機「KPLO」を搭載したファルコン9ロケット(Credit: SpaceX)】

【▲ ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられる、韓国の月探査機「KPLO」を搭載したファルコン9ロケット(Credit: SpaceX)】

KPLOを搭載した「ファルコン9」ロケットは、韓国標準時2022年8月5日8時8分、アメリカ・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設から打ち上げられました。打ち上げ40分後の同日8時48分、KPLOはファルコン9第2段から分離して、太陽光パネルの展開を実施。同日9時40分頃、地上局と初めての交信に成功しました。KARIによると、KPLOは正常に作動し、予定された軌道を飛行しているということです。

また、ファルコン9の第1段機体は、打ち上げから9分後に無人ドローン船「Just Read the Instructions」への着陸に無事成功しました。このミッションで使用された機体は、今回を含めて6回の打ち上げと着陸を行っています。

探査機と地球の通信には、韓国が導入した直径35mの大型深宇宙通信用アンテナが使用されます。また、アメリカ航空宇宙局(NASA)の深宇宙探査通信網「Deep Space Network(ディープ・スペース・ネットワーク)」も用いられます。KPLOのミッションでは、オーストラリア・キャンベラ深宇宙通信施設、スペイン・マドリード深宇宙通信施設、アメリカ・ゴールドストーン深宇宙通信施設を使用するということです。

【▲ 韓国の深宇宙通信用アンテナ。直径は35mある。(Credit: KARI)】

【▲ 韓国の深宇宙通信用アンテナ。直径は35mある。(Credit: KARI)】

KPLOは、太陽や月などの重力効果を利用して推進力を得る特殊な方法で月へ向かいます。この軌道は、弾道月遷移軌道(Ballistic Lunar Transfer Trajectory)と呼ばれており、低エネルギーで燃料の効率が良いと言われています。SpaceNewsによると、この軌道は、月へ向かうNASAの超小型衛星「CAPSTONE」でも用いられているということです。

KPLOの月到着予定日は2022年12月16日で、同年12月31日には月面から100km離れた運用軌道へ投入される予定です。その後、現在の計画では1年ほど、月探査を実施します。軌道への投入に成功した場合、旧ソ連(ロシア)、アメリカ、欧州、日本、中国、インド、イスラエルに続いて、韓国は世界で8番目に月周回軌道へ探査機を投入することに成功した国となります。

KPLOは、幅6.3m(太陽光パネルを展開した時)で、総重量は678kgです。6機の科学機器を搭載しており、そのうち1機はNASAと韓国電子通信研究院が開発した「ShadowCam」です。残りの5機は、韓国航空宇宙研究院、韓国天文研究院、韓国電子通信研究院、韓国地質資源研究院、慶熙大学によって開発されました。

【▲ 打ち上げ準備が進むKPLO(Credit: KARI)】

【▲ 打ち上げ準備が進むKPLO(Credit: KARI)】

搭載された機器の一つであるガンマ線分光計「KGRS」は、ガンマ線バースト(天体からガンマ線が短時間で爆発的に放出される現象)を探します。その他にも地球と月の間の磁場を追跡する磁力計「KMAG」や、月面の物質を研究する広角偏光カメラ「PolCam」、月面の高解像度画像を撮影する高解像度カメラ「LUTI」も搭載されています。これらの観測結果は、韓国が2030年代初めに予定している月着陸計画やその後の有人・無人月探査計画で用いられます。

また、NASAと共同で開発された「ShadowCam」は、月の極域にある永久影を観測して、これまでにレーダー観測などで存在が示唆されている大量の氷を調査します。データはNASAと共有され、NASAが進める有人月探査計画「アルテミス計画」で用いられます。

月面の科学調査だけでなく、KPLOは遅延耐性ネットワークを用いた惑星間インターネット接続技術の試験を行う予定です。この技術は、「宇宙インターネット」技術とも呼ばれています。今回のミッションでは、世界で大人気を誇る韓国の男性ヒップホップグループ「BTS」のヒットソング「Dynamite(ダイナマイト)」のミュージックビデオファイルを、探査機から地球へ送信するということです。

※…韓国語で「月」を意味する「dal(タル)」と、「楽しむ」を意味する「nuri(ヌリ)」から作られた単語(コリアヘラルドより)

 

■この記事は、【Spotifyで独占配信中(無料)の「佐々木亮の宇宙ばなし」】で音声解説を視聴することができます。

Source

Image credit: KARI KARI - 대한민국 최초 달 궤도선 「다누리」, 달 향한 여정 시작됐다 KARI - 대한민국 최초 달 탐사선 다누리 발사 프레스킷 (プレスキット) Space News - South Korea’s first lunar orbiter on way to the moon The Korea Herald - Korea's first lunar mission named 'Danuri'

文/sorae編集部