4月24日(月)にネルケプランニングが始動させた、10人の少年たちからなるティーンエイジャー演劇ユニット「神戸セーラーボーイズ」。6月2日(金)〜4日(日)にAiiA 2.5 Theater Kobeにて、初公演『神戸セーラーボーイズ SF「Boys×Voice 306」』を行う。今回SPICEは彼らの稽古場に潜入。本番に向けて稽古に励むメンバーの様子を独占レポートする。(お披露目会の様子はこちら)

真剣に話を聞く神戸セーラーボーイズ

真剣に話を聞く神戸セーラーボーイズ

エネルギーを前へ! それぞれの個性と得意を活かした合唱劇

神戸セーラーボーイズは、クラシカルな原作に新たな解釈を交えて制作する「定期公演」と、彼ら自身の成長や経験をもとにオリジナルストーリーを展開する「セミフィクション公演」の2つを軸に活動していく演劇ユニット。初めての公演は後者に決定した。

崎元リスト

崎元リスト

初演となる『Boys×Voice 306』には明石侑成、石原月斗、崎元リスト、髙橋龍ノ介、田中幸真、塚木芭琉、津山晄士朗、中川月碧、細見奏仁が出演する。脚本、演出を手がけるのは岸本功喜、音楽を担当するのは小島良太と、数々の大型オリジナルミュージカルに携わってきたコンビがタッグを組む。

通し稽古前に声を出しながらアップ

通し稽古前に声を出しながらアップ

本番まであと1週間に迫った5月26日(金)夜、神戸市内の某レッスン場を訪れると、神戸セーラーボーイズのメンバーが集合してアップを始めていた。軽い運動とストレッチで体をあたためたらすぐに芝居の稽古へ。台本を最初から通してゆく。

演出スタッフが稽古に入る前に「本番の状況を想像して」と前置きすると、メンバーは一層真剣な顔つきに変化した。

塚木芭琉

塚木芭琉

物語は、10人の少年がAiiA 2.5 Theater Kobeで上演される舞台のオーディションを受けるところからスタートする。そして告げられる合格の報せ。集まった合格者たちが自己紹介をし合う中で、一体何が起きるのかーー?!というストーリー。

中川月碧

中川月碧

4月のお披露目会の直後から、少しずつ公演に向けての練習を重ねてきた彼ら。残り1週間に迫った今、セリフはほぼ頭に入っている段階で、ここからはひとつひとつの動きやセリフの精度を上げてゆく大切な時間となる。

崎元が着ているTシャツの右ポケットには塚木のイラストが

崎元が着ているTシャツの右ポケットには塚木のイラストが

2時間の稽古は、ほど良い緊張感がありながら全体的に和やかに進行。崎元は5月4日(木)の誕生日にメンバーからプレゼントされた、塚木の手描きイラスト入りの水色のTシャツを着て稽古に臨む。オーディションが行われた今年の2月から数えても、彼らはまだ出会って数ヶ月の関係性だ。

最年長の明石と最年少の髙橋

最年長の明石と最年少の髙橋

しかも最年長の明石と最年少の髙橋の年齢差は5つ。10代における年の差は大きなものだと思うが、稽古中に見せるメンバーの仲の良さからは、だんだんと絆が深まっていることを感じさせた。

津山晄士朗

津山晄士朗

「セミフィクション公演」は、演劇と合唱で構成される。経歴も経験も様々な彼らにとって、『ピーターパン』や『忍たま乱太郎』乱太郎役などミュージカル経験のある津山や、演技の下積みがある塚木は頼りになる存在のひとり。また、合唱ではダンスが得意な中川や田中がチームを引っ張る。ミュージカル『テニスの王子様』では不二裕太役を務めた石原が得意とするアクロバットや、崎元の英語をはじめ、彼らの持ち味もしっかり出る内容になっている。青春真っ盛りのティーンエイジャーらしいコミカルなやり取りも織り込まれていた。

石原のアクロバットなど、各自の特技も詰め込まれている

石原のアクロバットなど、各自の特技も詰め込まれている

演出スタッフはメンバーの動きや気になるポイントを見逃さず、その都度コメントを入れながら丁寧に指導を行なっていく。このシーンでは何を伝えたいのか、登場人物はどんな状況でどのような感情を抱いているのか、このセリフによって人物の関係性がどう明らかになるのか。ただセリフを読んでいるだけでは伝えきれない、感情や雰囲気を伝えるにはどうすればよいのか。声の出し方や話すテンポ、語尾のニュアンス、振る舞い方、ひとりの言動が場に与える影響の大きさ。実に細かな部分を拾い上げて、的確なフィードバックを行っていく。少しでも迷いがあると見抜かれる。時にはシビアな指摘が飛ぶ場面もあったが、「なぜダメなのか、なぜ良いのか」という理由も述べられるため納得できる。メンバーもしっかり受け止めて次で修正し、懸命に食らいついていた。

田中幸真

田中幸真

もちろん良くできたところは褒めて認める。「いっぱい考えてきたことは十分皆の中に生きているから、それを信じていきましょう」と背中を押して士気を上げる場面もみられた。

石原月斗

石原月斗

そして稽古の終盤には脚本、演出の岸本も現れてメンバーの様子を見守る。この時ばかりは空気がピリッと引き締まったが、「課題がクリアになってるね」、「良いキャラも出てきた」との評価には、ホッとした様子で笑顔を浮かべていたのだった。

髙橋龍ノ介

髙橋龍ノ介

メンバーの姿を投影したセミフィクションの劇と聞くと、「どんな芝居だろう?」と思うかもしれないが、まさに彼ら自身の現在地を示すようなストーリーに仕上がった。彼らが今置かれている環境、抱える悩みや葛藤、心の交流がリアルに描かれた青春群像劇。フィクション要素も多く盛り込まれており、素の自分とは異なるキャラクターを演じるメンバーもいるが、彼らの心の動きを追体験できる内容となっている。

明石侑成

明石侑成

何よりもメンバー自身が劇と共に成長していることが本当によくわかる。年齢も個性もバックグラウンドも異なる10人。走り出したばかりの彼らの記念すべき晴れ舞台を、ぜひ目撃してほしい。

後半の合唱とダンス練習の様子

後半の合唱とダンス練習の様子

『神戸セーラーボーイズ SF「Boys×Voice 306」』は6月2日(金)〜4日(日)に、AiiA 2.5 Theater Kobeにて初公演を迎える。

取材・文=久保田瑛理 撮影=高村直希