イクイノックスも該当した不安データ

皐月賞で単勝オッズ1桁台の馬が5頭もいたように、牡馬クラシックは大混戦模様で幕を開けた。ところがダービーを目前に、一転して「一強ムード」となっている。主役はもちろんジャスティンミラノ。皐月賞は初の右回りに加え、プラス10kgの馬体重が示すように、幾らか余裕残しの体つき。友道康夫厩舎らしく、いかにもダービーを最大目標に据えた仕上げに思えたが、終わってみれば着差以上の完勝。状態面の上積みが見込めること、左回りに実績があることを考えると、二冠達成が濃厚という下馬評も納得だ。

しかし、それでもあえて「本当に一強なのか?」と疑ってみたい。少し気になるのは、皐月賞があまりにも鮮やかだったことだ。自身初体験となるハイペースに戸惑うことなく、難なく中団前寄りのポジションを確保。3角から前のジャンタルマンタルを目標に動くと、これをゴール前でかわして先頭へ。外から迫るコスモキュランダもきっちりと抑え、史上21頭目の無敗の皐月賞馬に輝いた。

このレースから垣間見えたのは、むしろ小回り向きなのではないかと思える機動力。デビュー2連勝の舞台だった東京がぴったりと思わせておいて、実は中山がベストという印象を受けるのだ。

そんなジャスティンミラノには気になるデータがある。それは皐月賞「上がり3F順位別」でのダービー成績(14年以降)。非常に分かりやすい傾向が出ているのだ。

・上がり1位【5-1-0-5】
・上がり2位【1-2-4-5】
・上がり3位【0-2-0-4】
・上がり4〜5位【2-3-0-9】
・上がり6位以下【0-1-2-47】

一目瞭然、皐月賞で上位の上がりを使った馬ほど、ダービーで好成績を残している。逆に上がり6位以下だった馬は苦戦傾向。東京替わりがマイナスとなり、切れ負けするケースが目立つのだ。例を挙げると、14年トゥザワールドは皐月賞が上がり10位2着→ダービーが2番人気5着、22年ダノンベルーガは皐月賞が上がり8位タイ4着→ダービー1番人気4着、同年イクイノックスは皐月賞が上がり8位タイ2着→ダービー2番人気2着だった。あのイクイノックスでも負けているという事実は重い。

では、今年の皐月賞でジャスティンミラノは上がり何位だったのか。勘のいい方ならお気づきだろうが、実は6位タイだったのだ。確かに前々走の共同通信杯では上がり3F32秒6の高速上がりをマークして快勝している。しかし、当時は超スローペースだったので〝参考記録〟でいい。

皐月賞のレース内容が高評価されて、ジャスティンミラノは1番人気に推されるだろう。そんな中、あえて低評価して押さえに留めるのは無謀だろうか。いずれにしても、皐月賞馬の取捨が馬券のカギを握ることは間違いない。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。

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