データは必ず覆される

データは記録と違い、破られるためにあるわけではないが、見つかったとき、強調されたときに覆される。ワンダフルタウンの勝利にデータ党の嘆きが聞こえてくる。前走が2歳戦だった馬は、13年レッドレイヴン1番人気11着など過去10年【0-0-0-3】。86年以降、04年3番人気5着アドマイヤビッグ(前走東京スポーツ杯1着)など【0-0-0-8】(93年サクラチトセオーは取消)。サンプルが少ないデータなので、これを根拠に消しに走るのは早計だったが、上記の人気馬が複数含まれる不吉なデータではあった。

勝ったワンダフルタウンは、昨今のトレンドである「目標を定めて極力、出走レース数を抑える」という戦略では決してなかった。ツメの状態が芳しくなく、3歳前半は休養にあてた。

前走京都2歳Sは、きさらぎ賞を勝ったラーゴム、NZTを快勝したバスラットレオンが出走、メンバーがそろったレースだった。1000m通過1分1秒5の緩い流れから最後の600m11.7-11.6-12.2という2歳戦としては締まったラップをワンダフルタウンは差し切った。3歳シーズン前半に出走しなかったため、忘れられがちだが、世代上位の決め手を持った馬ではあった。

理想的なレース運びだったワンダフルタウン

青葉賞は内枠のノースブリッジが決め手比べを避けるようにハナに行き、外枠のタガノカイが突っかかり気味になったことで、それを制するために1、2コーナーにあたる最初の200〜400mで10.6と飛ばしたものの、向正面でペースを落とし、前半1000mは1分0秒5。絶好の馬場状態を考えればスローといっていい。

ワンダフルタウンは、ノースブリッジを追う先行集団から離れた中団馬群の先頭。適度な間合いをとりつつ馬群に入らなかったことでリラックスできた。東京芝2400mらしく、道中は淡々と流れた。なにより日本ダービーへのラストチャンスで強引なレースはできない。3、4コーナーで一団になり、ワンダフルタウンが得意な決め脚比べになった。2着キングストンボーイがインを突いて巧みに追い上げたが、ハナ差しのいだ。前半の位置取りの差が影響したものだ。

2着キングストンボーイは共同通信杯4着馬。改めて同レースのレベルを証明した。残り400m付近で外にワンダフルタウン、前にアオイショーがいて、進路がなく、一瞬待たされる形になった点は不運だった。半兄エポカドーロとはタイプが異なるが、兄は日本ダービーで逃げて2着だった。ダービー馬の父ドゥラメンテに、この時期に急激に力をつける血という血統構成なので、日本ダービーの優先出走権をとったのは大きい。

3着は6番人気のレッドヴェロシティだった。勝負所で先に動いた分、最後は1、2着馬に及ばなかったが、前に優位な流れを見越して仕掛けたからこそ3着まで押し上げた。前走水仙賞は2着マカオンドールなどその後のレースで好走した馬が多く、レベルが高い一戦。6番人気はやや盲点だったか。前走のように先行しなかったのは、東京芝2400mを意識したからだろうか。やや構えすぎたかもしれない。近親のアドマイヤメインは、青葉賞を逃げ切り、日本ダービー2着。積極策が合う。

史上初青葉賞、日本ダービー連勝へ

青葉賞の勝ち馬は日本ダービーを勝てない。もはやジンクスといっていい。それはなぜなのか。東京芝2400mを1カ月で2回走るのは想像以上に厳しいといわれる。中3週の消耗が原因の一つ。さらに青葉賞で日本ダービーへの出走権をかける、そこまで戦ってきた消耗も重なるからだろう。

であれば、3歳初戦が青葉賞、そしてそれを勝った史上初になるワンダフルタウンにはそういったマイナスはない。消耗せずに勝ったことで、中3週で挑む日本ダービーを乗り越えられる可能性はないとはいえない。勝ち時計2分25秒2は平凡な記録と評価されるだろう。だが、これも馬場状態がいい青葉賞で走り過ぎてしまうという、日本ダービーで走れないもう一つの原因を回避できたともいえる。

理想的な青葉賞馬ワンダフルタウンが、日本ダービーを勝てないとなると、しばらく青葉賞勝ち馬は勝てないだろう。データは注目して騒ぐと裏目が出るもの。86年以降、日本ダービーで青葉賞組は【0-8-6-91】。これを覆せるだろうか。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。

2021年青葉賞のレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA


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