IOCバッハ会長が沈静化も広がる懸念

中国の著名な女子テニス選手で全米オープン4強やダブルス元世界ランキング1位の実績がある彭帥選手が、共産党の元最高指導部メンバーで副首相だった張高麗氏との不倫スキャンダルを赤裸々に告白し、国際的な波紋を呼んでいる。

年の差40歳。11月2日、短文投稿サイト微博(ウェイボ)の本人とされる投稿は「石にぶち当たる卵のように自滅しようとも、あなたとの間に起きた事実を話す」との覚悟を示す内容も含まれ、わずか20分後に削除されたが、瞬く間に拡散した。

国家の最高幹部との不倫関係暴露は、独裁的体制下だけに安否が懸念された通り、彭帥選手の動静が一時分からなくなるなど騒動に。米国や欧州を中心に中国側が隠蔽を図ったなどと批判が噴出し、安全確認はもちろん、性的関係の事実関係の調査を要求する動きが活発化した。

当初は静観姿勢で積極関与には及び腰だった国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長も11月21日にテレビ電話で突然登場して選手の無事をアピールしたが、来年2月の北京冬季五輪は黄信号が早くも点滅している。

少数民族ウイグル族弾圧を理由に、米国や英国が検討する北京五輪に政府高官らを派遣しない「外交ボイコット」の動きが加速してきた。

米英に続きオーストラリアもボイコット検討

11月25日にはオーストラリア政府も中国の人権問題を理由に、北京五輪の外交ボイコットを検討していることが地元メディアに報じられた。

政府は中国元副首相との不倫告白後に動静が一時分からなくなった彭帥を巡る問題も懸念。公式に「ボイコット」とは呼ばないが、ペイン外相やコルベック・スポーツ相、駐中国大使らの派遣を見送る案などを検討しているという。

中国は日本側に北京五輪を支持するよう求め、同調するのを阻止したい考えだが、事態は混沌としているといえるだろう。

大坂なおみも声明、WTAは公式調査要求

不倫スキャンダルを巡ってはテニスの女子ツアーを統括するWTAが中国に公式な調査を要求し、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)や大坂なおみら男女トップ選手も声明を公表。大坂はツイッターで「彭帥とご家族が安全で大丈夫であることを願う」と安否を案じた。国連人権高等弁務官事務所や米ホワイトハウスも所在確認を訴える事態になった。

こうした世界の動きに対し、IOCが沈静化の援護射撃に乗り出したのは北京五輪の存在を抜きには語れない。テレビ電話のセッティングは中国当局がお膳立てしたと考えるのが自然だろう。背景に両者の一致した利害が見え隠れしている。

特に近年の経済成長が目覚ましい中国はIOCにとって「お得意様」の魅力的な市場。2022年冬季五輪の北京開催が決定後、中国の電子商取引(EC)大手アリババグループと2028年まで、乳業大手の中国蒙牛乳業と2032年までの長期契約を新たに結んでいる。

中国の習近平国家主席にとって、自国五輪の成功は党大会で3期目を目指すために失敗は許されない。中国外務省は「スポーツの政治化は誤りだ」と反発するが、中国の人権問題に絡んでボイコットを唱えるアスリートも出てきている。

人権侵害や言論封殺、厳格な新型コロナウイルス対策、そしてここへ来て前代未聞の不倫スキャンダルと課題は山積み。会員制交流サイト(SNS)を駆使して情報を発信する流れは加速しているだけに、中国側への非難がこれまで以上に高まる可能性は十分ある。

中国とIOCは幕引きに躍起だが、開幕まで3カ月を切った北京五輪は予断を許さない状況が続きそうだ。

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