◇セ・リーグ 阪神8−1中日(2024年6月27日 甲子園)

 阪神・前川右京外野手(21)が27日の中日戦で2打席連続の適時二塁打を放ち、12試合ぶり2桁安打で8得点の快勝を呼んだ。特に先制した7回は課題だった左腕からプロ初長打を記録。2イニング連続4得点の主役を演じた。引き分けに終わった前夜はサイン見落としで「罰金」の叱責(しっせき)。見事に挽回し、岡田彰布監督(66)に通算700勝を贈った。

 待望の先制点を挙げた7回、なお無死一、二塁。梅津から左腕・斎藤へ代わり、前川は岡田監督から助言された。「引っ張ってこい」。持ち前のフルスイングで忠実に実行した。

 「スライダー一本で待っていて、真っすぐがきた。反応でヘッドを返して」

 カウント1―1から真ん中高め139キロの直球を振り抜いた打球が右翼線で弾んだ。左腕からは今季6安打目、昨季から数えて通算8安打目で生まれた初長打だ。“左封じ”の刺客を倒し、一挙4得点に貢献。普段から謙虚な姿勢を崩さない21歳が「あの打席は良かった」と自賛するほど手応えが残った。

 高知県安芸市で迎えた1年目の春季キャンプ。初の実戦形式だったシート打撃で左投手の球に腰が引けて手も足も出なかった。「苦手なんです…。ヤバイです」と自覚する課題。「めくれない、めくれない(体を開かない)」と打席の中で呪文のようにとなえたこともあった。

 初めて開幕1軍入りした3年目の今季も当初は右腕との対戦が主戦場。持ち前の打撃センスと実戦での経験を重ねることで徐々に改善し、気付けば左投手に対する通算打率・296(27打数8安打)は、対右投手への同・266を上回る。

 引き分けに終わった前夜は9回1死一塁の場面でカウント3―1から「待て」のサインで打ちに出た。結果は二塁打でも「罰金」と叱責(しっせき)された。一夜明けて「見落としてしまった」と猛省。岡田監督は「あんなんで罰金取ってたら、今年なんぼ罰金取らなあかんか分からん」と笑い、「左ピッチャーでも打てるというのを見せてくれた」と挽回の快打を称えた。

 8回無死満塁でも田島からの中越え適時二塁打で2点を追加。2イニング連続4得点の猛攻を呼び、低調だった猛虎を活気づけた。「タイミングもいい感じに取れてきている。あとは、継続していいところ、悪いところ消していきたい」。慢心はない。正真正銘のレギュラーの座は、もう目の前まできている。(石崎 祥平)

 《7回以降にチーム初得点を含む8点以上は14年ぶり》

 ○…阪神の2桁安打は9日の西武戦(10安打)以来12試合ぶり。7回以降にチーム初得点を含む8点以上を奪うのは、10年7月18日ヤクルト戦で

神000000614―11

ヤ000200200―4

と逆転勝ちして以来14年ぶり。