リオ五輪の補欠から東京五輪の主将となった萱和磨

全員が初選出ながら史上最強との声もある、東京五輪の体操男子団体。絶対王者・内村航平は肩の痛みを理由に団体戦には出場せず、「最長老」としてチームを支える。

団体戦の主将は「失敗しない男」の異名を持つ24歳、萱和磨だ。去年の全日本選手権覇者で、あん馬と平行棒の世界選手権メダリスト。持ち味は抜群の安定感で、4人の中で唯一、選考会3回で86点を下回る成績がない。

萱の強さの根底にあるのが、自分への厳しさだ。補欠として同行したリオ五輪で萱は、団体メンバーが金メダルを獲得する姿をスタンドから眺めた。「あの悔しさを一日たりとも忘れたことはない」と猛練習に励み、あん馬と平行棒以外を4年計画で強化した。

全日本の鉄棒で片手がバーから外れるミスをしたことに対しては「1000回に1回のミスが出た。許せなかった」と話し、「自分に勝ちたい」と特訓を積んだ。全日本の得点と合算するNHK杯の結果は2位だったが、5月16日のみの合計点ではトップ。「確実に僕はまた一つ強くなった」と自信を見せた。

萱といえば、演技の前後の大きな挨拶とガッツポーズも注目だ。失敗しない男は気迫溢れる熱い男でもあり、キャプテンとしてチームを盛り上げてくれそうだ。

強い気持ちと人一倍の努力を重ねてきた萱の言葉には力がある。キャプテンとなった萱が金メダルを取った時、どんな萱語録が生まれるのだろう。

弟の思いも背負い団体と個人で金狙う谷川航

ピタリと止まる美しい着地が持ち味の谷川航は、着地王子と呼ばれている。萱と同じ24歳で、オリンピックは初めてだが2017年世界選手権から代表の座をキープしており、国際大会の経験は豊富だ。W杯で個人総合銀メダルを獲得していて、団体でも個人でも金メダルを狙っている。

弟は3年前に内村の全日本11連覇を阻み史上最年少で優勝した谷川翔で、体操界のイケメン兄弟としても知られる。2人揃っての代表入りを目指していたが、翔はケガの影響で成績が振るわず、航は弟の思いも背負ってのオリンピックに臨む。

得意種目は跳馬で、世界最高難度のリ・セグァン2を日本で唯一飛ぶことができる。NHK杯ではこの技を完璧と言える出来栄えで披露し、15.533をマーク。直近の世界選手権1位の14.966を大きく上回る、とんでもない数字を叩き出した。

初めてのオリンピックでも、ダイナミックな跳躍と観ていて気持ちがいい着地で多くのファンを魅了してほしい。

全員がエース級の総合力

直近の世界選手権2大会の上位3か国は次の通り。

直近2大会の世界選手権成績


日本は2大会連続銅メダルで、中国とロシアに敗れた。団体戦では、それぞれの種目で3人分の得点を使う。このメンバーでの団体戦の総合得点を選考会3大会の平均点から推測すると260点を超える。2019年の世界選手権で優勝したロシアが261.726点だから、北園の回復を考えると十二分に金メダルが狙えるスコアだ。

ライバル・ロシアの動向も見ておこう。2019年世界選手権3冠のナゴルニーは、4月にゆかで世界最高難度の新技を成功させている。個人総合の金メダル候補に武器が増え、更に手強くなった。

しかし2018年金メダル、2019年銀メダルのダラロヤンが4月に全治3か月の大けがをした。オリンピックに参加したとしてもベストな演技をするのは難しいだろう。残念でもあるが、日本の金メダルが近づいたことは間違いない。

代表に選ばれた4人の選考会の得点を、直近の世界選手権の種目別メダリストの得点と比べてみた。跳馬、平行棒、鉄棒は、世界でも高いレベルだと分かる。

代表4選手の選考会の得点


跳馬は、橋本と航の2人が3回とも15点を超える圧倒的な強さを見せている。北園も種目別選手権で15点を出しており、稼ぎどころと言えそうだ。

平行棒は、世界選手権メダリストの萱が目立たないほどにレベルが高い。誰が出ても安心して観戦することができそうだ。 鉄棒も高いレベルだが、若手2人は種目別選手権でスコアを更に伸ばしてきた。北園が14.866、橋本は15.133だ。

「栄光への架け橋だ」の実況とともに優勝したアテネ大会のように、金メダルを掴む演技に期待したい。日本はもう、銅メダルに甘んじない。

《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。

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