厳しい流れ、先行馬の巻き返しに注意

先手を奪う馬が少なく、展開を読みづらい一戦は得てして展開に左右されやすい。エプソムCもエアアルマスが先手をとり、アトミックフォースが2番手につけて隊列が決まりかけたところに外からニシノデイジーが折り合いを欠き気味に取りつき、落としたいところでペースが落ちなかった。

序盤200m通過から最後の200m標識まですべて11秒台とマイル戦のような緩急のないラップ構成、これを内ラチ沿いを避けながら外目を通って記録すれば、先行した馬はよほど力がないと残れない。まずは2000m以上に適性がないと好走できない競馬だったことは覚えておきたい。人気を裏切ったアルジャンナを含め、このレースで先行した馬は次走で一変という可能性はある。

ザダルが背負う、プリンセスオリビアの血

ザダルは2年前の春、天候不良で延期されたプリンシパルS(芝2000m)を勝ち、東京芝1800mはメイS3着、毎日王冠5着。勝ち星こそないものの、崩れずに走れる得意条件。勝ったプリンシパルS、関越Sはともに高速馬場の持続力勝負であり、エプソムCはコースと得意なラップ構成がかみ合ったレースだった。展開に左右されたレースにおいて、それを味方につけた一頭だった。

この勝利が産駒の初重賞Vだった父トーセンラーは、ディープインパクトの初年度産駒。きさらぎ賞を勝ち、クラシック有力候補になるも、三冠レースは7、11、3着。その後は中距離路線を歩むも勝ち星に恵まれず、5歳秋にマイルCSでGⅠタイトルを手にした。クラシックシーズンにきっかけをつかみ、その後低迷、5歳で再浮上する、ザダルの競走生活は父によく似ている。

トーセンラーの母プリンセスオリビアが米国で産んだフラワーアリーは、12年米国二冠馬アイルハヴアナザーや日本でラッキーライラックを産んだライラックスアンドレースの父。プリンセスオリビアの日本での産駒は3頭しか登録されていないが、トーセンラーの半姉ブルーミングアレー(4勝)、全弟スピルバーグ(6勝)とすべてオープン馬、超がつくほど賢母だった。

スピルバーグもプリンシパルSを勝ち、その後はじわじわと力をつけ、5歳天皇賞(秋)でGⅠに手が届いた。ザダルはプリンセスオリビア一族の血をかなり濃く受け継いだといっていい。であれば、エプソムCの勝利は反撃の狼煙にすぎず、秋に大仕事をする可能性はある。トーセンラーもスピルバーグもディープインパクトの後継種牡馬としては、恵まれていないだけに、ザダルの今後の活躍はプリンセスオリビア一族の命運を握っているといっていい。

4着ヴェロックス、再浮上のきっかけ

2着サトノフラッグは弥生賞ディープインパクト記念1着、菊花賞3着でしばらく人気になったが、今シーズンはGⅡ11、7着と崩れたため、今回は6番人気と人気を落としていた。崩れた2戦はいずれも道悪、久々の良馬場で浮上するきっかけをつかんだようだ。

最後は内に切れ込んだザダルに寄せられ、狭くなる場面があった。不利を考えれば、着差は限りなくないに等しい。こちらはプリンセスオリビアの一族ではないが、戦歴はトーセンラーに似てなくもないので、年を重ねてさらに強くなる可能性はある。見限らず、今後の成長に注目した方がよさそうだ。

再浮上のきっかけという意味ではゴール前、状態が悪いインを突いてきた8番人気4着ヴェロックスにも注目。三冠2、3、3着の好素材も4歳2月小倉大賞典大敗などリズムが悪い。中日新聞杯3着の内容からベストは左回りの1800〜2000m、かつ緩めの流れではないか。エプソムCはラップ構成としては得意なものではなかったが、左回りの1800mという適条件でらしさを見せた。通ったコースは不利なインコース、道悪や時計がかかる条件になれば、さらに前進があっていい。


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

2021年エプソムCのレース展開図ⒸSPAIA



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