青柳晃洋のシンカー習得が阪神の来季を左右する?

青柳晃洋のシンカー習得が阪神の来季を左右する?

今季飛躍のサブマリン、山本昌臨時コーチから助言

今季の阪神は開幕前に、先発スタッフの充実がアドバンテージになると目されていた。しかし実際にシーズンが始まると、開幕投手を務めたメッセンジャーが不調に陥り、藤浪晋太郎も課題の制球難を克服できず。シーズン途中からは、先発ローテーションの確立が困難になる状態に陥ってしまった。

そんな阪神先発陣の中で奮闘したのは、FAで加入して10勝をマークした西勇輝と、それに次ぐ9勝をあげた青柳晃洋。特に青柳は、開幕から先発ローテーションを守って自己最多の9勝を記録すると同時に、プロ4年目にして初の規定投球回数に到達。4試合登板で1勝に終わった昨季から、大きな飛躍を果たした。

成績向上の要因は与四球率が1年目=5.27、2年目=3.92、今季=2.64(3年目は4試合登板なので除外)と下がっているように、コントロールが良化したこと。無駄な四球から崩れていく場面は格段に減った。

そんな青柳の今季の持ち球はシュート(投球割合39.9%)、スライダー(22.7%)、ストレート(17.9%)、チェンジアップ(4.9%)、カットボール(1.6%)。

投球割合はシュートが最も多いが、青柳は横手と下手の間くらいの高さで腕を振る投球フォームゆえ、ストレートがナチュラルにシュートしたものも含まれるだろう。ほとんど投げていないチェンジアップの被打率は.474、同じくカットボールは.444と、試合で使える球種ではなかったと考えられる。実質的にはシュート、スライダー、ストレートの3球種だけで9勝をあげたのだから賞賛に値する。

一方、コントロールが改善されたとはいえ、この少ない球種で来季以降も勝っていけるかとなると、プロ野球はそう甘くない。現在行われている秋季キャンプでは、新たに横手・下手投げ投手のウイニングショットである、シンカーの習得に励んでいる。

臨時コーチを務める山本昌からのアドバイスをきっかけに、ブルペンなどで新球を試投。キャンプ中盤にはケース打撃のマウンドに上がって、左打者の小幡竜平から空振りを奪った。報道されたこの日の投球後のコメントによると、本人もある程度の手応えをつかんでいるようだ。

シンカーで球史に名を刻んだ山田、潮崎、高津

横手投げ、下手投げの投手はそのフォームの特徴から、フォークボールなどの縦回転による落ちる球種は投げ辛い。落ちる球種となると、シンカーが選択肢の上位になる。往年の横手投げ、下手投げ投手でシンカーの名手といえば山田久志(元阪急)、潮崎哲也(元西武)、高津臣吾(元ヤクルト)の名が浮かぶ。

富士鉄釜石から1969年にプロ入りした山田は、キャリアの序盤は力のあるストレートを軸にしたアンダースローだった。しかし1972年にヒザを痛めてから球速が落ち、成績も下降線を描く。

そこでチームの先輩で、同じ下手投げの足立光弘が得意にしていたシンカーを学び取り、1976年に26勝を挙げて復活。その後はシンカーを武器に活躍し、1988年の引退までに通算284勝をあげた。

鳴門高時代から投げていた潮崎のシンカーは松下電器、西武とキャリアを積むにつれて切れ味を増していった。最盛期は150kmに迫るストレートと、球速差50kmの100km程度で大きく沈むシンカーを武器に相手打者を翻弄。その大きな変化量は、「一度浮いてから落ちる」とも形容された。西武一筋で15シーズンにわたって在籍し、その間にチームは9回のリーグ優勝。潮崎は常勝軍団のリリーフとして、欠かせない存在だった。

高津がシンカーに取り組んだのは、亜細亜大から1991年にヤクルトに入団してから。その前年に日本シリーズで潮崎のシンカーに苦しめられた野村克也監督が、高津にシンカーの習得を命じた。3年目の1993年に頭角を現し、当時球団歴代最多の20セーブをあげて日本一に貢献。その後もスピードに変化をつけたり、曲がり幅や落差をコントロールするなどシンカーの練度を上げ、やがてはメジャーリーガーにまで駆け上がった。

苦手の左打者対策に効果的

今季の青柳は右打者を被打率.193と抑えている一方で、左打者は被打率.332と極端に苦手にしている。シーズン中には相手がデータをもとに、打線に多くの左打者を並べることもあったほどだ。

今季の青柳が実質的に試合で使える変化球はシュート、スライダーと横の変化しかなかった。それぞれの球種ごとの被打率はシュート=.287、ストレート=.267、スライダー=.189。

全球種におけるコース別の被打率をみると、右打者の外角低めは.036とほぼ完璧に押さえ込んでいる。これは右打者のアウトコースから外に逃げていく、スライダーが効果的だったと考えられる。

左打者にはどのコースも満遍なく打たれていて、打者のバットが最も届きにくい外角低めでも、被打率は.243と芳しくない成績だった。

左打者に対しては内角に食い込むスライダーが有効になりそうなものだが、技術的な難易度は高い。なぜなら、右打者にスライダーを投じる場合はストライクゾーンからボールで構わないが、左打者に対して同じコースに投げると死球になる可能性がある。必然的にストライクゾーンの中で勝負しないといけなくなるのだ。制球が甘くなれば当然、打ち返される。

青柳対左打者のコース別被打率は、内角高めが.500と最も悪い。内角低めでも.333となっており、コントロールが改善したとはいえ、スライダーには左打者に対する勝負球として使えるまでの精度と信頼はなかったようだ。

シンカーは投手の利き手側に曲がりながら、沈むように落ちていく。つまり青柳が苦手な左打者と対した際に、外角低めのストライクゾーンから、さらに外へ曲がりながら沈む軌道を描く。

シンカーを習得できれば、空振りが取れ、引っかけさせて内野ゴロに打ち取ることもできる。左打者だけでなく、右打者にも落ちる球種が加わることで攻めの幅が広がる面もあり、ぜひともマスターしたい球種だ。

メッセンジャーが引退し、藤浪の復活も不確かな現状では、来季も阪神の先発スタッフには不安が見え隠れする。来季の先発ローテーション投手として、現時点で計算が立ちそうなのは西くらいか。

それを踏まえると阪神にとっては、来季も先発陣の一角として青柳にかける期待は大きい。青柳がシンカーをマスターするか否かは、本人にとってはもちろん、チームにとっても大きなプラスとなるのは間違いない。


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