日本のコンテンポラリーR&Bシーンのオリジネイターの一つとして、あとに続く多くのミュージシャンに影響を与え続けてきたSkoop On Somebodyが、デビュー25周年を迎えた。しかも創設メンバーのKO-HEYが12年振りにグループに復帰し、3人揃ってのアニバーサリーイヤーだ。デビュー年をそのままタイトルにした3年4か月ぶりのニューアルバム『1997』は、伝家の宝刀であるポップなR&B、ソウルバラード、シティポップ、ゴスペルクワイヤなど、グループの過去、現在、未来を一望できる素晴らしい1枚。音楽における少年のような好奇心と成熟した技巧を併せ持つ傑作について、TAKE(Vo)、KO-ICHIRO(Key)、 KO-HEY(Dr)に話を訊いた。

――25周年おめでとうございます。ちょうど1年ぐらい前でしたよね。KO-HEYさんの復帰が発表されたのは。

KO-HEY(Dr):去年の12月でしたね。

――それは25周年を3人で迎えたいという気持ちも、理由の一つだったわけですか。

TAKE(Vo):それはたまたまですね。

KO-HEY:「そういえば25年だな」というのはありましたけど、それは別にして。僕が抜けてる間にいろんなことをやらせていただいたんですけど、僕が生きてる役割は何なんだろう?ということを突き付けられたような気分になったんですね、コロナ禍になったことで。みなさんそれぞれの立場で未曽有の出来事に立ち向かって、なんとかやりくりしながら生きてる中で、「おまえは何ができるんだ」ということを、この何年間かは考えさせられることが多かったので。

――はい。なるほど。

KO-HEY:もちろん音楽が好きでやってきたんですけど、「やっぱりおまえがやるのは音楽だろう」と、もう一人の自分が言うわけです。その頃TAKEと話すタイミングがあって、「戻ってみるのはどうだろう」という話をしたんですけど、予想をはるかに超える歓迎というか、KO-ICHIROさんも含めて、みなさんすごくあたたかく迎えてくれて。また一緒に活動させてもらって、アルバムまで作らせてもらって、今年は25周年イヤーを駆け抜けさせてもらってますが、非常に充実した1年になっていると思います。

――2022年を振り返ると、2月にLINE CUBE SHIBUYAでワンマン、そのあとはツアーがあって、1日2回公演を含めてなんと63公演という、とんでもない数ですけども。あれはどんな経験でした?

TAKE:一つの挑戦でしたね。全員が五十路になって、KO-HEYが12年半ぶりに現場復帰というのもあったので、ライブ感を取り戻したいということと、待っててくれた人に手渡しで、そして二人時代にファンになってくれた人に「はじめまして」の挨拶をするのに、近い距離で直に届けたいというのがあったので。小さい会場で演奏するのは、試練でもありご褒美でもありました。しかも2回まわしの場合、1時間少々のセットを2回やるのが普通だと思うんですけど、ガチで2時間半ぐらいのセットを2回やってましたから。見に来てくれた友達のミュージシャンの第一声が、みんな「大丈夫なん?」という(笑)。

――とんでもないですよ。タフすぎます。

TAKE:それは3人の強みですね。3人になったからこそできるボリューム感だったかもしれない。

――KO-ICHIROさんは、3人での1年間をどんなふうに振り返りますか。

KO-ICHIRO(Key):まずはLINE CUBE SHIBUYAがスタート地点で、KO-HEYはいきなり大きな舞台に立つわけで、かつて一緒にやってた仲間にも来てもらい、準備万端で行こうみたいなところはあったんですが、やっぱりと言いますか案の定と言いますか、みんな大変だったといういい緊張感がありまして(笑)。でもそれを乗り越えられたおかげで、いい高まりがあって、次は3人だけで回ろうというツアーを組んで、本数を聞いた時は僕も「マジかよ」とは言いましたけど、意外とと言いますか、毎回楽しめたんですね。1日2回というのは「また来てくれましたね」という人もいるし、一期一会の人もいるから、演奏はそんなに変わらないんだけど、アプローチを毎回変えられるんですね。バンドだとショーになってしまうところを、セッションのようにお互いの出す音に対して反応していくことを、小さい会場の近い距離で毎回できたのでフレッシュさを保てたと思います。

――ああー。なるほど。

KO-ICHIRO:最初のほうは、あと何本とかも考えずただひたすらに楽しんで、残り三分の一を切った頃から、終わっちゃうと寂しいよねという気持ちにもなりました。ただその頃から、アルバム制作の締め切りというものが見えて来まして、ライブと並行しながら進めていったので、二つの脳を使っていたような気はしますけど、逆にそれが良かった部分もあったんですね。ライブで得た空気感をそこに閉じ込められたと思うし、ずっとスタジオごもりで作る音とは違ったものになったと思います。

――間違いないですね。音源にはしっかりライブ感が詰め込まれてます。生き生きとした人間味のある音として。

KO-ICHIRO:(レコーディングの)後半はなるだけみんなで集まって、「せーの」で録音したりしたんですよ。そうじゃない曲もあるんですけど、どれもちゃんと生き生きしてるんで。

TAKE

TAKE

――時系列で言うと、シングルが2月から連続で何曲か出ているので、まずそれを先行させてからアルバムに取り掛かったという流れになりますか。

TAKE:KO-HEYがREJOIN(再加入)して、いつぐらいにシングルを出そうという話になったのですが、「Hooray Hooray」というKO-HEYの思いがすごく詰まった曲があって、詞、曲、アレンジも全部KO-HEYなんですけど、それを第一弾シングルにすることにすごく意味があるなと思ったんです。KO-HEYはしばらく離れていたぶん、こんな歌を歌ったらいいのにとか、こんなサウンドをやったらいいのにとか、プロデューサー目線を身につけていて、まずは「Hooray Hooray」という応援歌を最初に出しました。そして2曲目の「GOOD TIME」は我々の大得意のR&Bを、ただ懐かしいだけじゃなくて、今をときめく人とコラボしたらどんな世界になるんだろう?ということで、Shingo Suzukiさんと一緒にやってみて。そして3曲目に「SUMMER ESCAPE〜夏の思い出〜」を出して、これは何かいいサマーソングはないかなと思った時に、僕らはキマグレンや槇原敬之さんのサンプリングを要所要所でやってきたんで、久しぶりにやってみようよということで、KO-ICHIROがみつけてきたネタとして、このトラックをバックに歌うデモがすごく良かったんで、「これにしよう」と。コロナ禍で夏を楽しめない中で、良かった時の夏を振り返って、大人が気分よく過ごせるような曲になればいいなということで、トントントンと3曲できたんですね。

――快調ですね。

TAKE:そしてアルバム曲をどうしよう?という中で…KO-HEYのREJOINは去年発表したんですけど、実はそこに至る前に極秘合宿をやったんですよ。鎌倉の山のほうで。KO-HEYは戻ると言ってるけど、周りのみんなを巻き込むことだし、そこでセッションしてみて駄目なら駄目だと思ったし、そこで何か光が見えれば、周りのスタッフを巻き込んででも3人で「もう一回やります」と言おうという、そういう合宿をやったんです。その時に、KO-ICHIROもKO-HEYも思い入れたっぷりの曲を書いてきてくれて、レコーディングもしたんです。その時の素材がすごく良かったから、このアルバムのメインはほとんどそれになってますね。

――ああー。そんなことが。

TAKE:久しぶり、という照れもまだある中で、「こんな曲どう?」みたいな、いい意味での戦いもあり。そういう熱い合宿で生まれたデモは、当然世の中に出したいよねという、スタッフも同じ気持ちでいてくれたんで、こういうアルバムになりましたという感じですね。その時出来た曲が、1曲目「LOVIN’YOU」から「SUPER SHINING」「恋の炎」「青空」「Don’t worry it doesn’t matter」…ほとんどですね。「1997」も合宿のすぐあとにできた曲です。アルバム用に書き下ろした曲は「Save our smiles」と、Face 2 FAKEが書いてくれた「ORGEL」と、「Good Night Babe」かな。

――つまり1年以上かけて、じっくりと作って来たアルバム。

TAKE:実はそうなんですね。なのになんで、あんなに締め切りに追われたんだろう(笑)。

KO-ICHIRO:それは1日2回ライブをやってたからです(笑)。

――KO-ICHIROさんも、3人を想定して曲を書いていったわけですよね。

KO-ICHIRO:半分冗談で、KO-HEYのオーディションをすると言っていたんですけど、不安感は全然なくて。僕の感覚としては、コーラスが二声から三声になる喜び感のほうが勝っていて、戻って来たというよりも新たな出会いという感覚ではありますね。スティーヴィー・ワンダーの「Isn’t She Lovely」的な、子供が生まれた喜びにちょっと近いかもしれません。曲のタイプは違えど、そういうワクワク感や喜び感が今回の曲にはありました。

KO-ICHIRO

KO-ICHIRO

――ちなみに、最初に持ってきた曲は?

KO-ICHIRO:「青空」ですね。3人でまたやれるぞという喜びから生まれた曲です。ちょっと男っぽい感じをイメージしました。あと、今回はすべて生ドラムを叩いていて、それは今までになかったことです。たぶんドラマーの叩きたいという衝動が強かったんだと思います(笑)。

KO-HEY:自分が叩く、叩かないということにはまったく頓着がなくて、その楽曲によりけりだと思ってるんですけど、今回はトラックとして打ち込むことは頭になかったんですね。かといって叩きたいという欲求もなくて、自然とそうなったんですが、やっぱり25年経ったグループがこれから30年、35年とやっていく時に、たとえば「Hooray Hooray」のようにちょっと懐かしい感じというか、極端に新しいことをしようとは考えてなくて、大人がやってしっくりくるものって何だろう?という気分で曲を書いたり、アレンジをしたんです。

TAKE:「GOOD TIME」をアレンジしてくれたShingo Suzukiさんに、「もし打ち込みがよければいいですよ」と言ったんですけど、彼は「いや、僕がプロデュースさせていただく限りは、KO-HEYさんのドラムがまず軸にあって、KO-ICHIROさんのエレピも生でやってほしい」と。それが逆に「今」なのかなと思いましたね。かっこよければいいというものではなくて、そこにちゃんと人の形があるのが今なのかなって、逆に勉強になりました。今は機械でいくらでもかっこいい音を作れるじゃないですか。でもここに人がいるということが僕らの音になっていく、それが今感なのかなと思います。

――それはすごく重要なポイントだと思います。

KO-HEY:打ち込みだけの音像にちょっと飽きてる、というのもありますね。生の楽器や、人の汗やぬくもりがあれば聴けるんだけど。

TAKE:人肌感ね。

KO-HEY:ボーカルの質感も、きれいにしてしまうものが多いような気がするので。ディスってるわけじゃなくて。

TAKE:若い子たちがアナログレコードを聴いたりするのも、人間味というものを求めているような気がするんですよ。だから、どっちもあっていいのかなと思います。ただこのグループの怖いところは、こんなこと言ってて次は全曲打ち込みでやったりするんで(笑)。

KO-HEY:今回は一つの足跡に過ぎません(笑)。そこは本当にわからないです。

KO-ICHIRO:人間味あふれるバンドって、そういうことだった(笑)。