長嶋さん アポなしでも快諾 “じゃんけん取材”ガチンコ勝負で強運体感

スポニチアネックス6/6(金)5:25

長嶋さん アポなしでも快諾 “じゃんけん取材”ガチンコ勝負で強運体感

95年、宮崎キャンプでランニング中の長嶋監督(右)にアポなしで突撃取材し、ジャンケンで勝負する福澤記者

 今なら確実に「出禁」(出入り禁止)だろう。長嶋さんの初取材は“アポなし”の突撃取材だった。

 95年2月の宮崎キャンプ。伝説の10・8を制した勢いで日本一に輝いた翌年だった。日本で一番取材が難しい監督は陸上競技場でランニングをしていた。そこへ、当時の企画「アポなしで失礼」の看板を持って突撃。ミスターの強運を体感するために「監督、じゃんけんをしてください」と申し込んだのだ。

 いい時代だった。球団広報も通さず、長嶋さんに突撃取材をするなんて、不適切にもほどがある。今なら球団関係者がすっ飛んできて、即退場。野球記者を続けられなかったかもしれない。

 ところが、長嶋さんは突然の申し入れに興味を示してくれたのか、「えっへっへ。じゃんけんですか?最近やってないなあ」と言いながら、まさかの取材OKとなった。

 もちろん、打ち合わせなしのガチンコ勝負。長嶋さんは、律義に右手の手袋を外すと「じゃんけんぽ〜ん」と大きな声を張り上げて腕を振ってくれた。

 それから6年後。01年に巨人キャップとして、長嶋さんの監督最後の年を担当した。思い切って昔のじゃんけん勝負の話をすると「ええ、そうでした、はい」とニヤリ。絶対に忘れていたと思うが、そんな優しさがとてもうれしかった。

 巨人軍監督としての勇退を見届けた。その後は五輪代表監督の長嶋さんも取材した。たくさん原稿も書いた。全てが貴重な経験だったが、自分にとっての宝物は最初の突撃取材だった気がする。

 肌寒い宮崎の青空の下。長嶋さんの甲高いじゃんけんのかけ声と、無邪気な笑顔を忘れることはないだろう。

 気になる勝負の結果は――。あのとき、私は何も考えずに「パー」を出していた。

 「それほど強運じゃないですけどね。えっへっへ。勝ちましたねえ」

 いま思えば、実に長嶋茂雄的な選択だった気もする。長嶋さんの勝負手は、勝利のVサインと同じ形の「チョキ」だった。(01、02年巨人担当キャップ・福澤 孝哉)

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