幕末土佐の天才絵師 絵金 2023.4.22(SAT)〜6.18(SUN) あべのハルカス美術館

入り口

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幕末から明治初期にかけて数多くの芝居絵屏風や絵馬提灯などを手がけ、「絵金さん」の愛称で親しまれてきた土佐(高知県)の絵師・金蔵の作品の展覧会『幕末土佐の天才絵師 絵金』が、あべのハルカス美術館(大阪)で開催されている。

音声ガイドのナビゲーターは中村七之助

音声ガイドのナビゲーターは中村七之助

歌舞伎など芝居の一場面を絵で表現し、なかでも「血赤(ちあか)」と呼ばれる赤色の使い方でインパクトを残してきた絵金。今回の展覧会では、「第1章 絵金の芝居絵屏風」「第2章 高知の夏祭り」「第3章 絵金と周辺の絵師たち」の3章構成で絵金の真髄を伝えていく。

「浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森」

「浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森」

まず目を奪われる作品は「第1章 絵金の芝居絵屏風」の「浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森」だろう。大勢の雲助を相手に若衆の白井権八が立ち廻りをしているところに侠客の幡随院長兵衛が来合せる場面を描いた同作は、はねられた首や腕が地面に転がり、飛沫のように飛び散っている血の色がショッキングであり、また臨場感にもあふれていて、絵金の筆致を象徴している。一方「伽羅先代萩 御殿」や「忠臣二度目清書 寺岡切腹」などは、血ではなく着物、衝立(ついたて)の縁などに赤が配色され、作品の印象度を強めている。

長年、絵金を研究してきた創造広場「アクトランド」横田恵学芸員も内覧会時、集まった報道陣に「絵金の作品は赤に注目をしてください。すごくビビットな赤色なので特殊な絵の具だと思われていたのですが、実は普通の日本の絵の具が使われているんです。「寺岡切腹」には赤い衝立のなかに「友竹」という隠し落款があります。どこに隠し落款があるのか、間違い探しのように楽しんでください」と鑑賞の際の楽しみ方を案内。

高知の夏祭りを再現

高知の夏祭りを再現

高知の夏祭りを彩る絵馬提灯

高知の夏祭りを彩る絵馬提灯

また、多くの鑑賞者を圧倒するのが「第2章 高知の夏祭り」。同章について横田学芸員は「高知の夏祭りを再現しています」と言い、「神社の参道をイメージしたやぐらが組まれています。また、照明も昼と夜のお祭りの雰囲気をあらわしています。絵馬提灯も、暗い参道の灯り取りのようになっています」と、セットによって生み出された幻想的な空間について説明した。

「宝袋図」

「宝袋図」

ユニークさがあったのは「第3章 絵金と周辺の絵師たち」の「宝袋図」。たくさんの宝を唐子たちが運んでいる、おめでたい図だ。横田さんは「血みどろの絵を描く絵金さんも、こんなにかわいらしい絵を描くんです」と、異なる作風も絵金の魅力であると話した。

展覧会の最後には、作品とともに撮影できるフォトコーナーを設置

展覧会の最後には、作品とともに撮影できるフォトコーナーを設置

図録を含むオリジナルグッズもずらり

図録を含むオリジナルグッズもずらり

横田学芸員が「絵金を見てきた人でも初めて鑑賞する作品があるのでは」という同展覧会は、6月18日(日)まであべのハルカス美術館でひらかれている。

取材・文=田辺ユウキ 撮影=SPICE編集部