CUT A NIGHT 〜勝たないと!ハシからピーヤ編〜 supported by 『真夜中のカルチャーBOY』2024.4.24(THU)大阪・心斎橋 Music Club JANUS

2024年4月24日(木)に、大阪・心斎橋のMusic Club JANUSにて、『CUT A NIGHT 〜勝たないと!ハシからピーヤ編〜』が開催された。同イベントは、JANUSとABCラジオ『真夜中のカルチャーBOY』、そして関西のイベントプロモーター・清水音泉が協力した初イベントである。出演は、からあげ弁当、ハシリコミーズ、ポンツクピーヤの3組に、オープニングアクトでカニバルが登場。新進気鋭のバンドがしのぎを削り合った。

鈴木淳史

鈴木淳史

開演時間になると、『真夜中のカルチャーBOY』のパーソナリティを務める、ライター・インタビュアーの鈴木淳史が登場。みんな1番になるつもりで、メラメラと闘志を燃やし勝ちたい気持ちでいることが伝えられ、「CUT A NIGHT!〜勝たないと!〜」の開幕宣言でイベントがスタートした。

カニバル

オープニングアクトを務めたのは、若手バンドの登竜門的プロジェクト『十代白書2024』で決勝進出を果たしたカニバル。西尾遼平(Gt.Vo)、柿内六甲(Gt.Vo)、松島テシエー耀世アンドレ(Ba)、石井夏舟(Key)、高見杏生(Dr)からなるオルタナティブロックバンドで、みんな19歳……と年齢に触れるのは野暮だと思うほどの卓越したスキルとその風格に、1曲目「Rond∅」から驚かされる。

カニバル

カニバル

西尾と柿内がボーカルをスイッチするたびに、ガラリと楽曲の色が変わる。ムードあふれるジャズなナンバーから、ソリッドギターロックを正々堂々とぶつけたり、気づけばヒップホップをかましてきたり……と虹色の照明が似合う振り幅の広さと緩急で、観客をぐんぐん引き込んでいった。

カニバル

カニバル

気づけば、柿内のカウントに合わせてフロアが揺れる一体感をみせた「PRAY!?」。そしてラストは「FlyDAY」。この日の前夜にサブスク解禁されたばかりの新曲を、最後に持ってくるあたりが勝負に出ているなと感じたし、なによりバンドを代表する1曲になるに違いない名曲だからすごい。まだバンドを組んで1年も経っていない、ということを忘れていた。あまりに堂々たるステージングで存在感をこれでもかと焼き付け、『CUT A NIGHT』が開幕!

カニバル

カニバル

カニバル

カニバル

カニバル

カニバル

カニバル

カニバル

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

鈴木淳史の呼び込みで、東京から夜行バスで来てバスで帰ることが明かされたハシリコミーズがトップバッターで登場。5月のライブをもって、ベースのあおいが脱退することにも触れられ、「(現体制は)今日が最初で最後の人もいるかもしれない。3人の奇跡のバランスを脳に目に焼き付けて帰ってください」と真摯に紹介された。

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

白を基調とした衣装で、SEにあわせてまったりと歩きながら登場。そんな何気ないシーンですら様になる。アタル(Vo.Gt)が「鈴木さんありがとうございます! はるばるバスでやってきました!」と言い放って、気合いの入ったカウントから「たまには下と比べましょう」でライブをスタート。あおいの沈み込むベースに、さわ(Dr)の強烈なスクリームも炸裂、1曲目から大爆発である。

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

MCでは、あおいの脱退についても話され、「何事も変わっていきますね。そう思いませんか? 僕もちょっとずつおっさんになっていくんですよ。みなさんも一緒ですよ。でもうまくいくよ。全部に意味があるよという、そういう曲をやります」とアタルが話してからの「Everything's gonna be alright!」。この3人でしか鳴らせない音を感情のままに打ち鳴らす姿が、フィルムのように心に焼きついて忘れられない。

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

「一日数秒の良いシーン」では、モヤモヤを打ち消すように、まとわりつくものを振り払うように歌うアタル。ラストの「本当の綺麗がわからない」まで走り抜けたステージに漂う余韻には、なんとも言えない満たされるものがあった。生きていれば毎日いろいろあるし、先のことはわからない。だからこそ、いま目の前で起こっている奇跡のような瞬間を見逃さずに大切にしたい。ハシリコミーズのライブには、そんなことをいつも考えさせられる。この日のステージも、記憶に残る美しいシーンが何度もあった。

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

ハシリコミーズ

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

昨年、初めて心斎橋JANUSに出演したポンツクピーヤを観て、店長・コージが今回のイベントを思いついたというから、この日のキッカケを生んだバンドと言っても過言ではない。大石哲平(Vo.Gt)、吉元裕貴(Ba.Cho)、中江亮太(Dr.Cho)が勢いよくステージに登場して、「喫茶店に蔓延る」「こんにちはスーパーマン」と疾走感あふれる性急なナンバーを畳み掛ける。早口なリリックでも、大石の歌声が綺麗に伸びていく。

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

「今日は『勝たないと!』ということで。音楽は勝ち負けじゃないとよく言われたんですけど……」と話し始めた大石。「自分たちなりの音楽をやる、というのも重々わかります。だけど、僕らは負け続けの人生だったから。学校では失恋して、会社でもうまくいかない。こういうところで勝たないと、俺たちの人生に採算がつかないんです。だから今日は勝ちに来ました!」と宣言。からの「こんばんは暗闇」には思わずガッツポーズ。細身の3人からは想像できないほどの分厚いバンドサウンド、魂の叫び。メンバーの「勝たないと!」の気持ちに奮い立たされ、フロアの熱気がグンと上がる。

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

「19歳」「愛してるって言って」と続け、よりメロディと歌声の美しさを際立たせるバラードをじっくりと聴かせて観客を釘付けに。再びMCでは「他のバンドに話しかけられるほど陽キャでもないし、自分はずっと孤独なんですよ。友達もできない、家族ができてもどうせ別れる。友達とは酒を飲まないと付き合ってられない。俺たちは一生孤独なままなんやなと思って、この曲を書きました」と新曲「ロンリー」を披露。鬱屈としたフラストレーションを爆発させるように歌い、「シット・バイアス・ミュージック」で歓声に包まれながらステージを終えた。ステージをはける前に、地声でワンマンライブを案内。本編では楽曲と伝えたいメッセージだけしっかりと届けたところもまた、硬派で印象的だった。

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

ポンツクピーヤ

からあげ弁当

からあげ弁当

からあげ弁当

この日のトリを飾ったのは、からあげ弁当。人気曲「乾杯をしよう」から始める、最高の幕開けとなる。続く「チキン野郎」の気迫、打ち鳴らされる音像、ステージにコントラストを生み出す照明がバチバチにキマっていて、のっけからすごいスケール感のライブを展開し、フロアに続々と拳が突き上がる。

からあげ弁当

からあげ弁当

5月1日(水)リリースの最新EP「最高更新」から先行配信された新曲「22」では、こーたろー(Dr)、春貴(Ba)のパンキッシュに爆裂プレイ。焼きそば(Vo.Gt)が「俺の時代だー!」と叫ぶ姿がとにかくたくましい。どこまでもついていきたくなるような、まっすぐな姿勢とリーダー性には妙に説得力がある。なによりリリースされたばかりの新曲なのに、フロアは大盛り上がりで、口ずさめるほどの一体感が、いかにグッドメロディであるかを証明していた。

からあげ弁当

からあげ弁当

たぎる衝動を一気に放つ爆発力と、温もりあるバラードの緩急で観客の心をガッチリと掴みながら、MCで焼きそばはラジオや活字インタビューでバンドの名を広げてくれた鈴木淳史への感謝を伝えた。「カッコ良いライブをすることが恩返しになる。俺ららしい勝ち方をして、バチっとシメて帰りたいと思います」と、再び最新EPから「stay with me」を披露。じっくりと歌い届けられ、涙腺がゆるむ。

からあげ弁当

からあげ弁当

そして、再びのMCでは重大発表。メンバーを1人迎えて4人体制になることが発表された。「俺らにとっては通過点の報告やけど、今まで応援してくれた人には大事な発表」と、賛否両論を覚悟しつつ「後ろを向いてられへん。次に向かって走っていく」と決意表明。こらえきれずに涙を流す観客も。バンドがなくなるわけではない、前向きな決断であることをわかっている。けれども、これまでとの変化を目前に気持ちが追いつかず、今日までのバンドとの月日が走馬灯のように蘇っては込み上げてくるものがある。

からあげ弁当

からあげ弁当

ひとりひとりそれぞれの想いを受け止めて、歌い鳴らされた「そんな日々を生きていく」。そしてラストで再び「チキン野郎」が披露された時には、まったく聴こえ方が違っていたし、歌詞の刺さり方が変わった。なにより『勝たないと!』と勝負にこだわる、この日にぴったりな最後だった。真剣勝負だからこそアンコールはなし。「またライブハウスに俺らのライブを観にきてください!」と言い残してステージを後に。暗転した時には、バンドと共に、新しい一歩を進んでいく心構えができたような気がした。6月7日(金)に、ここ心斎橋JANUSで開催される自主企画が、3人でのラストライブとなるのでぜひ見届けてほしい。

からあげ弁当

からあげ弁当

最後は、ノーサイドで出演者一同が並んでカーテンコール。今は学校の運動会でも勝ち負けをつけないような時代である。しかし真剣勝負だからこそ生まれる熱気、しのぎを削る興奮があることを改めて体験することができた『CUT A NIGHT』。今こそ必要なエネルギーに満ち溢れていたように思う。またこのイベントを通して、若い才能あふれるバンドたちの真剣勝負を見届けられる日を心待ちにしたい。

『CUT A NIGHT 〜勝たないと!ハシからピーヤ編〜』

『CUT A NIGHT 〜勝たないと!ハシからピーヤ編〜』

取材・文=SPICE編集部(大西健斗) 写真=オフィシャル提供(撮影:鈴木洋平)