なでしこJAPAN低迷の裏に欧州女子サッカーの活性化 W杯王者の米でも地位向上目指し訴訟

なでしこJAPAN低迷の裏に欧州女子サッカーの活性化 W杯王者の米でも地位向上目指し訴訟

女子サッカーW杯は米国が2連覇

フランスで開催された2019女子サッカーワールドカップは、アメリカの2連覇で幕を閉じた。2大会ぶりの優勝を目指した日本代表は、決勝トーナメント1回戦でオランダに1−2で敗れ、ベスト16で敗退という結果に終わった。

なでしこジャパンの高倉麻子監督は「欧州はものすごい勢いで活性化している。欧州の選手たちの顔色が変わってきている。このままではどんどん置いていかれる」と危機感を口にした。

日本が女子W杯に初優勝した2011年と続く2015年大会共に、決勝戦の対戦カードは、日本対アメリカだった。しかし、その図式は崩れ、奇しくも日本を倒したオランダが決勝まで進出した。8強に進出したのは米国以外、すべて欧州のチーム。欧州諸国に地の利があった。日本は、グループステージでも1位通過をイングランドに許し、2位で終えていた。

低迷の要因は色々あるだろうが、日本の女子サッカーは今でも世界の強豪。世界一奪還へ、どんな状況でどんなチーム相手でも勝てる実力を再び蓄えるために巻き返しを期待したい。

一方で日本の低迷を日本代表の弱体化だけで語ることはできない。というのも、高倉監督の発言通り、いま欧州の女子サッカーは過去にない盛り上がりを見せているのだ。

データは欧州サッカーの隆盛を示唆

欧州で女子サッカーがどれだけ盛り上がっているのかを示すデータを見てみよう。

英国では、今大会の準決勝イングランド対アメリカ戦の瞬間最高視聴率は47%で、決勝戦もイングランドが敗退したにもかかわらず瞬間最高視聴率は、38.5%だった。BBCによると前回のカナダ大会から視聴者数が2倍以上になったという。

2011年に、日本が女子ワールドカップで初優勝した時の日本国内の瞬間最高視聴率は、27.7%。同じく日本とアメリカが対戦した2015年女子ワールドカップ決勝戦の日本での瞬間最高視聴率は、21.8%だった。下降傾向にあった日本に対し、イングランドでは大きく上昇した。

2018年男子ワールドカップと比較すると、日本では決勝トーナメント一回戦・ベルギー戦の瞬間最高視聴率が42.6%。英国では準決勝イングランド対クロアチア戦の瞬間最高視聴率が40%だった。

英国では、女子サッカー熱が男子と同じレベルに達している可能性をこの数値は示している。

欧州国内大会の観客動員も大盛況

昨季、アトレティコ・マドリーは、バルセロナ戦でスペインの女子サッカー最多観客動員数60,739人の記録を打ち立てた。他にもスペインやイングランド等の国内の女子大会では、男子顔負けの観客動員数の試合がいくつもあった。元々、男子サッカーの文化や人気は凄まじいものがあり、そこで培ったノウハウやインフラを女子サッカーで生かしている。

新シーズンのイングランド・FA女子スーパーリーグ(FAWSL)で、チェルシーとトッテナムが開幕戦でロンドンダービーを戦う。その会場は男子の本拠地と同じスタンフォードブリッジ(収容:41,798人)で、全席無料にすることを発表した。

今回の企画には、ワールドカップに参加したチェルシーの6選手を労う意味が込められているという。これは、欧州ビッグクラブが、1試合くらい無料にしても、他で吸収できる経済力を有していることを如実に物語る事例でもある。

欧州各国では、ファンの関心が高まることで、選手の気が引き締まるのはもちろんだが、入場料収入やスポンサー契約等、財政的にも強化されて、競技レベルが向上する環境が整ってきている。

一方のなでしこリーグの観客動員は年々減少傾向にあり、昨季は1試合平均約1,400人だった。

現在、実力世界ナンバーワンの米国にも目を向けてみると、女子代表の地位向上を目指す動きがある。男子代表チームより、女子代表チームの方が好成績で、アメリカ合衆国サッカー連盟(USSF)の収入も女子代表の活躍による部分が大きいにもかかわらず、男子代表選手の方が大幅にボーナスが上回っているのはおかしいとして、USSFに対する訴訟が起こっているのだ。

女子代表の地位向上・待遇改善が行われれば、女子代表の強化が進むことが予想される。

なでしこジャパン、世界一奪還に待ったなし

2011年女子W杯当時、日本列島は、東日本大震災に打ちひしがれていた。なでしこジャパンは、国民を勇気づけるために、無我夢中だった。そして実力が拮抗するアメリカに、何とか気持ちで粘り勝ちし、日本の女子サッカーブームに火をつけた。

その後2015年に、日本のみならず世界の女子サッカーを牽引していた澤穂希が引退。6度のW杯と4度の五輪に出場し、日本女子代表歴代最多の出場数とゴール数(205試合83得点)を記録し、2011年には女子バロンドール(FIFA女子年間最優秀選手賞)を獲得した。

これだけの実績のある選手は、男子サッカー界でも見つけるのは非常に難しく、澤の引退が日本代表へ与えた影響は計り知れない。

メッシが引退した後のアルゼンチンか、それ以上に困難な課題になでしこジャパンは直面している。そんな中2018年にU20女子ワールドカップで日本代表が初優勝したことは一つの朗報だ。

しかし、欧州や米国といった世界各地で、女子サッカーの力がどんどん高まる機運がある。世界一の称号を奪還するために、日本女子サッカー界は待ったなしの状況だ。


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