俳優の塩野瑛久(29)が、吉高由里子主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8:00)に一条天皇役で出演している。幼くして66代天皇に即位し、政争に巻き込まれる役どころ。気品あふれる佇まいと繊細な演技で多くの視聴者の心をつかんでいる。そんな塩野に今作への思いや舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛〜僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石静氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。

 今作への出演は、オーディションで勝ち取った。正直、手応えはなく、合格を告げられた時は驚いたという。「メインキャストとしてそうそうたる方ばかりが発表されていく中、“自分で大丈夫かな”という不安があった。同時に、素敵な役を演じられることへのワクワク感が凄く大きかった」と、大役を射止めた喜びを語った。

 塩野が出演すると、SNSには「雅で美しい」「気品があふれている」などの声が上がった。「ひとまず一安心」と安どの表情。「ありがたいし、うれしかったです。平安似合うんだなって」と笑顔を見せた。

 一条天皇は、長徳の変で帝としての責任と妻・定子(高畑充希)への愛の板挟みに。塩野は喉元のわずかな動きや瞬きで、揺れ動く心情を表した。第21話「旅立ち」(5月26日放送)では定子の出家にむせび泣き、悲しみの重さを表現。第24話「忘れえぬ人」(6月16日放送)では、それまで見せたことのない強い口調と眼差しで、定子を内裏に呼び戻すことを宣言した。一条天皇はやがて定子を寵愛するあまり、政治をなおざりにしていく。

 演じる上で軸としたのが人と人の心の距離。「他の公卿たちは自分の家の地位を上げることを考えるけど、帝は一番上の立場。自分の出世を考えない分、地位よりも人と人の心の距離や心のあり方が重要に思えたのかな」。さまざまな策略が張り巡る平安の世界で、一条天皇は地位よりも心のつながりを求めた。

 その思いを阻むのが御簾の存在だ。塩野は「シーンを重ねる中で、御簾の存在の大きさを感じた」と明かした。一条天皇の目の前には御簾が掛かっていて、公卿との会話は御簾越し。目を見ながら会話することができない。「公卿たちが自分の目の前で本音を吐き出せないことを一条天皇は分かっている。本音でぶつかり合えない苦しさ、孤独感がとてもある。御簾の向こうの人たちとの人間的な接し方を求めている人物だと思っている」。高貴な立場ゆえの疎外感を語った。

 そんな一条天皇に対して、藤原道長(柄本佑)は真っすぐに向き合っていく。塩野は「一条も世の中を良くしたいという思いはずっと持っている。その中で、道長だけ今まで見てきた道隆(井浦新)、伊周(三浦翔平)とは毛色が違う。道長とはどうやら気が合いそう。気が合わなかったとしても、なるほどと頷けることをはっきり言ってくれる。道長への信頼感が積み上がっていった」と、一条天皇の思いを代弁した。

 一方で、「道長が煙たい瞬間も必ずあったと思う」と告白。第26話「いけにえの姫」(6月30日)で一条天皇は道長の娘・彰子(見上愛)の入内を許した。塩野は今後の展開について、「定子だけでなく彰子の話も含めて、一条天皇の性格が浮き出てくると思う。そこまでを通して、一条天皇の人柄を知ってもらえればいいなと思っている。凄く切なくて、でも愛おしい気持ちもどんどん湧いてくるような物語になっていく。ぜひ注目していただきたい」とアピールした。一条天皇からますます目が離せない。