◇セ・リーグ 阪神2−6広島(2024年5月21日 マツダ)

 【能見篤史 視点】ここまで制球に苦しみ、修正できない阪神・村上の姿を見るのは初めてだ。初回、先頭の秋山に初球を左中間に二塁打された真っすぐはシュート回転して真ん中へ。次打者・野間の2球目フォークは引っかけてしまって暴投。無死三塁と変わって3球目のフォークは外角高めに抜けたようになり空振りを奪ったが、4球目のフォークも低めに決まらず、右前に適時打された。

 思うように組み立てられないが、捕手の坂本はそれでもフォークを要求して必死に立ち直らせようとした。しかし3回に末包に落ちずに真ん中に入ったフォークをバックスクリーンに3ランされた。村上は5回まで打者25人に計80球を投げたがフォークで空振りを奪ったのは、その野間からのすっぽ抜けた1球だけだった。

 調子が良くない時は一年間で何度もある。そんな時、すぐにガラリと変わることはあり得ない。私は高さだけを意識して、回を追うごとに修正できるように努めた。同じく立ち上がり調子があまり良くないように見えた広島の床田が8割の力で、強弱を付けながら、援護点をもらっていくうちに修正していった。この日に限っては対照的だった。

 一年間では、こんな日もあると切り替えるしかない。テクニカルな何かを修正しないといけないものではなく次の登板でカードも球場も替わって、またいつもの村上に戻ればいい。ローテーション投手は割り切れるメンタルも大事だ。(スポニチ本紙評論家)