20年ぶりに外国産馬が優勝

創設当時、外国産馬に日本ダービーの出走権がなかったこともあり、NHKマイルCは「マル外ダービー」と呼ばれていた。第1回タイキフォーチュンから第6回クロフネまで、外国産馬が6連勝。内国産馬はマイルではマル外に勝てなかった。

しかしそれは20年前の話。第7回テレグノシスから昨年の第25回ラウダシオンまで内国産馬(キングカメハメハは持ち込み)がズラリ。日本ダービーにマル外が出走できるようになり、そもそも外国産馬が圧倒的に減った現在、「マル外ダービー」は、年季の入った競馬ファン以外にとっては歴史用語のひとつになった。

シュネルマイスターが01年クロフネ以来、20年ぶりに外国産馬としてNHKマイルCを勝った。父キングマンは、種牡馬として豪州で旋風を巻き起こすインヴィンシブルスピリットの子ども。現役時代は愛2000ギニー、セントジェームズパレスS、ジャック・ル・マロワ賞などマイルGⅠ4勝。キングマンはグリーンデザートからダンチヒと遡るスピード色の強い父の血と、底力を持つダンシングブレーヴの血を母系から受け継ぐ。奥行ある欧州マイル王の血がNHKマイルCで開花した。

勝ち馬より前にいた2、3着馬の価値とは

発馬直後、先手候補だったバスラットレオンがつまずき、落馬競走中止。馬券を買った方にとっては恨みたくなる出来事だが、ゲートを出た瞬間に両脚ともつまずく形で防ぎようがなかった。不運としかいいようがない。これで先行集団は互いに見合った。好発を切ったランドオブリバティも行く気がなく、前半400m通過地点で外からピクシーナイトがハナに立った。

シンザン記念を逃げ切って以来、京都新聞杯のルペルカーリアなど福永祐一騎手はモーリス産駒の乗り方をつかんだ印象。緩急への対応に課題があるモーリス産駒はラップを落とさず、強気にペースを刻む競馬が合う。前半800m45.3。同条件の3勝クラス湘南Sの前半800mは45.5なので、3歳馬には強烈な流れだった。

3着グレナディアガーズはこの流れで抜群の手応えのまま、大外から一旦先頭。強引だったかもしれないが、厳しいペースを考えれば、価値はある。グレナディアガーズが早めに動いたことで、先行集団は苦しくなった。

この動きを狙っていたのが2着ソングライン。池添謙一騎手は令和のマーク屋と呼んでいい。巧みにグレナディアガーズを出し抜いて勝ったかという場面を作った。ただソングラインが直線で手前を替えられず、最後の最後で苦しくなり、内にモタれてしまった。シュネルマイスターとのハナ差は真っ直ぐ走れなかった分ともいえる。

勝ったシュネルマイスターは目の前にいたソングラインの動きに合わせた形。ルメール騎手もスキがない。マイル戦、それもハイペースに戸惑い、置かれる心配もあったが、すんなり中団後ろをキープ。緩急がないマイル戦は血統通りベストだろう。逆に言えば、2000mの弥生賞ディープインパクト記念2着は、適性外の舞台での好走だったのではないか。

勝ち時計1分31秒6は湘南S1分32秒0を上回り、10年ダノンシャンティの1分31秒4に次ぐ快時計だった。ちなみに前後半800mは45.3-46.3。湘南Sは45.5-46.5で先行勢が総崩れ、上位人気の4歳馬が大敗した。一方、NHKマイルCは前後半0.2ずつ速い流れで、早めに動いたグレナディアガーズやその背後にいたソングラインが2、3着。勝ったシュネルマイスターと合わせて、その価値は非常に高い。上位3頭は秋には古馬マイル戦線でも期待できる。そのためにも過酷なレースを走ったダメージが残らないことを祈る。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

2021年NHKマイルCのレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA


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