日本時間20日にダスマリナスと防衛戦

WBAスーパー&IBFバンタム級タイトルマッチがアメリカ・ラスベガスの「ザ・シアター」で19日(日本時間20日)に行われる。

王者・井上尚弥(28)はWBA5度目、IBF3度目の防衛戦。WBA8位、IBF1位のマイケル・ダスマリナス(28、フィリピン)とともに前日計量を一発でパスした。世界で最も権威あるボクシング専門誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンドで2位にランクされる「モンスター」がどんな戦いを見せるのか、世界中の注目が集まっている。

井上が目指すのはバンタム級の4団体統一。世界のボクシングを統括するWBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)のベルトをひとつにまとめることだ。

現在、WBAスーパー王座とIBFのベルトを持つ井上は、この試合に勝てば、WBC王者ノニト・ドネアか、8月14日に対戦するWBO王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)とWBA正規王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)の勝者と統一戦を行う可能性が高い。

その一戦に勝てば3団体統一となり、さらにその先に目標の4団体統一が見えてくる。達成すれば文字通り、世界で唯一のバンタム級王者、118ポンド(53.5キロ)で「世界最強」を証明できるのだ。

後の3階級王者と2度戦った新垣諭

日本が生んだ世界バンタム級王者は井上を含めて12人。フライ級と2階級制覇したファイティング原田、2度の王座返り咲きを果たした辰吉丈一郎、辰吉に勝った薬師寺保栄、10度防衛後に3階級制覇した長谷川穂積、12度防衛の山中慎介、亀田三兄弟の長男・興毅と三男・和毅、井上尚弥の弟・拓真ら他の階級と比べても記憶に残る王者が多い。

その中で唯一、井上と同じIBFのベルトを巻いたのが新垣諭だ。井上がまだこの世に誕生していない1984年4月、エルマー・マガラーノ(フィリピン)に8回TKO勝ちし、IBF初代バンタム級王者となった。

ただ、1983年に設立されたばかりのIBFは新興団体だったため、当時JBC(日本ボクシングコミッション)は認めていなかった。統括団体の乱立は世界王者の価値を下げるというのが、その理由だ。

新垣は沖縄水産高時代にインターハイ優勝し、契約金1000万円で奈良池田ジムからプロ転向した実績の持ち主。新興団体とはいえ決して実力的に劣る訳ではなかったが、世界の統括団体が認めた王者が、日本国内では認められていないという「ねじれ現象」が起こった。

新垣は2度目の防衛戦でジェフ・フェネック(オーストラリア)にKO負けして王座陥落し、4か月後の再戦でも敗れた。フェネックは後にフェザー級まで3階級制覇した名王者で、辰吉がプロ8戦目で初めて世界バンタム級王者となった際に、敗れたグレグ・リチャードソン(アメリカ)が「辰吉はフェネックのようになるだろう」と印象を語ったことでも有名だ。リチャードソンはフェネックに敗れたことがあったため実力を肌で知っており、若き日の辰吉にその姿を重ねて最大級の賛辞を送ったのだ。

日本は2013年にようやくIBFとWBOに加盟

その後、IBFバンタム級のベルトはオルランド・カニザレス(アメリカ)が16度防衛。1階級下のスーパーフライ級で世界王者となった鬼塚勝也が、現役時代に敬愛していたことでも有名だ。

さらにティム・オースティン(アメリカ)やラファエル・マルケス、レオ・サンタ・クルス(いずれもメキシコ)ら強いチャンピオンがIBFバンタム級のベルトを巻いた。新興団体だったIBFは、1988年に設立されたWBOとともに、世界のボクシング界で確固たる地位を築いていった。

そんな世界の情勢を無視することもできず、JBCがIBFとWBOに加盟したのは2013年。高山勝成が国内ライセンスを放棄してまで海外でIBF王座に挑戦したことも影響した。

ボクサーにとってみれば、WBAとWBCだけより、IBFやWBOも認められた方が世界戦のチャンスが増えることは間違いない。それまでIBFやWBOの世界ランキングに日本選手の名前はほとんどなかったが、今では当たり前のようにランキングされるようになった。

井上が保持するIBFのベルトには、そんな先人たちの苦労や思いが詰まっている。逆に言えば、日本のボクシングの歴史上で忘れ去られていた新垣諭も、井上のおかげで再びファンの脳裏に記憶を呼び起こされた。

偉大なる世界バンタム級王者・井上尚弥は、次はどんなドラマを見せてくれるのか。楽しみはまだまだ尽きない。

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