令和6(2024)年、歌舞伎座の8月興行『八月納涼歌舞伎』にて、小説家・京極夏彦の書き下ろしによる新作歌舞伎『狐花(きつねばな) 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)』が上演されることが決定した。

数多くのミステリー作品を手がけ、その独自の世界観で読者を魅力し続ける京極夏彦。小説家デビュー30周年という記念の年を迎える今年「京極夏彦×歌舞伎」というファン待望の組み合わせが実現する。歌舞伎の舞台化のために執筆された完全新作が、7月にはKADOKAWAより小説版として発売、8月には歌舞伎座において上演されるという新たな試みだ。

京極夏彦 撮影:森 清

京極夏彦      撮影:森 清

今回の作品は、累計発行部数1000万部を超える京極夏彦の大人気作「百鬼夜行」シリーズ、そして文学賞三冠を果たした「巷説百物語」シリーズにも連なる物語。古本屋を営む京極堂こと中禅寺秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)が憑き物落としによって事件の真相を解き明かしていく「百鬼夜行」シリーズは、第1作『姑獲鳥の夏』の映画化、第2作『魍魎の匣』の映画、テレビアニメ、舞台化など小説のみならず様々な形で人々に愛されてきた。本作は、同シリーズの主人公・中禅寺秋彦の曾祖父・中禪寺洲齋(ちゅうぜんじじゅうさい)の時代を描き、美しい青年の幽霊騒動と作事奉行らの悪事の真相に中禪寺が迫る、謎と驚きと切なさが胸を揺さぶる物語となっている。

京極夏彦が歌舞伎を書き下ろすのは今回が初。そして出演者には8月の歌舞伎座の恒例となった『八月納涼歌舞伎』を中心となり盛り上げてきた、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助。

松本幸四郎

松本幸四郎

中村勘九郎

中村勘九郎

中村七之助

中村七之助

7月26日(金)に発売が予定されている小説版、8月4日より上演される歌舞伎舞台版それぞれの形で、どんな京極ワールドが繰り広げられるのか、期待が高まる。

【あらすじ】
時は江戸。作事奉行・上月監物(こうづきけんもつ)の一人娘は、母が眠る墓所に現れたという、ある男を探していた。彼岸花を深紅に染め付けた着物を纏い、身も凍るほど美しい顔のその青年は、"この世に居るはずのない男"だった——。一方、青年の出現を知った監物は、この騒動が過去の悪事と関りがあるのではと警戒する。いくつもの謎をはらむ幽霊事件を解き明かすべく、"憑き物落とし"を行う武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋が監物の屋敷に招かれる。謎に秘された哀しき真実とは?

京極夏彦 コメント

小説家三十年の節目の機にお声掛け戴き、斯様な仕儀と相成りました。
文字のみを扱い用い馬齢を重ねて参りましたが、此度は黒、柿、萌黄の大舞台。文字ならぬ名優の方々の身体に意を委ねまする怪しの狂言。
まるで作法も文法も違いますれば、果たして如何なる仕上がりとなりますものか、身の引き締まる思いに御座います。
何卒、心静かにご高覧戴きまするよう、伏して御願い上げ奉ります。

松本幸四郎 コメント

「百鬼夜行」シリーズは、危険な香りを感じつつも嬉しくなるエンターテインメントで、凄い艶やか、まさに凄艶(すごつや)な世界で大好きな作品です。今回、ついに京極夏彦さんが新作歌舞伎を書き下ろすということで、「待ってました !」という気持ちです。異次元旅行をお客様と共に楽しみたいと思います。小説家デビュー30年を迎えられた京極さんの書き下ろし歌舞伎で、僕が22年間夢見続けた傾(かぶ)いた歌舞伎を作り上げたいと思っています。