◇陸上・水戸招待(2024年5月5日 茨城・ケーズデンキスタジアム水戸)

 女子やり投げで、昨年の世界選手権優勝の北口榛花(26=JAL)が6投目に61メートル83をマークして今季国内初戦を優勝で飾った。納得のいく記録にはほど遠かったが、こどもの日に訪れたファンに向けて力投を披露した。次戦は19日に国立競技場で行われるセイコー・ゴールデングランプリ。既に出場が決まっているパリ五輪での金メダルへ加速していく。

 苦笑いだった。得意の最終投てきで記録を伸ばした北口だが「感覚的に合ってない部分が多かった。もうちょっと投げたかった」と悔しそう。1投目の60メートル98でトップに立ったが、冬場に鍛えた肉体と技術がかみ合わず、5メートル以上の強風を読むことも難しかった。62メートル97で勝った4月27日のダイヤモンドリーグ(中国)と同様、試行錯誤の状態が続き「不完全燃焼。修正しきれなかった」と課題を口にした。

 高ぶる気持ちがあった。世界女王として臨む初の国内試合。試合前は日本記録を出した動画を見てイメージをつくった。通例なら終盤の投てきで求める会場の手拍子も、2投目から開始。初めて競技に注目するファンのため、場内の大型スクリーンに自分が映っているかもしっかり確認した。「(手拍子が)2投目からで早かったけど“ま、いっか!”って思って」と、会場を盛り上げた。

 この日はこどもの日。地元の高校生には「インターハイ頑張ってね」と自ら話しかけ「何かを感じてもらえたらうれしい」と願った。競技場の外で待っていた100人以上のファンには特製ポストカードを手渡す場面も。自身は幼少期に親しんだ水泳、バドミントンがやり投げの土台となった。その経験を踏まえ「いろんなことにチャレンジして、失敗しても成功しても、それが自分の経験になる」とメッセージも送った。

 子供の頃に届くと思わなかった五輪金メダルが射程圏にある。次戦は昨夏の世界選手権メダリストが集う五輪前哨戦、セイコー・ゴールデングランプリ。「もっと自分は投げられる」。国内での試合を重ね、花の都へギアを上げる。(大和 弘明)