近年は様々な要因で1分7秒台決着が常態化

6月11日(日)に函館競馬場で函館スプリントS(GⅢ)が行われる。3歳の重賞馬ブトンドールやリバーラ、京阪杯を勝ったトウシンマカオ、昨年北海道で実績を残したジュビリーヘッドやヴァトレニなど16頭が集まった。

安田記念が終わって函館競馬が始まり、夏の雰囲気が漂ってきた。洋芝目当てで参戦したと思われる馬も多く、力の要る馬場で巻き返しを誓う馬が沢山いるわけであるが、洋芝=パワー重視で予想を組み立てると痛い目にあいそうだ。今回は出走馬の持ち時計を中心に調べた。

近年の函館スプリントS、勝ち時計,ⒸSPAIA


まずは近年の勝ち時計について見ておきたい。(禁止薬物問題による)大量除外と稍重馬場の影響で時計の出ない状況だった2019年を除いて、近5年は当たり前のように1分7秒台での決着が続いている。2017年には1分6秒8というGⅠでもなかなか見ない高速決着もあり、とにかく速く走ることを求められるレースになっている。

開幕週であることや馬場造園技術の発展も要因だが、日本のサラブレッドが配合を重ねて野芝で速く走るよう進化した結果、洋芝であっても速く走ることが可能になった結果と考えている。時代の流れに乗っている血統、対応出来る馬を探したい。

必要なのはパワーではなく圧倒的なスピード

近年の函館SS好走馬の持ち時計,ⒸSPAIA


前記の理由で参考にならない2019年以外の、直近4回を掘り下げる。この好走馬12頭が、過去に馬券入りしたレースでの持ち時計について調べた。好走時に限ったのは、仮に1分6秒台の持ち時計があっても、そのレースで大敗していれば高速決着に対応したとは言えないためだ。

速く走らなければ勝てないレースにおいて、速い時計に対応した実績があることはやはり重要で、12頭中9頭に1分7秒台での好走歴があった。人気薄で馬券になった2022年3着タイセイアベニールや2020年2着ダイメイフジもこの条件を満たしていた。

残る3頭のうち2020年1着ダイアトニック、2021年3着ミッキーブリランテは1400mのオープンクラスをそれぞれ1分19秒6、1分19秒5で連対した経験があった。馬券の組み立てとしては、1200mで高速決着に対応出来る馬を中心に、次点で1400m実績の良さを見たい。そして低速決着にしか対応していない馬は軽視したい。

今回の出走馬で1分7秒台での好走歴がある馬はカイザーメランジェ、カルネアサーダ、ジュビリーヘッド、テイエムトッキュウ、ディヴィナシオン、トウシンマカオ、ヴィズサクセスの7頭。人気しそうな3歳馬3頭はいずれもこれに当たらず、全て軽視して波乱に期待したい。

昨年2着、得意の函館で巻き返しだ

◎ジュビリーヘッド
昨年の函館スプリントSは先行策から開幕週の馬場も生かして高速決着に対応した2着。その前走船橋Sを1分7秒7で勝ちきっており時計面での優秀さが光る。前走や京阪杯は後方から展開に恵まれないレースであったため度外視して問題ない。函館は3戦3連対と得意で、昨年同様の先行策であればアタマも期待できる1頭。人気次第では単勝や馬連でも美味しい馬券が貰えるはずだ。

◯トウシンマカオ
京阪杯では先行した2、3着馬を外から圧倒した。時計も1分7秒2と優秀で地力はこのメンバー内では抜けている。2走前は太め残り、前走は不良馬場に泣いた敗戦で良馬場なら巻き返し可能だ。先行して頑張るタイプではないため開幕週であることをマイナス評価して対抗までだが、力差でねじ伏せる可能性も考えた馬券を組みたい。

▲テイエムトッキュウ
開幕週の馬場を1番生かせそうなのがこの馬。何が何でも逃げる馬で、はまった際はシンガポールTC賞のように1分7秒台で圧倒することも可能だ。近走はダートを使っている分、久しぶりの芝がどうかだが、能力自体はこの中でも劣らない。勝つときは鮮やか、負ける時は惨敗の二択になりそうで、馬券はこの馬軸のものと完全に外したもの2通りを用意したい。

△カルネアサーダ
淀短距離Sで7秒台決着に対応。開幕週の馬場も生かせそう。

×ディヴィナシオン
オーシャンS2着。追い一辺倒のため展開の助けがいる。トウシンマカオを軸に馬券を買う方は、厚めに持っておきたい馬。

×ヴァトレニ
昨年北海道で実績残す。高速決着への対応力は未知数も舞台は好転。

3歳馬3頭は先述したように高速決着の対応力が不明で、勝った重賞も、決してレベルが高いとはいいがたく評価しづらい。昨年まで3歳牝馬は50kgで出走できたものが、ルール改定で52kgになるのも辛い。能力が怪しいところに例年ほどの斤量有利もなく、更に3頭とも人気しそうで旨味も少ないので、今回は見送ることにする。

馬券はジュビリーヘッドとテイエムトッキュウの単勝、トウシンマカオ軸で▲抜きの馬単4点、テイエムトッキュウ軸の馬連5点、ジュビリーヘッド軸の三連複10点で勝負する。どれか当たればプラスになるよう資金配分に気をつけたい。

土曜日に小雨の予報が出ているが、執筆時点では良か稍重までを想定している。馬場が重くなりすぎると予想の根幹から崩れてしまうため、お天道様にお祈りして発走を待つ。(文:福山)

函館スプリントS 予想印
◎ジュビリーヘッド
◯トウシンマカオ
▲テイエムトッキュウ
△カルネアサーダ
×ディヴィナシオン
×ヴァトレニ

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
25年以上の歴史がある京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。



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