ロッテ新監督・井口資仁、新春に誓う「チーム立て直しは今しかない」

ロッテ・井口資仁監督インタビュー(前編)

 日米通算2254本の安打を放ち、盗塁王も2度獲得するなど、名実ともにトッププレーヤとして日本球界をリードしてきた井口資仁(ロッテ)が、2017年シーズンを最後に21年間の現役生活に別れを告げた。そして今季からロッテの監督として第2の野球人生をスタートさせる。はたして、日本でもアメリカでも頂点を経験した男は、昨シーズン最下位に沈んだチームをどう立て直すのだろうか。


チームの再建を託されたロッテ・井口資仁監督

「僕がレギュラーに求めているのは、何があっても試合に出続けるということです。どこか体が痛むからといって休ませる気は全然ありません」

 この方針は、紛れもなく井口資仁自身がそういうプレーヤーだったからであり、勝利の味を知る井口が「選手のあきらめが悪いチームは強い」と確信しているからであろう。

 井口はレギュラーとして試合に出続けることにこだわりをもってきた。日本球界歴代5位の146死球を受けようが、左手人さし指にひびが入ろうが打席に立ち続けてきた。

「自分のベストパフォーマンスを出せるのは、143試合でせいぜい30試合くらい。デッドボールが当たって体が痛い中でも、結果を残し続けるのがレギュラーです。選手にとってコンディションが悪いときは、当然、試合に出たくないですよ。成績が下がりますから。ただ、それはプロじゃない」

 この井口の背中を近くで見続け、実行してきたのがキャプテン・鈴木大地だ。

「何がなんでも出るという大地のような選手が、1人でも、2人でも増えてくれば、チームとして強くなる」

 決して井口は無茶をしろと言っているわけではない。気持ちがプレーに出るということを示したいのだ。

「選手本人がトレーナーに『腰がちょっと痛いです……』と言っていても、監督が聞いたら『大丈夫です。試合に出ます』で、いいじゃないですか。このこまめな会話は選手の気持ちを乗らすためでもあります」

 井口は現役時代から一軍、二軍の選手に分け隔てなく声をかけてきた。

 監督になったいま、「井口監督」と呼ばれることよりも、現役時代と同じ「井口さん」と呼ばれることのほうが多いという。「選手たちは僕のことを監督だと思ってないんですよ(笑)」と冗談を飛ばしながらも、なぜ、まだ選手と監督の距離が近いまま、言い換えれば境目があいまいだとわかっていながら、引退後すぐに監督という大役を引き受けたのか。

 その大きな理由として井口が挙げたのは、「戦力の熟知」である。

「この選手をこういうふうに育てたいなと、この何年か考えながら選手を見ていた。戦力をうまく生かせるので、僕は現役からいくことをプラスにとらえています」

 確かに、何年かチームを離れると、選手層はガラッと変わる。そうなると選手の実力を把握しているうちに1年目が終わってしまう可能性もある。

 2017年、球団ワーストの86敗を喫し、最下位に沈んだロッテ。球団からのオファーがあったからとはいうものの、指揮官就任への情熱は並々ならぬ強さがあった。

「球団の『チームを変えてほしい』という期待に応えるなら、今しかないと思ったんです」

 これまでの井口はチームを背中で引っ張ってきた。「メジャーではチームのみんながベンチから声援を送っている。それなのに日本の選手は試合中でもすぐにベンチ裏に引っ込んでしまう」という違和感から、ベンチの真ん中に座り、ひとり声を出し続けてきた。

 すると、だんだんと他の選手が井口の周りに集まり、一緒に喜怒哀楽を楽しむようになった。そんなエピソードを持つ井口が、選手としてではなく監督として、どのようにチームをつくっていくのか。ストレートに聞いてみると、ハッとするような答えが返ってきた。

「そもそも、チームの”和”というのは、試合に勝たないとできないんですよ。チームが弱かったらバラバラになっていきます」。

 現役時代、福岡ダイエーで2度の日本一、メジャーで2度のワールドシリーズ制覇、日本球界に復帰後、ロッテの中軸としてシーズン3位からクライマックスシリーズでの下克上を果たし、日本シリーズを制覇。優勝請負人と言われてきた井口の言葉には迷いがない。

 試合に勝つ。一点の曇りもない目標を実現するカギはどこにあるのか。井口が挙げたのは、エースの完封でもなく、主砲の一打でもなく「控え選手」だった。

「試合には、20人ほどの選手がベンチに入りますが、試合に出られるのはせいぜい10人。僕は控え選手といかにコミュニケーションをとれるかが大切だと思っています。試合中、急に『次、代打いくぞ』じゃなくて、日頃から『こういう場面で代打を出すから準備しておいて』と伝えておけば、選手は監督を信頼してくれるようになります」

 シーズンを通して試合を重ねながら、監督と選手の意向がだんだんと一致してくるチームは強いという方程式も、ひとつの勝ちにこだわってきた本人の経験から湧き出てきたのだろう。

「自分が控えだったときに、『チャンスでいくぞ』とは言われていたんですけど、いついくのかわからなかった。監督の意向が読めなかったんです。なんでもっと早く言ってくれなかったんだろうと思うこともありました」

 その一方で、間違いなく大きな影響を受けた人物にも出会った。ホワイトソックス在籍時の指揮官、オジー・ギーエン監督だ。

「コミュニケーションでいえば、やっぱりギーエン監督が長(た)けていました。監督が選手のロッカーまで来て、野球だけでなくプライベートな話もしてくれる」

 ギーエン自身も、ホワイトソックスが88年ぶりにワールドシリーズ制覇をした年、「井口ほど野球を深く理解している選手はいない。彼がいたから優勝できた」という言葉で井口を讃えていた。井口の引退によせて、ギーエンがねぎらいのメッセージ動画を送ったことからも、いかに強い信頼で結ばれていたかがわかる。こまめなコミュニケーションをおろそかにしないという姿勢は間違いなくギーエン監督から受け継がれている。

 もちろん、様々な監督のもとでプレーした経験を踏まえ、井口自身が自分らしさを探し求めてきたことが伺える。

「自分の経験の中で、選手とまったく会話しないという監督もいました。どっちがいい悪いではなく、僕はちゃんと会話できる方がいいと思っています。あとから監督が思っていたことを知っても困るし、コミュニケーションの取りすぎで損することはないと思うんです」

 井口には監督として渇望していることがある。

「やっぱり選手には、満員の球場の中でプレーをしてもらいたい。注目されることで、いいプレーにつながりますから」

 現役時代から井口はファンの期待に応えてきた。サインや握手はもちろんだが、ヒットを1本でも多く打つことこそファンサービスだと考えているのだ。

「オールスターのファン投票もソフトバンクの選手が独占している。うちの選手がもっと選ばれるように球団と仕掛けていきたい」

 今では多くの選手がTwitterやFacebookなどのSNSで自ら情報を発信している。井口自身もコミュニケーションのひとつとして利用していた。

「タイミングを見ながらうまく使っていきたいと思います。選手とつながっているので、どこで遊んでいるとか、何を食べているとかが全部わかりますけど(笑)」

 露出や発信によって、選手のファンサービスも増える。ひいては選手自身のプレーが向上し、勝ちへとつながる。やはりファンにとって最高のプレゼントは「1勝」であり、積み重なった先にある「優勝」ではないか。

 常勝軍団を目標に掲げた井口新監督が、ロッテを変革するための挑戦はまだまだ始まったばかりだ。

(後編につづく)

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◆ロッテドラフト2位の藤岡裕大は「西武・源田に続く即戦力野手」との評判>>

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